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  • 2023/03/07 掲載

アンケートでは無理? 金融機関が「地域に本当に必要なもの」を把握する方法とは

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メガバンクと異なり、地域金融機関は営業基盤とする特定エリアの顧客からのリテンション(継続取引)を中心に収益を確保するビジネスモデルを構築している。とはいえ、同じ業態であっても、地盤とする地域を取り巻く環境要因で、認識すべき課題や導出すべき施策は大きく異なる。本稿では、こうした特異な地域課題の捕捉を念頭に、金融機関としての地域データ利活用及び地方創生に向けた展開イメージを3回にわたって解説することとしたい。
執筆:NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂 、坂田知子

執筆:NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂 、坂田知子

NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット地域公共政策チーム ユニット長、パートナー 大野博堂(おおのはくどう) 地域公共政策チーム シニアマネージャー 坂田知子(さかだともこ)

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地域データの利活用からみた地域課題の把握と施策立案
(Photo/Shutterstock.com)

地域金融機関の地方創生支援は「形式的」である傾向

 地域金融機関では、地元の自治体からの要請を受け、地方版総合戦略や振興総合計画の審議会に招致されるなど、さまざまなシーンで地域創生そのものに関与している。ただし、結果として地域金融機関に期待されているのは、移住・定住者向けの住宅取得や起業及び新規就労に際しての低利ローンであったり、新設設備を対象としたファイナンスの提供が中心となってしまっている。

 もちろん、地域商社を設立のうえ、地域特産物の拡販チャネルの構築に努める例もあるが、ふるさと納税向けを除けば、農産物の多くがJA(農協)ルートでの商流にとどまることもあり、必ずしも期待されるほどの結果を見出すことが出来ていないようだ。

 また、自治体における財政基盤は高齢化率の進展による社会保障費の増大により脆弱化の一途をたどりつつあることに加え、政府が公用施設の床面積の削減方針を打ち出すなど、地域の新設設備向け投資が見込みにくいことも、地域金融機関の悩みどころである。

 かくして、その歴史的な経緯から自治体庁舎に出張所を設け職員を無償派遣するなどの奉仕を尽くしてきた地域金融機関は、現在各地でこうした役所内出張所の「年間維持運用費用の応分の負担」を自治体に求める動きを加速させており、地域創生とは相容れない動きを取らざるを得なくなっているのが実情だ。

 このまま地域金融機関による自治体との連携による地域創生の動きは、低利ローン商品の提供などの「どの地域でも似たような金融支援」にとどまってしまうのだろうか。

バイアスがかかりやすい住民アンケートには注意が必要

 計画立案に際して自治体では、住民アンケートによる定性的な地域データを地区別(校区別)に取得するなどして、より精緻な実態把握に努めていることだろう。ただし、住民アンケートなどの標本調査の多くに、自治体側の不意な意図的誘導や住民による質問趣旨の理解不足などからくる「誤謬」が生じることが懸念される。

 たとえば、公共交通が充実していないなどを背景に、冬季に外出に困難を抱える限界集落の高齢住民を中心とした住民アンケートを発出した自治体の例をみてみよう。

 「オンデマンドバスの配備は必要か?」との問いかけに対して多くの住民が「YES」と回答する傾向にあることはこれまでの数多くの地域の実態把握から明らかであり、この自治体でも同じ結果が得られた。「今困っていることを解決してくれる目の前のツール」に需要や期待が集まるのは至極もっともなのだ。

 ただし、こうした住民アンケートの結果を踏まえ実際にオンデマンドバスを数千万円のコストを投じて運行しても、「思うような利用が進まない」といったケースが相次いでいる

 筆者らは実際にこのような実情に喘ぐ自治体を訪れ、利用が想定される住民にヒアリングを実施しているが、その多くが「バス代がもったいない」「わざわざ電話をして予約するのが面倒」「冬に外出するのが辛い」といった理由で利用をためらっている実情が浮き彫りとなった。

 では、こうした住民は冬季はどうやって外出もせずに食料や生活必需品を入手しているのだろうか?

地域の文化や生活実態を捕捉する必要あり

 筆者らの追跡調査では、「地域における相互扶助のメカニズム」が有効に機能している実態が浮き彫りとなっている。

 少なからぬケースで、「比較的若い50~60代の住民が、近隣のお年寄りを自家用車に乗せて」病院に送り届けたり、買い物に連れていくなどの「支援」「扶助」といったボランタリーな活動を当たり前に実践しているケースがみられた。つまり、こうした地域に多額のコストを投じてオンデマンドバスを運行しても施策としては有効ではないことが容易に推し量れる。

 それよりも、移動手役を担っている近隣住民に報いることで、こうした地域に根差した活動を支える仕組みを構築することが大切だろう。たとえば、域内でのみ消費行動に利用可能な地域ポイント制度を構築し、相乗り1回につき、もしくは買い物代行1回につき一定の地域ポイントをボランティア機能を担う住民に付与し、域内の消費活動に限定して利用してもらう、といった方策も有効になりそうだ。

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「地域における相互扶助のメカニズム」が有効に機能している実態とは
(Photo/Shutterstock.com)

 地域金融機関は資金決済業務や計数管理に精通するのみならず、当局の指導もありサイバーセキュリティにも配意した業務遂行が可能な体制を整備していることから、こうしたポイント管理基盤を自治体と共に構築・運用することで、付与されたポイントを地域に流通させ、消費活性策として生かす面での地域貢献が可能となるだろう。 【次ページ】自治体の独居高齢者対策に潜むワナ

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