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  • 2020/09/03

国交省が描く「2040年の道路」の“真意”とは? 道路局の担当者を直撃

連載:MaaS時代の明日の都市

新型コロナウイルス収束の兆しが見えない中、国土交通省の道路局が今後を見据えた動きを着実に進めている。中でも今年6月18日に公開された道路政策ビジョンの提言「2040年、道路の景色が変わる」は、内容だけでなくイラストを多用した表現手法も注目された。この提言の取りまとめに携わった国交省道路局の藤浪 武志氏に背景を聞いた。

モビリティジャーナリスト 森口 将之

モビリティジャーナリスト 森口 将之

1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社編集部を経て1993年にフリーランスジャーナリストとして独立。国内外の交通事情・都市事情を取材し、雑誌・テレビ、ラジオ・インターネット・講演などで発表。2011年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティやまちづくりの問題解決のためのリサーチ、コンサルティングを担当する。著書に『パリ流環境社会への挑戦』『富山から拡がる交通革命』『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。

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「2040年、道路の景色が変わる」の内容が面白い
(出典:国交省)

コロナ禍での動きが目立つ国交省

 新型コロナウイルスに対するわが国の行政の動きについては、いろいろ思うところはあるだろう。ただ個人的にはその中で、国土交通省は迅速かつ的確な動きをしている方だと感じている。

 筆者がすぐに思いつく交通や道路関連でも、4月21日には利用者が急減していたタクシーで料理の配送をすることを期間限定で認め、6月5日にはコロナの影響を受けているレストランやカフェが路上でテイクアウトやテラス営業などをする際の許可基準を緩和と発表しているからだ。


 そして同じ6月の18日には、コロナ対応の当面の道路施策をまとめて発表。しばらく続く「ウィズコロナ」と、その後の「アフターコロナ」の時期に分けて項目を列記している。このうちウィズコロナ対策では、前述した飲食店の路上営業緩和に加え、自転車通勤通学の促進、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアの大型車用駐車スペース拡充に取り組むとしている。

「2040年、道路の景色が変わる」の概要

 注目はアフターコロナを見据えた発表で、同日大臣に手渡された道路政策ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」が公開された。

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国交省が発表したビジョン「2040年、道路の景色が変わる
(出典:国交省)

 この提言は、気候変動、人口減少、デジタル化、そしてポストコロナの新しい生活様式などの課題に対し、道路政策によって実現を目指す2040年の日本社会の姿と政策の方向性を提案したものだ。

 同省が設置する社会資本整備審議会道路分科会の基本政策部会で議論が進められ、今年2月に素案が示されていた。

 具体的には、以下の「5つの道路の将来像」と道路行政が目指す「3つの社会の姿」、それぞれに対する「政策の方向性」で構成されている。

■5つの道路の将来像

  1. 1.通勤帰宅ラッシュが消滅
  2. 2.公園のような道路に人が溢れる
  3. 3.人・モノの移動が自動化・無人化
  4. 4.店舗(サービス)の移動でまちが時々刻々と変化
  5. 5.災害時に「被災する道路」から「救援する道路」に
■道路行政が目指す3つの「持続可能な社会の姿」とそれぞれの「政策の方向性」

(1)日本全国どこにいても、誰もが自由に移動、交流、社会参加できる社会
  • ・政策の方向性01:国土をフル稼働し、国の恵みを享受
  • ・政策の方向性02:マイカーなしでも便利に移動できる道路
  • ・政策の方向性03:交通事故ゼロ
  • ・政策の方向性04:行きたくなる、居たくなる道路
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幹線道路ネットワークと高度な交通マネジメントにより、道路インフラがコネクテッドカーを最適経路に案内する
(出典:国交省)

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地方の道の駅にも賑わいが生まれる
(出典:国交省)

(2)世界と人・モノ・サービスが行き交うことで活力を生み出す社会
  • ・政策の方向性05:世界に選ばれる都市へ
  • ・政策の方向性06:持続可能な物流システム
  • ・政策の方向性07:世界の観光客を魅了
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曜日や時間帯に応じて道路空間の使い方が変化する路側マネジメントが普及
(出典:国交省)
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ロボットやドローンを活用した配送により、ラストマイル輸送が自動化・省力化される
(出典:国交省)

(3)国土の災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全に安心して暮らせる社会
  • ・政策の方向性08:災害から人と暮らしを守る道路
  • ・政策の方向性09:道路交通の低炭素化
  • ・政策の方向性10:道路ネットワークの長寿命化
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BRT(バス高速輸送システム)や自転車などが中心の低炭素な交通システム
(出典:国交省)
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道路清掃や落下物回収などの維持管理作業を自動化
(出典:国交省)


 驚いたのは国交省のオフィシャルサイトにもアップされた資料だ。国の行政機関が作成した資料というと、細かい字でびっしり埋まった紙が何十ページも続く様式を想像しがちだが、こちらはソフトなタッチのイラストを多用しており、色使いも爽やかで、ベンチャー企業のプレゼンテーションを思わせる。

 お堅いイメージもある国交省からどうしてこのような提言が生まれたのか。まとめに携わった同省道路局の藤浪 武志氏にオンラインで話を伺うと、次のような答えが返ってきた。

作成に携わった担当者を直撃

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国土交通省
道路局
藤浪 武志氏

「『2040年、道路の景色が変わる』は、2019年春、国交省道路局の中堅・若手が自主的に作ったチームで始めた勉強会が母体になっています。省内の他の局や民間企業の意見も取り入れながら進めていきました。すると、社会資本整備審議会道路分科会の基本政策部会で今年の8月9日に発表する機会をいただけることになり、チームのメンバーを拡大しながら中堅・若手の意見を取りまとめ、発表に至りました」(藤浪氏)

 同氏によれば、このような部会で幹部以外の人が発表を行う前例はほとんどなかったというが、プロジェクトに前向きな幹部が多く、後押ししてくれたとのことだ。イラスト主体のデザインについても「家族が目を通してくれる」という若手の提案を受け入れてくれたそうだ。

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親しみやすく、内容をイメージしやすいイラストが印象的だ。このイラストでは「公園のような道路が生まれ、道路そのものが観光資源化する」シーンを表現している
(出典:国交省)

 こうした動きは道路局に限った話ではない。同じ国交省の水管理・国土保全局では、水辺の活用の可能性を切り開くための官民一体の協働プロジェクトとして、その名も「ミズベリング」を推進している。さらには、経済産業省では空飛ぶクルマプロジェクト推進のために副業・兼業限定のいわゆる「週一官僚」を募集するなど、既存の枠にはまらない自由な活動が目立ちはじめている。藤浪氏自身も、入省したての頃に比べると機動力が増し、スピード感が出てきたと、中にいて感じるという。

 プロジェクトの名前に2040年という具体的な年を入れたのは、同省で前回の道路政策のビジョンが2002年に策定された「TURN 道の新ビジョン」以来約20年ぶりなので、今から20年後の日本社会を見据えたことに加え、今回のプロジェクトで中心となっている中堅職員が責任を持って実現に移していくという、ライフワークとしての意味も込めているという。

 こうした表面的な部分だけではなく、「2040年、道路の景色が変わる」は中身も斬新だ。なによりも目を引くのは、そのテーマだ。

【次ページ】担当者が語る「2040年、道路の景色が変わる」の真意

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