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  • 2020/07/09

“重労働”を解決する「スマート農業の新技術」、地域金融機関の役割とは

大野博堂の金融最前線(22)

少子高齢化の加速で担い手不足にさいなまれている最右翼が農業だろう。金融機関では後継者の紹介やマッチング、就農支援などを手掛けることで貢献しているものの、依然として地域における大きな課題の1つである。既に重労働の負担軽減を目的としたロボットスーツなどが実用化されているが、農業特有の工程ごとの悩みは依然として残されているのが実態である。そこで本稿では、農業を取り巻く課題を整理し、人材不足の解決策となる新たな農業テクノロジーを解説してみたい。

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。

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地域の金融機関が知るべきスマート農業の最新技術とは
(Photo/Getty Images)
 

プロセスに着目した農業のリソース別課題

 そもそも、農業の一般的な作業プロセスとは何だろうか。図1はそのプロセスを定義したものである。それぞれのプロセスに着目してリソース別の課題を見てみよう。

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図1:農業の一般的な作業プロセス
           
 まず「土づくり」では、複数の圃場整備(ほじょうせいび)を同時期に行うため、ここで人手が大量に投入されることとなる。さらに、最適な土壌状態を整備・維持するための設備も必要だ。その上で、土壌の状態が対象の作物の栽培に適しているかを把握せねばならない。

 「種まき・苗植え」では、等間隔で種まき・苗植えを人手による作業を人手で実施するか、機械を利用する場合には操作のできる人手が必要である。

 「栽培」工程では、生育状況に応じて農薬や除草剤の散布作業を行うことになる。時間帯に応じて水量など環境面での管理も欠かせない。もちろん、農作物の生育状況の把握が必要だ。その中で、農作物の生育状況に鑑み、使用する薬剤量を最小限に留めたい、といった意向も強く働くことから、天候情報の即時取得と長期予報への対応も求められる。

 ここでようやく「収穫」工程となるのだが、生育状況に応じて、適切な収穫時期を把握、判断せねばならない。たとえばトマトを例に挙げると、トマトの成熟度合いを色味から識別することは極めて困難だ。

 手で触れようとすれば商品を傷める可能性もあり、収穫時期に達したかどうかを判別するのはまさに職人技とされる。その上で品質を保ちながら、収穫作業の際は一時的に多くの人手が必要になる。

 もちろん、重い収穫物を運搬できる人手や機器も必要だ。収穫後、場合によっては出荷までの間に一時貯蔵の必要もあることから、品質を一定に保つための貯蔵施設、室温や湿度のコントロールが欠かせない。

 収穫後は「出荷・販売」となるが、収穫物の品質を検査する手間を要する。付加価値創出を目指し、ブランド農業を推進する場合には、決められた品質や形状であるかを判別するための工程が追加されることになる。

 次にラベル貼りや箱詰め作業へと進む。ここでは、収穫物の品質を維持したまま、効率的に出荷の準備をするための設備が必要だ。陳腐化リスクへの対応として、収穫物の品質の適切な把握ももちろん重要な要素である。

「土づくり」「種まき・苗植え」に対応する最新技術

 こうした課題を解決する新技術を紹介しよう。

 引き続き前述の農業プロセスをみると、「土づくり」では、土壌診断センシング技術が利用可能だ。

 トヨタ自動車では、光センサーを活用した土壌診断・改良の提案サービスを提供している。地中10センチ程度に差し込んだ光センサーをトラクターでけん引。30項目の土壌成分を即時に推定する。

 同時に、GPSデータを用いて畑内の土壌成分の偏りをマップ化して可視化することも可能である。結果は、土壌改良の方向性を把握するためのインプットとして活用することができる。 

 「種まき・苗植え」では、従来から存在するAI搭載の自動操縦トラクターのほか、「種まきドローン」も登場している。田牧ファームスJAPANでは、ドローン搭載型種子散布装置を開発し、福須磨健楢葉町にて実証実験を続けている。

 水田に直接種をまく「湛水直播栽培(たんすいちょくはんさいばい)」での利用を想定しており、空中散布実績が豊富な米国カリフォルニア州で実用化されている技術を活用している。実証実験では30アールの範囲に種をまくのに、わずか10分強しか要しなかったとのデータが公表されている。

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「種まきドローン」も登場
(Photo/Getty Images)
 

【次ページ】各プロセスにおける課題解決に向けた新技術

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