• 2026/04/17 掲載

花王アタックを生んだ頭脳を「AIで再現」…凡人でも“天才”になれる「神プロンプト」

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画期的な技術やヒット商品を生み出し、大きな収益をもたらしてきたイノベーターは、何を考えているのでしょうか。その思考をひも解くと、単なる発想力ではなく、「解くべき課題の設定」に決定的な特徴があることが見えてきます。今回は、花王で「アタック」「ヘルシア緑茶」などを生み出した元CTO・村田守康氏への過去インタビューを基に、危機感を起点に、なぜそれが打開できないのかという疑問や矛盾を整理し、その中からイノベーション実現課題を見つけ出していく思考プロセスを抽出しました。本稿では、それを再現可能な形のプロンプトとして紹介します。
執筆:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等
Xアカウント:https://x.com/ACT_noma/

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

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花王CTOの天才思考をAI再現、「ヒット連発」の発想術が身につく「プロンプト」大公開
(Photo:yu_photo/Shutterstock.com)

アタック誕生の裏にあった「危機感」

 今回紹介するのは、新商品開発のアイデアを出すためのプロンプトではありません。いま抱えている危機感を起点に、なぜそれが打開できないのかという疑問や矛盾を整理し、その奥にある「解くべき課題」を見つけるためのプロンプトです。

 その思考プロセスを生成AIで再現するには、まず村田氏がどのように課題を捉え、考えていたのかを見る必要があります。

 花王で「アタック」「ヘルシア緑茶」「クイックルワイパー」などを生み出してきた元CTO・村田守康氏の事例をひもとくと、その思考の出発点にあったのは「危機感」でした。

 村田氏は、主力事業の低迷や新たな成長の柱が見えない状況に直面したとき、まず「どう改善するか」ではなく、「何を解くべきか」を問い直していたと言います。

 その象徴的な事例が、洗剤「アタック」の開発です。

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【画像付き記事全文はこちら】「アタック」開発の裏にあった天才の「課題解決」思考をAIで再現する
進化を続ける「アタック」シリーズ。原点には、世界初のコンパクト・酵素入り洗剤を生んだ“課題設定”の転換があった。この新商品開発の裏にあった天才の「課題解決」思考をAIで再現する

 当時、花王の主力である衣料用洗剤は競合に後れを取り、シェアは低迷していました。研究開発の現場では、界面活性剤の改良や添加剤の工夫など、打てる手はすでに打っていましたが、競合他社も同じ方向で改良を進めており、決定的な差をつくれない状況だったと語っています。

「界面活性剤の改良や添加剤の工夫など、やれることはやっていました。ただ、競合も同じことをやっている。差がつかない状況だったのです」(村田氏)

 ここで重要なのは、村田氏が既存の改善策を積み増すのではなく、「このままでは主力事業そのものが危うい」という危機感から出発していた点です。

「既存の理論に基づく『改良』では、この状況は変えられないと感じました」(村田氏)

どう改善するかではなかった天才の「思考法」

 ここで村田氏が切り替えたのは、「どう改善するか」という発想ではありませんでした。そうではなく、「何を解くべきか」という課題設定そのものを問い直したのです。

 競合のブランド戦略や市場の構造まで含めて状況を整理した結果、村田氏がたどり着いたのは、小手先の改良ではなく、競争の前提そのものを変えるような課題でした。

「競合のブランド戦略も含めて構造を整理していくと、行き着いたのは『圧倒的な洗浄力を実現するしかない』という課題でした」(村田氏)

 つまり、既存技術の延長で改善を積み上げるのではなく、製品の本質的な価値を根本から見直す必要があると判断したのです。その結果、従来の延長にはない発想から、セルラーゼという酵素を活用した革新的な洗剤が生まれることになります。

 こうした思考は、「ヘルシア緑茶」の開発でも同じように見られます。

 当時花王は、売上8,000億円の1割を占めていたフロッピーディスク事業からの撤退によって売上が減少し、新たな成長の柱が必要でした。しかしフロッピーディスクは花王らしくなかった。「花王らしい」強みを生かした新しい柱を立てなければならないという経営上の危機感が出発点になりました。

「新しい事業をつくらなければなりません。しかし、花王らしくないことをやっても意味がありません。では、何をやるべきか、ということです」(村田氏)

 その問いにすぐ答えが出たわけではありません。食品事業の可能性や、自社の研究資産、市場規模、差別化の方向性などを何度も見直しながら、試行錯誤を重ねていった結果、最終的にたどり着いたのが「健康価値を持つ飲料」という領域でした。この課題設定に至るまでには、3年以上を要したと言います。

 村田氏は、こうしたプロセスを振り返りながら、危機感の中でまず向き合うべきなのは、表面的な解決策ではなく、背景にある矛盾や疑問だと語ります。

「危機感を起点に、矛盾や疑問を徹底的に整理していきます。その中から、本当に解くべき課題が見えてくるのです」(村田氏)

 こうした思考プロセスは、特別な才能だけに依存するものではありません。危機感を起点に、矛盾を整理し、解くべき課題を絞る。この流れは、AIを使えば再現しやすくなります。

 そこで次に、村田氏の思考をAIプロンプトに落とし込んだ形を見ていきます。 【次ページ】【AI再現】天才脳を手に入れる「神プロンプト」と「3ステップ」
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