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- 2023/08/31 掲載
なぜ資金調達方法は「増殖」した? オルタナティブ・ファイナンスの新潮流とは
2002年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2004年同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、2010年大阪大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。2004年に株式会社野村総合研究所に入社後、主に不動産・インフラ分野に関する調査研究及びコンサルティング業務に従事。2017年11月よりケネディクス株式会社との合弁会社であるビットリアルティ株式会社の取締役に就任し、2019年1月にオンライン不動産投資プラットフォームbitREALTYを立ち上げ。2020年3月より同社取締役副社長として不動産分野におけるデジタル戦略を推進し、2023年4月より現職。主な専門分野は、オルタナティブ資産に関わる金融経済学、ファイナンス理論、データサイエンス、デジタル戦略等。また、国土審議会土地政策分科会企画部会専門委員、内閣府「都市再生の推進に係る有識者ボード」委員、日本不動産金融工学学会(JAREFE)副会長等の他、早稲田大学ビジネススクール等で非常勤講師を務め、著書や論文多数。他に、日本FP学会賞最優秀論文賞受賞(2010年)、情報処理推進機構(IPA)未踏クリエータ(2003年)等。
オルタナティブ・ファイナンスとは何か
いままで「オルタナティブ○○」という言葉を聞いたことがあるだろうか。金融業界の方であれば「オルタナティブ投資」や「オルタナティブ・コイン(オルトコイン)」、最近であれば「オルタナティブ・データ」などという言葉を聞いたことがあるかもしれない。もしくは音楽の世界であれば「オルタナティブ・ロック」も有名なオルタナティブ○○だろう。ここで言うオルタナティブ(Alternative)とは「代替の」という意味であり、オルタナティブ○○とは、伝統的な○○の代わりとなる代替手段のことを言う。PCのキーボードで「Alt」と刻印されたキーがあるが、このオルトキーを押すとさまざまな代わりの機能を実行できるはずだ。
このようなオルタナティブ○○のなかでも、最近では「オルタナティブ・ファイナンス」と呼ばれる領域が注目を浴びている。
これは銀行からの融資や株式・債券の発行と言った従来の伝統的なファイナンス(資金調達)手段ではなく、売掛債権を現金化するファクタリングや個人投資家などから直接資金を調達するクラウドファンディングなどの代替的な資金調達の仕組みのことを指す。日本語では、代替的資金調達や補完金融などと呼ばれることが多い。
特に既存の金融システムを補完するという意味においては、従来のような銀行融資に過度に依存することなく、必要な資金はクラウドファンディングのように直接的に個人から調達できるようになりつつある。
これは個人の資産形成という観点から見ても、従来のように個人金融資産が年金や保険などの機関投資家へ機関化され、それが運用会社を介してさまざまな投資対象に振り向けられていたものが、自らの意志によって直接、最終的な投資対象を選択できるようになってきたとも言える。
まさに資産運用の「民主化」のような動きがオルタナティブ・ファイナンスの進展に伴って実現されようとしている。
拡大するオルタナティブ・ファイナンス市場
このようなオルタナティブ・ファイナンス市場は、世界的に拡大を続けている。特にデジタル技術の発展に伴い、インターネット上のオンラインのプラットフォームなどを通じて、資金の提供者と資金の需要者を直接マッチングさせるような仕組みが数多く登場している。具体的には、売掛債権を現金化するファクタリングをオンライン上でAIなどに基づいて審査を迅速化するプラットフォームや、スマホアプリなどを通じて少額の資金を投融資する金融型クラウドファンディングなどが登場している。
以下の図は、ケンブリッジ大学オルタナティブ・ファイナンス・センターが取り纏めた世界におけるオルタナティブ・ファイナンスに関する市場規模の推移を地域別に示したものである。
2015年から見てみると、欧州及び米国において市場規模は拡大を続けており、5年間で欧州は約4倍に、米国は約2.5倍に増えている。
2019年から2020年にかけては世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響から資金繰りに逼迫した企業が増加し、このような新しいオルタナティブ・ファイナンスへの需要が高まったとも言われている。
さらに Grand View Researchによると、世界のオルタナティブファイナンス市場は、2023~2030年にかけて年平均成長率(CAGR)20.2%で成長するという予測もある。 【次ページ】10年で20倍に“増殖”した「クラウドファンディング」
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