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ゲーミフィケーションがブームとなって10年あまり。金融分野におけるユーザー体験はどのように変化し、今後どこへ向かおうとしているのか。そして国内外で技術開発が進む量子コンピューターは金融の世界に何をもたらそうとしているのか──。本稿では金融に「ゲーミフィケーション」や「量子コンピューター」をかけあわせた時のインパクトや変容を探る。ゲーミフィケーションの専門家としてセ ガエックスディー取締役 執行役員 CSOの片山智弘氏、量子コンピューターの産業利用分野の専門家として金融革新同友会FINOVATORS共同創設者で東北大学大学院情報科学研究科特任准教授(客員)の蓮村俊彰氏が各々の立場から聞いた。
聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司 執筆:川辺 和将
聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司 執筆:川辺 和将
「金融×ゲーミフィケーション」の可能性
片山智弘氏(以下、片山氏):ゲーミフィケーションには行動変容を引き起こす力があります。新規顧客のハードルを下げる、顧客の購買継続を促す、その会社やサービスのファンを作るという3つの力です。まず、金融などに対してハードルが高いイメージを抱いている層に『ゲームだし、面白そうだからやってみようかな』とハードルを下げさせる。
ゲームを通じてリテラシーを身につけると、継続してみたくなる。そして楽しくなってきて、ファンになっていく。こうしてエンドユーザー側のリテラシー向上と、企業側の事業成長との双方に貢献できるのがゲーミフィケーションの強みです。
仮に利息の水準がどの金融機関でもほぼ一緒だとしても、ゲーミフィケーションによって「この銀行が好きだ」「この証券会社が好きだ」というファンを作り出すことができるのです。盛り上がりつつあるデジタル証券とも相性は抜群です。
10年ほど前に最初のブームが来た当時、ゲーミフィケーションといっても「何となく楽しくしておけばいいだろう」とか、ログインボーナス、ランキングなどPBL(ポイント・バッジ・リーダーボード)を取り入れておけばよいだろうというような、既存のソーシャルゲームに実装されていたものをユーザーの気持ちを考えずにそのまま取り入れる小手先的な取り組みが少なくありませんでした。
しかし今や、状況は一変しています。まずターゲットペルソナを設定し、そこからマーケティングや経営戦略、サービスデザインを組み立てるといった、行動経済学に基づいた取り組みが広がっています。より具体的には認知のエラーである「バイアス」や、ついやってしまう「ナッジ」などです。
人間の心理や行動の本質を更に大事にするようになったと言い換えることもできるでしょう。テクノロジーもそこに追いついてきました。実装環境やスキル、電波環境の良化も含めて、動きがカクカクしているとか、2Dであるとかいった、そういった初歩的な課題を含めて乗り越えやすい環境が整ってきたと感じています。
【次ページ】金融の変質、「量子コンピューター」の場合
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