• 会員限定
  • 2024/03/25 掲載

マイナス金利解除で「経済と賃金」はどうなる? 努力をやめた日本の「新しい姿」とは

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
日本銀行は、3月18、19日の政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決定した。日銀による利上げは約17年ぶり。これまでは、過剰な金融緩和で円安が進み、企業利益が自動的に増加した。そして日本企業は生産性向上の努力を怠った。金利が上昇した時、日本経済はどのような姿を見せるのか。
執筆:野口 悠紀雄
photo
日銀のマイナス金利解除で経済はどのように変わるのか
(写真:東阪航空サービス/アフロ)

世界最後の「マイナス金利」解除

 現在の政策金利は、マイナス0.1%だ(金融機関が日銀に預ける当座預金の1部にこれを適用してきた)。これを0.1ポイント以上引き上げる。

 世界の中央銀行は、かつて導入したマイナス金利政策から、この数年で脱却した。このため、惰性的にマイナス金利政策を続けているのは、世界中で日銀だけになっていた。今回の日銀の決定によって、マイナス金利政策を採用する中央銀行は、世界中からなくなる。

 なお、日銀は、マイナス金利解除と合わせて、長短金利操作(イールドカーブコントロール:YCC)を停止する。

画像
約17年ぶりの利上げで見せる日本経済の新しい姿とは
(Photo/Shutterstock.com)

 また、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)等の新規購入も終了する。このような資産の直接的な購入も、世界の中央銀行の中で日銀だけが行ってきたことであり、これまでOECD(経済協力開発機構)などから批判を浴びてきた。こうしたものを終了するのは、当然のことだ。

円高で起きる「2つのこと」

 インフレに対処するため、2021年に米国のFRB(連邦準備制度理事会)が金利の引き上げに転じて以来、世界の中央銀行は急ピッチで利上げしてきた。こうした世界の趨勢に逆らって、日銀は、かたくなに金融緩和を続けてきた。このため、異常なまでの円安が進展した。今回の措置によって、この動きが止まると考えられる。

 そして、さらに円高が進む可能性がある。これは、日本経済にさまざまな影響を与えるだろう。

 第一に、企業の利益が減少する。
 第二に、輸入物価が低下し、国内物価上昇率が低下する。

 これらは、一般には望ましくないことだと考えられており、このため、日銀は「金融緩和を継続する」というメッセージを流し続けてきた。しかし、YCCを止めれば、長期金利が上昇することは避けられず、日米金利差の縮小も避けられない(FRBが利下げに転じれば、さらに縮小する)。したがって、円高も避けられない。 【次ページ】そもそもなぜ、金融緩和を解除するのか?

関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます