• 会員限定
  • 2022/11/21 掲載

日本経済が“悲惨すぎる”末路をたどるワケ、国債発行と金融緩和は何を招くのか?

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

記事をお気に入りリストに登録することができます。
日本や米国は新型コロナ対策で巨額の財政支出を行い、財源となる新規国債を発行するために金融緩和を行った。このため、米国ではインフレが発生し、ウクライナ情勢がそれを加速させた。一方の日本は、海外各国が金利を上げる中でもいまだに金利を抑制して金融緩和を続けている。そのため多額の国債を発行し、大量の借金を積み重ねている。これからの日本経済はどのような道をたどるのか。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

photo
増加し続ける大量の国債発行は日本経済に何をもたらすのか
(Photo/Getty Images)

いよいよ国債残高は1,000兆円の大台に

 総合経済対策の裏付けとなる2022年度第2次補正予算案が、11月8日の持ち回り閣議で決定された。一般会計の追加歳出は28.9兆円。この約8割にあたる22.9兆円は国債の増発で賄う。つまり、財政支出の大部分は国債発行で賄われるわけだ。

 新型コロナの感染拡大に対処するため、さまざまな財政措置がなされた。その結果、補正予算で巨額の国債発行を行うというパターンが定着してしまったように見える。

画像
新型コロナに対処するための財政措置で、巨額の国債を発行するというパターンが定着してしまった
(Photo/Getty Images)

 財務省によると、2020年度の国債発行計画では、当初予算における新規国債発行額が32.6兆円だったが、第2次補正後で90.2兆円となり、第3次補正後で112.6兆円となった。100兆円超えは、初めてのことだ。

 2021年度の国債発行計画では、当初予算で43.6兆円。それが補正予算で22兆円増加され、65.6兆円となった。こうした財政運営がなされた結果、国債残高は増加している。

 財務省の資料によると、普通国債の残高は2015年度末には805兆円だったが、2020年度末には947兆円となった。2022年度末には、今回の追加で1,042兆円になる見込みだ。なお、普通国債は建設国債や赤字国債などで、財投債を含まない。

 こうした急激な国債残高の増加が深刻な問題を起こすことにはならないかと、誰でも心配になるだろう。

自国通貨建ての国債は問題なし? その3つの根拠とは

 MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)という考えがある。MMTとは、「政府が国債発行によって財源を調達しても、自国通貨建てである限り、そしてインフレにならない限り、問題ではない」という主張だ。ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授などによって提唱された。

 MMTは、次のような理論を根拠としている。

  1. 貨幣は素材の価値があるから通用するのではなく、価値があると国が宣言するから通用する。
  2. 内国債は国から見れば債務だが、民間の国債保有者から見れば資産だ。両者は帳消しになる。したがって、「将来時点で、外国に支払うために国が使える資源が減る」という意味での「国債の負担」は発生しない。この点で、内国債と外国債は経済効果が異なる。
  3. 経済が不完全雇用状態にあって遊休資源があるなら、財政赤字によって財政支出を増やすべきだ。

 MMTは異端の学説だと見なされる場合が多い。しかし、上記の考えは正統的なものだ。

 上記の1は、ドイツの経済学者ゲオルク・クナップによって20世紀初頭に唱えられた貨幣理論(「チャータリズム」と呼ばれる)だ。2は、20世紀中頃の米国経済学者アバ・ラーナーの主張だ。そして3は、ケインズ経済学の主張だ。

 MMTのトリックは、「インフレを起こさなければ」という制約条件をかけていることだ。

 上記の3点は多くの人が認めている正統的な理論である。にもかかわらず、新規国債発行でいくらでも調達しても良いということにならないのは、多額の国債発行はインフレを招く危険があるからだ。

 国債の市中消化を続ける限り、国債発行額が増加すれば金利が上昇する。そして、国債発行には自然にブレーキがかかってしまう。これを避けるためには、中央銀行が国債を買い上げる必要がある。すると、貨幣供給量が増加し、物価が上昇して、ついにはインフレになる。

 MMTの理論は、「いくら国債を発行してもインフレにならない」と主張しているのではない。そうではなく、「インフレにならない限り、いくら国債を発行しても良い」と言っているのだ。つまり、多額の国債発行がインフレを招くという重要な問題をはぐらかしているのである。MMTが人々の支持を得られなかったのは、このためだ。

【次ページ】金利抑制・国債発行を続ける日本経済に期待できるか?

関連タグ

あなたの投稿

関連コンテンツ

まだ「失われた30年」は終わらない…日本経済を衰退させた“残念すぎる”3つの真相

まず作者の論理的な誤謬を指摘させていただきます。
(製造業はもうリーディングインダストリーではない)

(製造業以外の産業は伸びていない)
は矛盾です。

続いて私は、このように訂正いたします。
製造業以外の産業は大幅に伸びたにも関わらず製造業は依然我が国のリーディングインダストリーであります。

例えば作者が例として挙げていた情報通信業界に従業する人数は十年間に百万人しか増えてないという表現は、言い方を換えれば「百万人ほど大幅に増えた」にもなります。この業界は少数精鋭なので、百万人はちょうど良い数字で決して少なくありません。
ちなみに、情報通信業界と製造業はお互いに共生関係があります。前者の技術発展は後者の全体的な成長に繋がりますので、日本の情報通信業界はこの30年間に技術の強みを生かして応用研究しかやらない中国を越えて驚異なほど成長を遂げて製造業の優位を強固させた事実が作者は無視して、それを気づいてない方々も多くいらっしゃるのはなぜでしょうか

それは、日本は製造業の拠点を中国を含めて新興国に移して、表向きに新興国の工業化や製造業成長に見えたのです。でも、それは実質的に日本の属国に化しただけで日本はその意向さえあれば国内回帰すれば良い、それだけの話です。

ただ、新興国を属国化する作戦では、アメリカのほうが日本より広く展開したのでどっちか一方的に国内回帰したらもう片方は残された割当を占める恐れがありますので、今でも日米両国は新興国の土地でこのゲーム理論を実践しています。

そのイタチごっこの行き先は、予測には難しいのですが、私は人材の「誘致」より人材の「育成」を大事にする長期的な視野を有する日本のほうが勝算が高いと思います。

国内回帰にとって一番大事なのは国内での資源や人材の確保であり、日本は古来より周辺地域のような大量だが質の低い偽資源国と違って良質な金属産出国であり、森林と海洋などの資源も豊かでこれからの技術進化により、将来メタンハイドレートとレアアースの採掘もうまくやれば資源面では心配いらず最後はやはり人材勝負です。

ただ、日本は自分の強みを捨てて一時的な緩和策、つまり人材の「育成」より「誘致」に力を結集したら、将来は今のアメリカのように酷い社会分断が起き、国が乗っ取られ上級国民だけのものとなり、経済発展どころか国民の安全でさえ危うくなるでしょう。

PR

処理に失敗しました

トレンドタグ

おすすめユーザー

会員登録で動画、資料に使えるホワイトペーパー、オンラインセミナー年間500本など、会員限定記事が​閲覧できる!​

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます