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- 2020/07/29 掲載
大量プッシュ通知はもう限界、中国ECで広がる「リアル還元型ゲーム」の狙い
連載:中国イノベーション事情
中国ECで広がる“リアル還元型”の「ミニゲーム」
中国のECサービスで、ちょっと不思議な現象が起きている。ECサービスのアプリに続々と「ミニゲーム」が導入されているのだ。アリババの「タオバオ」「Tmall」はもとより、京東(ジンドン)、拼多多(ピンドードー)、蘇寧(スーニン)など、主なECサービスはいずれも複数のミニゲームを導入している。
しかし、これらのECサービスで提供されるのは、ただのミニゲームではない。
たとえば、アリババの決済アプリ「アリペイ」に付属している「アント庄園」は、鶏を育てるゲームだ。アリペイを利用すると、利用額に応じて、鶏の餌が手に入る。さらに、毎日運動させる必要もあり、鶏とバレーボールなどをやり、運動量が大きいと鶏はよく育つ。そして、大きくなると卵を生む。
この卵は、貧困地区の子どもたちに寄付をすることができる。“本物”の卵が寄付されるのだ。このゲームは、すでに累計4億人が遊び、150億個の卵が子どもたちに贈られた。
また、ソーシャルEC「ピンドードー」では「多多果園」というミニゲームがある。
これは、梨などの果物を育てるゲームだ。プレイヤーは毎日、水や肥料をやる必要がある。水や肥料は、ピンドードーで買い物をすればするほどたくさん手に入り、果樹が早く育つ。そして、果物がなる。これを収穫すると、自宅に“本物”の梨が送られてくるという仕組みだ。
つまり、社会貢献や宅配といったリアルと接続したO2O(Online to Offline)ゲームになっている。
「O2Oゲーム」が広がり始めたきっかけ
つまり、二酸化炭素排出量を減らす行動をするとポイントが貯まるようになっていて、その削減した二酸化炭素量に応じて、アリペイアプリ内のバーチャルな木が育っていく。木が育つと、緑化を必要としている地域に“本物”の木が植樹されるというものだ。
この活動には、5.5億人が参加し、2億本が植樹されている。中国国内8カ所の敷地に植樹され、その範囲は約1800平方キロメートルにも及ぶ。これは東京23区の面積の3倍弱の広さに相当し、中国では最大級の公益活動になっている。
【次ページ】ミニゲーム流行の裏にある、ECユーザーの“不満”
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