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- 2021/03/24 掲載
【事例】ロボットと人が協働する佐川の物流倉庫、生産性は2倍に向上
森山和道の「ロボット」基礎講座
GTP、AMR、それぞれの長所と短所
SGホールディングスグループで国内ロジスティクス事業を展開する佐川グローバルロジスティクス(SGL)。配送機能と倉庫拠点が一体化した佐川流通センター(SRC)は同社の3PL事業の拠点だ。柏SRCはそのなかの1つで、最新マテハン(マテリアルハンドリング)機器が導入されている。Rapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス)のピッキングアシストロボットも、その1つだ。
Rapyuta Roboticsについては、2019年に本連載でも一度取り上げている。チューリッヒ工科大学からスピンオフしたベンチャーで、当初はドローンを手がけていたが、2018年からは物流にフォーカスした事業を行っている。売りは複数台のロボットや各種センサーを統合管理して制御するクラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」である。倉庫全体の入出庫や在庫管理、ロケーション管理を行うWMS(倉庫管理システム)と連携して、ロボットを最適制御することができる。
Rapyuta Roboticsは物流に関わる全体をロボットで扱うことを目指していて、自動フォークリフトなども開発しているが、現在、特に注力している事業がピースピッキングの領域で用いる、自律移動型の人協働ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)の導入だ。AMRとは、工場や倉庫で一般に用いられているAGV(Automatic Guided Vehicle、自動搬送車)とは異なり、移動のためのガイドテープの敷設などの必要がなく、歩き回る人がいる環境で、ロボットも人も混在して動くことができるロボットのことを指す。日本国内ではRapyuta Roboticsのほか、GROUNDやSyriusジャパンなどが展開している。Rapyuta Roboticsでは「コア部分から自社開発している」という。
倉庫の自動化・ロボット活用というと、アマゾンに代表されるような棚ごと動かすGTP(Goods to person)型を連想する人が多いと思う。あるいは「AutoStore」のような自動倉庫を挙げる人もいるだろう。実際、SGホールディングスも佐川グローバルロジスティクスの蓮田営業所や次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」で、中国GEEK+(ギークプラス)製の棚搬送ロボット「EVE」を導入している。また「Xフロンティア」には自動倉庫の「AutoStore」も導入されており、そこではRightHand Robotics(本連載バックナンバー参照)のピースピッキングロボットを同時に活用する予定とされている。GTPとピッキングロボットの併用は注目の取り組みだ。
ただ、GTP型の倉庫は初期コストが高い。大型設備なので床の耐荷重も必要で、どこででも設置できるわけではない。またGTPが向いているのは一定の作業が常に発生しているものが対象で、物流の波動が大きいオペレーションにはあまり向かない。
いっぽうAMRは既存の棚を並べた物流倉庫で、通路幅さえ合えば、ほぼそのまま導入できる点がメリットだ。通常の倉庫では人が棚の間を歩き回って細かい商品をピッキングしている。ピッキングする物品を指示して、ある程度まとめて運んでくれるロボットを導入することで、作業者の歩行距離を減らすことができる。初期投資もGTP型に比べて2割程度に抑えられるという。Rapyuta RoboticsではSaaS型で提供している。
自律ロボットと人が自然に馴染んだ現場
実際のロボットの動作を見てみよう。案内してくれたのはRapyuta Robotics執行役員の森亮氏、同ビジネス・デベロップメント・マネージャーの小堀貴之氏、同オペレーション・マネージャーの一宮隆祐氏らである。現在、SGLに導入されているAMRは11台。ピッキングエリア全体の面積は、約1,500平米。扱っている商品は小さいものが多い一方で、サイズ幅もある。SKU(Stock Keeping Unit)は5000-6000程度。
現場を見ると、ロボットはごく自然にフロアのなかを人間と混在して行き交っていた。あまりにごく自然に馴染んでいて、驚いたほどだ。ロボットの本体横幅は48cm。90cmまでの通路幅で移動できる。ロボットは動作時にはウオンウオンという音を出しながら走る。ロボットの位置を知らせるためだ。ロボットにはバーコードリーダーと4つの小型オリコン(折りたたみコンテナ)が取り付けられている。それぞれが1オーダーに対応しているので、4オーダーのマルチピッキング方式だ。
【次ページ】制御されるロボットと人による作業の使い分け
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