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- 2021/03/11 掲載
スマートシティの進展から見える、ロボットビジネスの「次のビジョン」
スマートシティの代表例、トヨタの「Woven City」
「スマートシティ」という言葉を聞く日が増えた。代表例がトヨタが東富士工場跡地に着工した「Woven City」だろう。「Woven」とは「編む」「織り交ぜる」という意味だそうだ。その名のとおり、地上には自動運転モビリティ「e-Palette」専用の道、歩行者専用の道、そして歩行者とパーソナルモビリティが共存するプロムナードを網の目のように織り込む。さらに地下にはモノの移動用の道を作る。その街には、高齢者、子育て世代の家族、そして発明家など360人程度住むそうだ。さらに将来的にはトヨタの従業員を含む2,000人以上の住民が暮らし、「社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境」を目指すとされている。ちなみに公用語は英語だそうだ。私有地なのでさまざまな実験が比較的自由にできる。おそらく、エッセンシャルワーカーが行っている仕事の自動化も想定されているのだろう。ここでロボットがどのように使われるかは注目している。屋外だけではなく、Woven Cityの住宅内部では、日々の生活を支援する家庭内ロボットなどの新技術の実証が行われる予定だとされている。
もちろん家自体もスマートホームで各種センサーで冷蔵庫の中身から住民の健康チェックなどを自動で行うという。住人にどんな人たちが選ばれるのかは庶民にはわからないが、トヨタ版のゲーテッド・コミュニティ(周囲を壁やフェンスで囲み出入り口にゲートを備えた、人の出入りが制限された住宅地)のようなものになってしまわなければいいのだが、と思っている。ちなみにトヨタのミッションは「幸せの量産」だそうだ。
大阪万博は「コモングラウンド」でスマートシティを狙う
これほど大規模なものは他にはあまりないが、他にも東急不動産やソフトバンクによる竹芝地区のスマートビル実証実験、千葉県柏の「柏の葉スマートシティ」、パナソニックの工場跡地を使った「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」などが、しばしばメディアに取り上げられている。2025年に予定されている大阪万博をスマートシティの実証実験の場としようという案もある。大阪府は2020年4月にスマートシティ戦略部を設立した。同年7月に大阪商工会議所は「コモングラウンド・リビングラボ」を中西金属工業の敷地内に設置。「コモングラウンド」はgluonの豊田啓介氏が提唱している概念で、「建築や都市の 3Dデータをインデックスに、空間に存在する様々なものをデジタル情報として扱うことで、フィジカル空間とサイバー空間をリアルタイムにシームレスにつなぐ」という考え方だ。そのためのデータ構造を異業種で共同して構築しようとしている。実際に大阪万博が行われるのかどうか、いまひとつ実感が持てないが、確かに万博を行うのであれば、さまざまな実験を行う場としては最適かもしれない。
海外は、より大規模な構想を展開中
いっぽう、海外では中国のテンセントが人口8万人の「Net City(ネットシティ)」を建設するとしている。2027年に完成予定だ。この都市でも自動車や鉄道は地下を走ることになっている。また「スマートシティ先進国」とも言われるシンガポールでは総面積700ヘクタールのスマートシティプロジェクト「Tengah Town(テンガータウン)」を政府が主導して進めている。特に中国やシンガポールの動きは、今後も注目しておくほうがいい。ちなみにシンガポールはロボット導入先進国でもあり、パナソニックの搬送ロボット「Hospi」など8つのメーカーから50台のサービスロボットが導入されているチャンギ総合病院では、すでにロボット同士の渋滞が発生しており、今後はロボット相互の通信規格の策定や、全体最適のためのフレームが重要になるだろうと指摘する記事もあった。
【次ページ】「ロボットがやがてスマートシティの一部となる」ことの意味
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