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- 2024/04/08 掲載
エヌビディアの強さでわかる「日本企業=弱小」のワケ、秘密は「特徴2つ」の深い関係
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
イーロン・マスクらも「外国人」
なぜこれが典型的な米国企業なのかと言えば、先述のとおり、米国生まれの米国人が作った企業でなく、外国生まれの米国人が作った企業だからだ。米国のIT産業には、そのような企業が多い。
たとえばZoomの設立者エリック・ヤン(袁征)は、中国生まれ。中国の大学で学位を取った後、1997年8月、米国に渡った。そのときには英語がまともに話せなかったという。Web会議システムのWebEx(現・Cisco Webex)にエンジニアとして就職。2011年、Zoomを創業した。
グーグルの設立者の1人であるセルゲイ・ブリンはロシア生まれ。父は数学者で、米国に渡りメリーランド大学の数学教授になった。セルゲイは、1979年、6歳のころに家族とともに米国に移住した。
ヤフーの設立者の1人であるジェリー・ヤンは、10歳ごろに台湾から米国に移住した。テスラのイーロン・マスクは、南アフリカで生まれ、育った。米国に来たのは大学を卒業してからだ。PayPalの設立に参加し、成功して、その後の発展の基礎を築いた。
以上で見たのは、創業者だ。すでに存在しているハイテク企業のトップを見れば、マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ、グーグルのCEOサンダー・ピチャイ、IBMのCEOアービンド・クリシュナなど、今やインド人が圧倒的に多い。
アップルなども「ファブレス」企業
エヌビディアが行っているのは半導体の設計であり、それを基に製造しているのは、台湾の半導体受託生産企業であるTSMCだ。エヌビディアのように工場を持たない製造企業を「ファブレス」という。最も有名なのが、アップルだ。同社は、iPhoneなどの設計と販売だけを行っている。iPhoneの部品は、世界中のさまざまなメーカーが作り、最終的な組み立ては、台湾の企業フォックスコンが、中国にある工場で行っている。
日本にもファブレスがないわけではない。最も有名なのはキーエンスだ。しかし、日本全体から見れば例外的な存在だ。製造業全体として見れば、従来からの垂直統合構造が続いている。
なぜファブレス企業は利益率が高いのか? それは全工程の中で、収益率が最も高い部分だけを担当しているからだ。このような生産方式が可能になったのは、中国が工業化したからだ。その意味で、新しい世界経済の中での企業形態であると言うことができる。 【次ページ】外国生まれ・ファブレスの「深すぎる関係」
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