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  • 2020/09/28

コロナ禍で激変したスマートシティ構想、カギを握る「デジタルゼネコン」とは?

日本が目指すべき未来社会の姿として提唱されている「Society5.0」。その先行的な実現の場と言われているのが「スマートシティ」だ。先進的なICT技術を活用し、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化することで、それぞれの都市が抱える問題を解決して新たな価値を創出することが目的だ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受け、スマートシティ実現の取り組みにも変化が見られている。決済やスーパーアプリなどを含めフィンテック領域と密接する「コロナ禍におけるスマートシティ最新動向」を解説する。

ITジャーナリスト 田中克己

ITジャーナリスト 田中克己

日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長、主任編集委員などを歴任し、2010年1月からフリーのIT産業ジャーナリストとして活動を始める。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)、2012年度から一般社団法人ITビジネス研究会代表理事を務めるなど、40年にわたりIT産業の動向をウォッチする。主な著書に「IT産業再生の針路」「IT産業崩壊の危機」(ともに日経BP社)がある。

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感染症対策サービスにも対応可能なスマートシティの姿とは
(Photo/Getty Images)

スマートシティは「構想」段階から「実装」段階へと移行

 ICTなどの新技術を活用して都市部が抱える課題を解決し、持続可能な都市として機能する「スマートシティ」。世界中の多くの都市がその実現に向けて動き出している。日本では国土交通省が先導役を担い、官民が連携した推進体制によって、スマートシティ型の街づくりモデルの実装プロジェクトが全国各地で展開されている。

 スマートシティの進行状況について、野村総合研究所(NRI)のコンサルティング事業本部 グローバルインフラコンサルティング部長、村岡 洋成氏は「スマートシティが構想段階から実装段階へと進んでいる」と指摘し、「新型コロナウイルス感染症の拡大によって、スマートシティの実装はさらに加速する」と見ている。

 村岡氏は、スマートシティの実装が加速する理由として以下の3点を挙げる。

  1. デジタル技術が都市問題の解決にも活かせること
  2. 非接触など新しい生活様式に移行する上で、デジタル技術を活用したライフスタイルが社会に浸透しやすくなったこと
  3. 都市から収集したデータの活用に対する許容度が高まったこと

 その一方で、スマートシティの実装を妨げる新たな課題も明らかとなりつつある。NRIでは、国内外のさまざまな実装プロジェクトにかかわる中で気づいた課題やコンセプト、推進体制などを取りまとめ、2020年8月下旬に「スマートシティ最新動向」レポートを発表している。本稿では、そのレポートの内容を踏まえて、アフターコロナ時代で変化したスマートシティの在り方を解説する。


新たな都市問題となった「新型コロナウイルス」

 スマートシティで解決すべき都市問題は、都市への人口集中が要因となって引き起こされてきた。コロナ以前の都市問題の例としては「大気汚染や渋滞などの環境悪化」や「長距離通勤」などが挙げられていた。しかし、コロナ禍によって新たな都市問題が浮かび上がってきた。

 NRI コンサルティング事業本部 グローバルインフラコンサルティング部 プリンシパルの石上 圭太郎氏は「新型コロナウイルスは新たな都市問題になる」と断言する。

 人口が集中する都市部では集団感染が容易に発生しやすい。たとえば、2020年2月から7月末までの「都道府県別・累計新型コロナウイルス感染者の推移」を見てみると、全国累計感染者の約7割が東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、愛知県の6都府県で発生している。これらの地域の人口は全国の約41%を占めており、感染者が大都市圏に集中していることがうかがえる。

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日本都道府県別・累計新型コロナウイルス感染者の推移
(出典:厚生労働省および各都道府県の公表値を基にNRIが作成)

 また、人口集中によって日常的に「3密」になりやすい都市部では、日々の移動によって感染を拡大させやすい生活環境にある。さらに、常に膨大な人流が発生するため、個々人の動きが追跡・把握できないため、感染経路不明者の割合が高いことも都市の特徴だ。東京都の8月13日の感染経路不明者率は6割超にもなる。

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新型コロナウイルスが新たな都市問題になった
(出典:NRI講演資料)

デジタル技術を活用した感染防止対策が急増した

 そうした中、感染拡大防止策にデジタル技術を活用する取り組みが進んでいる。

 たとえば、スマホや監視カメラなどを使い、ある人がどの店舗や建物、施設を訪問し、誰と接触したのかを追跡するアプリがある。また、感染経路の追跡や把握をした上で、濃厚接触者には検査を促したり、隔離された患者の外出管理や行動などをチャットやAIなどで見守ることも可能だ。さらに建物や施設などの管理者は、スマホアプリに申告した健康情報を基に安全性を確認したり、訪問者の入室を許可したりできる。

 中国などではコロナ対策としてデジタル技術の導入が進んでいる。こうしたデータ活用例は、今後のスマートシティの重要な機能になるだろう。ただ、海外の事例の中には、プライバシー問題などを解決しなければ、日本での利用が認められないものもある。

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新型コロナウイルス感染症対策として導入されたデジタル技術事例
(出典:各種公開文献よりNRI作成)

 また、モビリティやロボット、ドローンなどを活用するサービスも次々に生まれている。これらのサービスは人の移動や接触を制限する新しい生活環境を整え、感染症対策サービスにも対応可能なデータ基盤を備えたスマートシティの礎にもなるだろう。

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平常時・非常時の両方に対応できるスマート技術及び、建築・都市空間基準導入が求められる
(出典:NRI講演資料)
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感染症対策サービスにも対応可能なデータ基盤を備えたスマートシティ。決済機能はポイントなどの金融機能は欠かせないポイントだ
(出典:NRI講演資料)

 感染症拡大による、働き方の多様化も進んでいる。たとえば、自宅や自宅近くのサテライトオフィス、シェアオフィスなど好きな場所で働ける環境を実現する。都心から郊外へ住居を移すなど、好きな場所で暮らすことも可能になる。その結果、テレワーク社員を増やした企業では、オフィススペースを削減したり、通勤定期代の支給を止めたりもするところも出てきた。

 こうした新しい働き方は、社員にも企業にもメリットはあるが、勤怠管理やセキュリティ対策、給与体系の見直しなどの改善すべき点も考慮する必要がある。スマートシティ化にどう影響していくかはこれから明らかになってくるだろう。

都市の魅力を高める「モビリティサービス」への期待

 都市問題の深刻な課題の1つに「交通問題」がある。NRIでは、モビリティサービスは都市の交通問題の解決に効果があると考えている。

 たとえば、移動を制限された高齢者などの交通弱者に対しては、狭い範囲内に少人数の移動を支援する「オンデマンド型バス」や「自転車のシェアリング」、駅から自宅までの近距離移動では「パーソナルモビリティサービス」を提供することが想定できる。

 それらサービスが収集したデータを、交通渋滞の緩和や交通事故の削減などにも活かすことも可能だ。3密の回避や感染経路の解析などに利用することで、都市機能復活の有効策を見出すことにも寄与するだろう。

 また、モビリティサービスは、スマートシティの魅力や価値を向上させることも期待できる。NRI コンサルティング事業本部 グローバルインフラコンサルティング部 プリンシパルの高見 英一郎氏は、「モビリティサービスの高付加価値化」「都市魅力度・競争力の向上」「新規移動需要の創発」「モビリティ関連のデータ活用・都市課題解決」の4つの方向性を提示する。

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スマートモビリティ活用による都市のスマート化における4つの方向性

 以降で、4つの方向性についてそれぞれ説明していく。

【次ページ】スマートモビリティを活用する都市のスマート化、4つの方向性

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