- 2025/05/09 掲載
バイトダンスが「今さら」デリバリーに注力する裏の狙い、現王者も欲しがる急成長市場
すでに飽和状態の中国フードデリバリー市場
スマートフォンで飲食品を注文すると指定した場所に届けてくれるフードデリバリー。中国では、美団(メイトワン)とウーラマの2社で市場の98%近いシェアを占めている。シェア比率は「美団:ウーラマ=2:1」程度だが、ウーラマはアリババ傘下に入り、新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)などの生鮮品配送も受け持っている。フードデリバリーは中高年にも利用されるようになり、中国での利用者数は2024年末で5.45億人となった。また、5線都市と呼ばれる地方小都市にもサービスが提供されるようになり、市場は飽和し、これ以上伸びる余地がないレッドオーシャンとみなされている。
ところが、2025年2月に、TikTok運営で知られるバイトダンスとEC大手の京東集団(JDドットコム)が立て続けに新規参入するという意外な展開が起きている。
バイトダンスは、中国版TikTok「抖音」(ドウイン)を軸に、ショート動画やライブコマースと組み合わせたECが成長をしている。これまでも、ライブコマースで販売した商品を30分で配達するというサービスを行っていたが、配達はウーラマに委託をしていた。そのサービスを改善するために今回、委託以外に自社で自前の配達ネットワークを構築していくという。しかし、配達ネットワークの構築には時間もかかるため、すぐに美団やウーラマの脅威になるわけではない。
一方で、京東は既存大手2社にとってすでに大きな脅威になっている。京東は家電製品や電子製品を中心にしたECで、常にアリババのライバルであり続けてきた。その強みは自前の配送網だ。すでに、中国のほぼ全域に当日または翌日配送するネットワークを構築している。全国に1500カ所の倉庫を保有し、10機の貨物専用航空機を保有し2000路線を設定、5万台のトラックを保有し、配達業務に携わる従業員は34万人という巨大企業だ。
しかも、2025年4月からは100億元の資金を投入し「100億補助キャンペーン」を行っている。これは、100億元がなくなるまで、すべての利用者が毎日最高20元の割引を受けることができるものだ。この施策により、一気に美団のシェアを奪おうとしている。
バイトダンスと京東はなぜ、レッドオーシャンであるデリバリー市場にわざわざ新規参入をしてきたのか。 【次ページ】バイトダンスと京東が狙う○○市場、成長している「3要因」
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