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  • 2024/05/24 掲載

国が地銀に示す「脱炭素営業」、広島銀と北國銀が直面した「中小企業の現実」とは?

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国は2024年3月、地銀の営業担当者による活用を想定して、融資先などへの営業用資料となる「ドアノックツール」のひな型を公開しました。行政がわざわざ民間金融機関のビジネスに肩入れするのは意外な感じがしますが、ひな型の中身をみてみると、企業による脱炭素の取り組みをしっかり支援するよう、金融機関側に発破をかける趣旨となっています。脱炭素をめぐる国際的な議論を含め、ドアノックツールの作成にいたった背景とその内容について解説します。
執筆:三上剛輝  編集:小達紀治
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国が地銀にPowerPoint形式で配布しているドアノックツール(あとで詳しく解説します)

「TCFD実践ガイダンス」の中身

 今回のドアノックツールは、環境省が「金融機関におけるTCFD開示に基づくエンゲージメント実践ガイダンス」と合わせて公表しました。ドアノックツールについて説明する前に、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)とガイダンスについて少し触れておきましょう。

 TCFDは企業などに対し、気候変動に関連する方針や取り組み、財務への影響などの情報開示を推奨する国際的な枠組みです。2022年には、東証プライム上場企業に対し、TCFDに基づく情報開示が義務付けられ、大手企業では脱炭素に向けた取り組みが広がりつつあります。

 一方で非上場の中小企業については、人手不足や原材料高など経営環境が厳しさを増す中で、本業に加えて脱炭素化に向けた取り組みを積極的に進めるのが難しい状況にあります。

 国は2050年までの排出量実質ゼロという目標を立てていますが、中小企業の協力がなければ目標の達成は難しくなります。こうした中、脱炭素化の動きを全国へ広げるうえで白羽の矢を立てたのが、日常的に地方の中小企業とコミュニケーションを取っている地域金融機関です。

 金融機関が中小企業の経営者に対し、スムーズに脱炭素経営の重要性を提案し、実際の戦略策定につなげられるようなフローをまとめたのが今回の「実践ガイダンス」です。このガイダンスでは、標準的な流れを以下の5段階に分けています。

  1. (1)TCFD開示に基づくエンゲージメントの位置づけ・必要性の理解
  2. (2)取引先との対話に向けた準備
  3. (3)取引先へのドアノック
  4. (4)個別取引先に対するエンゲージメント戦略の策定
  5. (5)金融機関としてのエンゲージメント戦略の策定

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標準的なエンゲージメントの流れのイメージ

 (1)のエンゲージメントは、金融機関が取引先と脱炭素などについて建設的な対話を行い、取引先の企業価値が向上するような提案をすることを指します。(2)の準備段階には、企業と対話すべき内容や気候変動対応の流れを理解し、エンゲージメントを進めるための社内体制を構築することなどが該当します。

 一連の流れの中で特に重要なのが、(3)の中小企業への提案(ドアノック)です。これまで脱炭素に無関心だった経営者にいきなり話を切り出しても、真剣に取り合ってもらえないばかりか、反発を買って信頼関係を損ねる可能性すらあります。そこで環境省は、説明すべき内容をコンパクトにまとめたドアノックツールのひな型を作成したというわけです。 【次ページ】国が地銀に持たせた「脱炭素のドアノックツール」とは?

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