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  • 2023/12/27 掲載

「オワコンなんてとんでもない」、ブロックチェーンとWeb3が“復活”する理由

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2023年末の現在、世間の「クリプト・ウィンター」「オワコン」的な評価とは裏腹に、業界内には社会実装に向けた熱量が臨界に近づき、雪解けの兆候を感じさせつつある。生成AIの際に感じたような「出遅れ感」を次のWeb3ブームに対して抱かずに済むことをゴールに、Web3業界動向を把握するうえでの基本的な前提とトレンド、そして直近で観測されつつある雪解けの兆候、それらの詳細について紹介する。

執筆:Ginco代表取締役 森川 夢佑斗

執筆:Ginco代表取締役 森川 夢佑斗

京都大学在学中にブロックチェーン事業に着手し、2017年12月に株式会社Gincoを創業。2018年に暗号資産ウォレットアプリを提供開始。2019年には暗号資産取引所向けの業務用システム「Ginco Enterprise Wallet」を開発。国内有数のブロックチェーンテック企業として、暗号資産やデジタル証券、NFTの活用に取り組む事業者を支援する。2019年には、ブロックチェーン業界を代表する起業家としてForbes Next Under30、BUSINESS INSIDER「BEYOND MILLENNIALS」などに選出。『ブロックチェーン入門』『ブロックチェーンの描く未来』(KKベストセラーズ)、『未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス』『超入門ブロックチェーン』(MdNコーポレーションズ)など著書多数。

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オワコンじゃない!? ブロックチェーンとWeb3業界の現在地を読む
(Photo/Getty Images)

Web3熱はどこへ?

 2023年も残すところ、あとわずかとなった。

 この1年間を思い返せば、メディアやSNSで「生成AI」の文字を見ない日はなかったのではないだろうか。

 日本では「ChatGPT」「Midjourney」「Steble Diffusion」などにけん引された生成AIが急激なマスアダプションを遂げている。ドラえもんや鉄腕アトムなどの作品を通じて「友人としてのAI像」を内面化する私たちは、自分の言葉を理解したように振る舞い、指示に従って業務をこなすAIの進化にすっかり魅了されてしまっている。

 一方で、この1年すっかりメディアで見かけなくなったキーワードもある。前年までの盛り上がりとの落差を考えたとき、その筆頭はやはり「Web3」なのではないだろうか。

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「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」
(出所:ガートナージャパン)

 ガートナージャパンが2023年8月に発表した、先進技術の普及度合いを示す「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を見ると、両者の位置関係が非常によく分かる。

 生成AIは「過度な期待」のピークにあると示されており、一方の「Web3」は幻滅期をまさに突き進んでいる。

 しかし、このハイプ・サイクルにはもう1つ重要な示唆がある。生成AIのベースとなる「人工知能(AI)」が幻滅期を抜けて啓発期を駆け上るすぐ背後で、Web3のベースとなる「ブロックチェーン」が幻滅期を抜けようとしている点だ。

 2023年末の現在、世間の「クリプト・ウィンター」「オワコン」的な評価とは裏腹に、業界内には社会実装に向けた熱量が臨界に近づき、雪解けの兆候を感じさせつつある。

 生成AIの際に感じたような「出遅れ感」を次のWeb3ブームに対して抱かずに済むことをゴールに、Web3業界動向を把握するうえでの基本的な前提とトレンド、そして直近で観測されつつある雪解け、復活の兆候、それらの詳細について紹介しよう。

「暗号資産・ブロックチェーン・NFT・Web3」の注目経緯

生成AIで1分にまとめた動画
 まず最初に、Web3を概観するうえで最低限必要なキーワードについて、それぞれの意味と、どういった経緯で注目されてきたかを簡単におさらいしよう。

 日本では、2016~2017年のビットコインブームおよびICOバブルの際に「暗号資産(当時は仮想通貨と呼ばれた、以下では暗号資産に統一)」という言葉が急速に認知を拡大した。

 特定の管理者によって発行・流通を制御され、結果的に価値が恣意的に変動する既存の法定通貨とは異なり、金(ゴールド)のように価値がアルゴリズムと需給によってのみ決まる目新しい投資対象として、多額のマネーが流れ込んだ。

 このバブルが弾けた後、2018年頃に注目を浴びたのが「ブロックチェーン」だ。暗号資産の本質は、ブロックチェーンという台帳システム上の残高であり、この台帳システムにはさまざまな応用可能性があった。

 特に、法定通貨や証券・債権など、既存の金融市場にも存在する資産をスムーズかつ低コストで流通させるための基盤としての有用性から、世界中の金融機関や一般企業がさまざまな概念実証(PoC)やユースケース開拓を模索していく。ここでは法定通貨をデジタル空間で扱いやすくする「ステーブルコイン」や有価証券取引を小口化・効率化する「セキュリティトークン」などのアイデアが考案された。

 一方、ブロックチェーンという台帳システムに、これまで金融の世界では扱われてこなかった「コンテンツ」などを乗せることで、コンテンツに市場性をもたせようというアプローチで2020年末にスポットライトを浴びたのが「NFT」だ。

 NFTでは、ブロックチェーンという台帳システムにコンテンツ1つ1つを識別するための情報を記録する。これにより、デジタルコンテンツを物理的に個数の限られたグッズのように扱うことを可能にしている。

 こうした試行錯誤を経て、ブロックチェーン技術を用いてさまざまな価値を「デジタルアセット」という資産的なデータとして扱えること、そしてこのデジタルアセットを活用することで金融の世界と非金融の世界の境界線が曖昧(あいまい)になっていく大きな流れが確認されてきた。その流れをキーワードとして表現したのが「Web3」だ。

 その定義はさまざまだが、業界に長く身を置く筆者は「ブロックチェーンという台帳システムと、その上に存在するデジタルアセットを活用して、従来よりも金融的なサービス体験を生み出すビジネスモデル」と捉えている。

 金融的というのは、一部のWeb3サービスにおいて、当該サービスにて利用されるデジタルアセットを保有していることで、サービス運営における意思決定に参加できたり、サービスが成長した際は、そのデジタルアセット自体の価値向上における恩恵を受けたりと、疑似的ではあるが株式会社における株主のような体験が取り入れられている点だ。

 これは、株式投資やクラウドファンディングの裾野に新しいマーケットを生み出すだけでなく、従来のマーケティングやユニットエコノミクスの常識を変えるポテンシャルがある。 【次ページ】歴史は韻を踏む(特にWeb3の場合は4年周期で)

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