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  • 2020/09/15 掲載

投資アプリ「Robinhood(ロビンフッド)」とは何か? 熱狂的な若者を生んだ仕組み

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ミレニアル世代向け金融サービスとして大きな注目を集めているのが、投資アプリを手がける「Robinhood(ロビンフッド)」だ。コロナ禍を契機に投資を始めた若い世代は「ロビンフッダー(ロビンフッド族)」とも呼ばれ、市場の動向にも影響を及ぼすに至っている。そのシンプルで分かりやすいデザインと、手数料無料のサービスは投資の裾野を広げる大きな効果があった。その一方で、過度なゲーム性が短期売買を繰り返す要因となり、長期的な資産形成の妨げになったり、その不透明なビジネスモデルが批判されてもいる。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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投資アプリ「Robinhood(ロビンフッド)」のビジネスモデル
(出典:著者作成)

ソーシャルゲームのような投資アプリ「ロビンフッド」

 資産形成は若い世代にとっても身近な話題になりつつある。日本だけでなく、世界的にも、老後の生活に備えるため、貯金や投資へ意識が向くようになった。 米国Investopediaの調査では、ミレニアル世代の46%がより多くの貯金をしたいと思い、投資をする理由として64%が老後の備えだと回答している。一方、投資について十分な知識があると感じているのは37%に過ぎず、「分かりにくい」「リスクがある」「怖い」といった印象を持っていた。

 ロビンフッドはこうしたユーザーに対し、手数料無料で手軽に投資が行えるスマホアプリを展開するシリコンバレーのスマホ専業証券会社だ。ロビンフッドでは従来の証券サービスと同様に、株式やETF(上場投資信託)、オプション、さらには暗号通貨の売買が可能となっている。JMP証券の調査では、同アプリのユーザーは平均して1000~5000ドルとなっており、比較的少額の投資が一般的だ。 また、株価の高い株式でも、単元株未満で1ドルから売買できるミニ株での投資も提供されている。

 米国CBGL社が行った調査では、1982~1996年に生まれたミレニアル世代のうち、100万ドル以上(約1億円)の金融資産を保有する「ミリオネア」が既に60万人を超えたとされる。ロビンフッドが対象とするのは、ミリオネアまで達していなくとも、比較的収入が高く、これから投資に挑戦したいと考えるミレニアル世代が中心となっている。


 そのアプリの特徴は、若い世代が使い慣れているSNSやモバイルゲームのようなユーザーインターフェースを備えていること。たとえば、新たな情報があればモバイルアプリがプッシュ通知を送るため、1日に10回以上もアプリを開く人もいるという。2015年にアプリを正式公開する前には、限定されたユーザーにのみ登録を許可して、登録待ちをしているユーザーの興味をかきたてるマーケティングを行うなど話題づくりもうまかった。

 ロビンフッドのデザインを見ると、確かに従来の証券サイトと比較しても、表示する情報量が必要最低限になっており、シンプルな構成になっている点に気付く。投資経験の少ない人が想定ユーザーであるので、高度な分析を提供するよりも、分かりやすさが重視されている。その洗練されたデザインにより、2015年にはAppleデザインアワードも受賞している。一見、退屈にみえる投資活動も、ロビンフッドは簡単に楽しめて習慣性のあるものに変えることに成功したわけだ。

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ロビンフッドの利用イメージ。オプション取引でも手軽に利用できる
(出典:ロビンフッド)


コロナ禍でユーザーが爆増、「ロビンフッド現象」を生み出した

 ロビンフッドは急速にそのユーザー数を増やしてきた。2016年には100万人だったユーザーは2018年10月に600万人、2019年末には1000万人に到達している。さらに、コロナ禍で外出自粛を余儀なくされる中、ゲーム性のあるロビンフッドに興味を抱く、若い世代が急激に増加した結果、2020年5月にはユーザー数が1300万人となった。

 ブルームバーグはDART(1日平均の取り引きによる売り上げ)の指標を用い、ロビンフッドと競合他社との比較を行った。2020年6月の大手証券サイトAmeritradeのDARTは384万ドル、Charles Schwabは180万ドル、E*Tradeは110万ドルだったのに対し、ロビンフッドのそれは431万ドルにものぼった。ロビンフッドの取り引きは2020年第1四半期に比べ、第2四半期に2倍になったとされ、コロナ禍における同社の利用拡大は明らかだ。

 ロビンフッドは多数のユーザーから受け入れられた点を踏まえ、さらなるサービス拡大のため、大型の資金調達も行われてきた。2020年8月に2億ドルの投資を受け、その評価額は112億ドルとなっている。その評価額から、いわゆるユニコーン企業の一つと数えられるようになった。その投資家の中にはGV(Googleの投資部門)やアンドリーセン・ホロビッツといった著名なベンチャーキャピタルが名を連ねている。

 ロビンフッドは以前からIPO(新規株式公開)の噂が絶えなかった。2020年に入ってからも資金調達を続け、拡大を続ける同社は、IPOを行って市場から資金調達する可能性があるからだ。ただし、現在は米証券取引委員会(SEC)が不正な取引について疑義を持っていると調査していることやコロナ禍によって不確実性のある株式市場の影響もあり、IPOのタイミングは不透明な状態にある。

【次ページ】ロビンフッドのマネタイズ方法への課題

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