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  • 2023/02/16 掲載

【衝撃の人事】日銀総裁に「植田和男氏」起用でどうなる? 金利・為替の行方とは

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日銀の総裁人事が市場にとってサプライズだったこともあり、金融政策の不透明性が増している。米国もFRB(連邦準備制度理事会)が利上げ幅縮小に転じた直後に、想定外の強い雇用統計が出るなど、市場の認識と実体経済のギャップが目立っている。今後の金利や為替の動向について、どう考えればよいのだろうか。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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政府は、日銀の黒田東彦総裁の後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する方針を固めた。市場にとってサプライズの人事であったこともあり、金融政策の不透明性が増している
(写真:東洋経済/アフロ)

為替市場は新総裁をどう評価してよいか分からなかった

 政府は日銀の黒田東彦総裁の後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する方針を固めた。後任総裁の本命は、現副総裁の雨宮正佳氏と言われていたので、市場にとってはサプライズ人事となり、金融政策の不透明性は一気に高くなった。

 人事が報道された直後の外国為替市場では、1ドル=131円台半ばから129円台後半まで一気に1円上昇したものの、その後は急ピッチで買い戻され、ふたたび131円台に戻している。その後、米国の消費者物価指数が発表され133円台まで円安が進んだものの、これは米国要因であり、国内の金融政策とは関係ない。一連の為替市場の動きからも、今回の人事について、市場がどう評価してよいか分からなかったことを示唆している。

 一方、米国は2月1日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、政策金利を4.5%から4.75%に引き上げる決定を行った。従来の利上げ幅は0.5%だったが、早期の利上げ終了を望む声が高まっていることや、インフレがピークアウトする兆しも見えていることから利上げ幅の縮小を決めた。

 ところが3日に発表された1月の雇用統計は、失業率が前月より0.1ポイント低い3.4%と、1969年5月以来の低水準となった。加えて、農業分野以外の就業者数が市場の予想を大きく上回り、前月比で51万人も増加するなど、依然として人手不足が深刻であることが明らかとなった。

 米国のインフレは、原油価格や食糧価格など一次産品の価格上昇に加えて、賃金高騰によるサービス価格の上昇が大きく寄与しており、雇用の動向に注目が集まっている。ここまで労働市場がタイトということであれば、インフレは当分、続くとの見通しに説得力が出てくる。市場ではふたたび、利上げが強化されるとの見方が高まっており、金利動向は読みにくくなった。

記者団に対するコメントから推測すると?

 現状の為替市場においては金利が大きなファクターとなっており、日米の金利の動きが相場を左右している。今後、日本と米国の金利はどう推移するのだろうか。

 日本にとっては、やはり次期総裁である植田氏の舵取りだろう。あくまでも現時点での予想に過ぎないが、植田氏のこれまでの言動から考えると、当面、大きな政策変更は行わない可能性が高い。なぜなら植田氏の人物像をひとことで表わすと「バランス感覚のある人物」だからである。

 植田氏は日銀審議委員の経験があり、大規模緩和策の導入について理論面で支えてきた人物なので、金融政策にはかなり精通しているとみてよい。だが、現時点での金融政策について、数多く発言する立場にはなかった事から、どのような見解を持っているのかについては、現時点において十分な情報がない。

 植田氏は、政府が総裁への起用を決めたとの報道を受け、ごくわずかだが記者団に対してコメントしている。それによると植田氏は、「金融政策は、景気と物価の現状と見通しに基づいて運営しなければならない」「その観点からすると、現在の日本銀行の政策は適切である」と述べている。

 日銀は現在、金利や物価の見通しを市場に対して明確に示す、フォワードガイダンスという手法を導入している。植田氏の発言は、この手法を踏襲する意向であると解釈でき、そこから演繹すると、当面は現状の緩和策を継続する可能性が高いとの解釈になる。

 また、自身の経歴に対する質問に対しては、「学者としてやってきたので、判断を論理的に行う、説明を分かりやすくすることが重要」とも説明している。

 一連のコメントを総合すると、現在の緩和路線は当面継続するのが妥当であり、フォワードガイダンスの原理原則に従って、論理的かつ明確に金利や物価動向について示したい、と読み取れる。 【次ページ】最初に直面するのは金利1%をめぐる攻防

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