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  • 2023/04/04 掲載

IHI 小宮義則CDOに聞く「超縦割り組織」のDX、進め方の極意とは

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歴史ある大手製造企業として、日本の三大重工業の一角を担うIHI。多種多様な製品ジャンルごとに事業部門が分かれ、それぞれで異なる業務プロセスとカルチャーを持つ同社は現在、事業の垣根を超えた全社規模のDXに取り組んでいる。その方針や具体的な内容、さらには同社ならではの困難や苦労、「超縦割り組織」でDXを浸透させる方法について、全社CDOを務める小宮義則氏に赤裸々に語ってもらった。

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

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IHI
常務執行役員
高度情報マネジメント統括本部長
小宮 義則氏

既存事業を「ライフサイクルビジネス」へと転換していく

 IHIが現在進めているDXの取り組みには、大きく分けて2つの領域があります。1つが「LCB(ライフサイクルビジネス) DX」と呼ばれるもので、デジタル技術を使って既存事業をトランスフォームすることによって従来の「モノ売り」のビジネスから脱却して、製品のライフサイクル全般に渡って顧客に価値を提供していくLCB(ライフサイクルビジネス)への転換を図るというものです。

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2つのDXフレーム
(出典:IHI)


 そしてもう1つの領域が「事業創造DX」で、こちらはその名のとおりデジタル技術を活用して新たな事業を創り上げていくという活動です。現時点では主に前者のLCB DXに注力しており、事業創造DXはまだ始めて間もない段階です。

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LCB(ライフサイクルビジネス)DX
(出典:IHI)

 LCB DXの具体的な取り組み内容は多岐に渡りますが、大まかに分類すると「ビジネスモデル改革」と「業務プロセス改革」に分けることができます。

 ビジネスモデル改革は3段階に分けて進めていく計画で、第1段階がIoTを使った製品の見守りサービスの拡充、第2段階ではIoTデータを活用してお客さまに提案型の保守サービスを提供します。そして最終段階である第三段階では、弊社製品以外も含めたお客さまが保有するすべての機械のデータを収集・分析して、工場の運営を丸ごとマネジメントできる提案型事業の創出を目指しています。

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(1)LCB(ライフサイクルビジネス)の拡大を中心としたビジネスモデル改革
(出典:IHI)

 こうしたロードマップに基づき、現在さまざまな分野でデジタル技術を使った新たなビジネスモデルが創出され、実際に成果を上げています。その代表例の1つが「カスタマーサクセスダッシュボード」と呼ばれる仕組みで、特定のお客さまに関する情報をまとめて一元管理して、ダッシュボードを通じて全社で共有できるようにしたものです。これによってお客さまを「面」でとらえて全社的な対応がとれるようになり、これによって見積リードタイムの短縮が実現しています。

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事例1:カスタマーサクセスダッシュボード(産業機械系)-①
(出典:IHI)

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事例1:カスタマーサクセスダッシュボード(産業機械系)-②
(出典:IHI)

 また、お客さま先に納めた大型ボイラー装置に取り付けたIoTセンサーから稼働データを収集し、それらを分析することでより効率的な運転の支援を行ったり、メンテナンスの提案を行ったりするサービスの提供も始めています。

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事例3:MEDICUS NAVI(大型ボイラ)-②
(出典:IHI)

 インフラ分野では、橋梁や水門などの状態をデジタル技術を使って解析・評価し、やはり効率的な点検やメンテナンスを提案するソリューションを提供しており、こちらもすでに多くのお客さまから高い評価をいただいています。

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事例5:GBRAIN(水門点検サポートシステム)(水門)
(出典:IHI)

各事業のタイプに合わせた業務プロセス改革を進める

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 業務プロセス改革についても、各事業のタイプに合わせたやり方を適用しながら着々と進めています。弊社は幅広い製品を手掛けるコングリマリット企業であり、量産品だけでなく準量産品及び一品ものであるインデント品も手掛けています。それぞれの製品タイプによって業務プロセスも大きく異なるため、各タイプに合わせた改革手法を採用しています。

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(2)事業類型の特性に合わせた業務プロセス改革
(出典:IHI)

 まず量産品については、製造工程のあらゆるポイントでデータを取得し、工程全体の中でボトルネックになっている箇所を素早く検知し改善することで全体工程の効率を大幅に向上させることを目指しています。弊社の製品で言えば、航空機エンジンやターボチャージャーといった量産品の製造工程にこうした手法を取り入れています。特に,航空機エンジンについては,コロナ禍によって危機感が醸成され,改革スピードが大きく上がりました。

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①業務プロセス改革とDX(量産系事業)
(出典:IHI)

 一方、物流・産業システムやパーキング関連製品などは、製品のベース部分は固定されているものの、それにお客さまごとにカスタマイズやオプション機能を加えることによって製品を完成させる「準量産品」のタイプに属します。こうした製品の場合は、固定部分の範囲をなるべく広げるとともに、カスタマイズ・オプション部分を極小化することによって、お客さまに提供する価値を維持しつつ、同時に納期の短縮や製品バリエーションの拡大なども実現できます。

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②業務プロセス改革とDX(準量産系事業)
(出典:IHI)

 そして橋梁や水門、プラントといった「一品もの」に関しては、建設現場と工場との間をデジタルでつないでよりスムーズに情報を連動できるようにすることで、工程管理をより正確かつ効率よく行えるようにしていきます。 【次ページ】製造業など「超縦割り組織」にDXを浸透させる方法とは?

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