- 2026/07/30 16:51 掲載
フィジカルAIの厳しい現実、米メタらが検証…最高性能でも「座れた」のはわずか16.8%
論文は査読前のプレプリントとして公開された。研究チームは、現在のAIは周囲の状況を説明できても、自分の体の位置や直前の動作が生んだ結果を十分に把握できないと指摘した。
HumanCLAWは、AIによる行動の判断と、歩行や姿勢制御などの運動性能を切り分けて評価する仕組み。VLM(視覚言語モデル)は0.5秒ごとに、「前へ歩く」「右を向く」「座る」といった動作を選択。運動生成モデルが命令を全身の動きへ変換する。シミュレーターは重力や衝突、接触による物体の移動を反映する一方、転倒やバランス維持の失敗は評価から除外した。
評価用ベンチマーク「HumanCLAW-Bench」には、41の屋内環境を使った1,218件の課題を用意した。AIは椅子、ベッド、ソファ、観葉植物、トイレ、テレビのいずれかを探し、対象まで移動する。うちベッド、ソファ、トイレを対象とする597件では、最後に対象物へ座ることまで求めた。対象が見えたか、20センチ以内まで近づいたか、実際に腰が接触したかを段階的に測定した。
研究チームは、GPT-5.5、Gemini-3.1、Claude-4.8、Gemma-4-31Bなど9種類のVLMを評価した。最高成績だったGemini-3.1でも、対象を見つけた割合は64.9%、対象まで移動できた割合は42.5%、最後に座れた割合は16.8%にとどまった。2位のGemma-4-31Bの最終成功率は11.1%。9モデルのうち4モデルは0.2%以下で、3モデルは一度も座る課題を完了できなかった。
最大の問題は、家具を見分ける画像認識ではなかった。対象が実際に視界へ入れば、多くの場合は正しく認識できたという。しかし、そこから自分の体を対象物まで運び、到着したと判断する段階で失敗が急増。9モデルを通じ、対象を発見した5,473回のうち68%が移動に失敗したが、その多くは、まだ遠いのに到着したと判断したり、すでに触れているのに移動を続けたりする自己位置認識の誤りだったという。
AIは足がテーブルなどに衝突しても気づかず、同じ方向へ歩き続けることもあり、足が物体と衝突した割合はモデルによって全ステップの28~45%に達した。研究チームは、現在のVLMを「世界については流ちょうに説明できるが、自分の体には無自覚な幽霊のようだ」と表現。身体認識の不足は、移動失敗の34%、着席などの接触動作の失敗では81%に関係したと分析した。
とはいえ、今回の結果をそのまま実際のヒューマノイドロボットの性能とみなすことはできない。評価は仮想環境で実施され、接触動作も座る行為が中心だった。触覚情報もAIには与えておらず、実機への移行は今後の課題としている。
それでも、画像や言葉を理解する能力が高いだけでは、物理空間で安全かつ自律的に動けない可能性が浮き彫りになった。フィジカルAIの実用化には、空間記憶や自己位置、接触の結果を継続的に捉える「身体的自己認識」が欠かせないという。
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