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  • 2020/11/18 掲載

住友生命やauFHらが激論、「オンチェーン決済」の現状と課題とは

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実需を伴うブロックチェーンの社会実装が徐々に増えつつある中、「ブロックチェーンによるビジネス取引の決済(オンチェーン決済)」が注目されている。国内のビジネスにおける必要性や利便性はどう考えるべきか。デジタル通貨によるオンチェーン決済の今後の普及に向けた課題について、auフィナンシャルホールディングス 藤井 達人氏をモデレーターに、Securitize Japan 森田 悟史氏、スタートバーン 中村 智浩氏、渥美坂井法律事務所パートナー弁護士 落合 孝文氏、住友生命保険 秋山 寛暢氏が語った。

フリーライター 高橋ピョン太

フリーライター 高橋ピョン太

ゲーム開発者から、90年代はアスキー(現・アスキードワンゴ)のパソコンゲーム総合雑誌『LOGiN(ログイン)』編集者・ライターに転向。ログイン6代目編集長を経て、ネットワークコンテンツ事業を立ち上げ、PC向けネットワークコンテンツ開発、運営に携わる。2002年にドワンゴの執行役員に就任後、モバイル中心のコミュニケーションサービス、Webメデイア事業に従事。現在は、フリーライターとして、ゲーム、VR、IT系分野、近年は暗号資産メディアを中心にブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)関連のライターとして執筆活動中。

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(左上から時計回りに)秋山 寛暢氏、森田 悟史氏、落合 孝文氏、中村 智浩氏、(中央)藤井 達人氏
(出典:日経 XSUM Channel
※本記事は、2020年8月26日に行われた、金融庁 日本経済新聞 共催 FIN/SUM BB 2020「デジタル通貨によるオンチェーン決済の可能性」での講演内容をもとに再構成したものです。

デジタル通貨による「決済」の現状

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auフィナンシャルホールディングスの執行役員CDO 兼 Fintech企画部長の藤井 達人氏
 冒頭、auフィナンシャルホールディングスの藤井氏が「ブロックチェーンは暗号資産のみならず、改ざんできない記録証明の用途において、特定の企業に限定的して公開される『コンソーシアムチェーン』の拡大が目覚ましい」と社会実装の現状を語った。また、すべての利用者に開かれる「パブリックチェーン」の社会利用においても、ブロックチェーンゲームの利用やセキュリティトークン(デジタル証券)など金融領域での活用が始まっているとした。

 4人の登壇者の所属団体もさまざまにブロックチェーンに取り組んでいる。住友生命では現在、ブロックチェーンの仕組みで保険の入口から出口までの契約管理を一元管理する仕組みや、医療機関との連携による保険金や給付金の自動支払いなどに関する実証実験に取り組んでいる。

 スタートバーンは、アート業界におけるアートの所有権、著作権をパブリックブロックチェーンで管理するサービスを開発・提供している。また、2017年創業のSecuritizeは、セキュリティートークン、デジタル証券の発行と管理を行うプラットフォームをSaaSにて提供し、資本市場の効率化を目指している。

 藤井氏は、各社が取り組む事業・業務における、送金や決済に関連する事業で解決したい課題の有無について尋ねた。

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Securitize Japan Tech Consultantの森田 悟史氏
 Securitize Japan 森田氏は、デジタル証券の現行の技術の利点として「DVP(Delivery Versus Payment)決済」を挙げた。DVP決済とは、証券と資金の授受をリンクさせる方法で、代金の支払いが行われることを条件に証券の引渡しを行う、または証券の引渡しが行われることを条件に代金を支払うことで、仮に決済不履行が生じても取りはぐれが生じない決済方法を意味する。

 森田氏は「DVP決済は、資産のデジタル化が進む中で、両方同時に行われることが保証される交換であるからこそ、利用されている」と説明し、「デジタル証券とデジタル通貨という関係では、法の整備がまだ途中という印象」と語った。

 Securitizeは、実際にDVP決済にためのスマートコントラクトの機能を提供しているが、米国ではそこにステーブルコインが使われている。しかし、日本では日本円に相当するデジタル通貨(ステーブルコイン)がないため、実際にはイーサリアム(ETF)などを使うことになる。

 その際には、ボラティリティの問題、つまり暗号資産の値動きが激しく、定めた金額を決済することが難しいという課題に直面するため、本来のサービスとはかけ離れると指摘する。「DVP決済以外にも償還や配当など、デジタル通貨が利用できる箇所は多く、法的に問題のないステーブルコインの登場が待たれる」(森田氏)とした。

アート業界でオンチェーン決済が普及するための3要素

 藤井氏は「金融のデジタル化は、レガシー領域を変えていくビジネスモデルが多い印象。スタートバーンが取り組む新しいビジネス領域での課題はどうか」と、スタートバーン 中村氏にアート業界の現況を尋ねた。

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スタートバーン取締役 最高技術責任者の中村 智浩氏
 中村氏は「決済より、来歴管理の整備が急務」と説明する。アート業界では、誰が何の作品をいつからいつまで持っていたかという履歴を「来歴」と呼んでいるがその来歴情報について、現状ではまったく管理できていない状況という。

 ただし、アート作品は金融資産でもあるため、来歴に決済をひもづけるメリットは、必然になるという。「来歴は、決済などの取引履歴が残せることで次のレベルに到達できる」と、中村氏は考えている。また、同氏は「オンチェーン決済(ブロックチェーン上で処理される決済)の仕組みが広まるには、技術・法律・リテラシーの3つの成長が必然だ」と指摘する。

 現状の問題として「簡便なウォレットシステムがない」ことを挙げる。たとえば、一般の人がイーサリアムを扱うためには、暗号資産取引所に口座を開設してイーサリアムを手に入れることになる。中村氏は「そこに至るまでのハードルが高さが尋常ではない」と指摘する。

 また、ボラティリティの問題、つまり税金の問題もあると中村氏はいう。「商取引に使いたいだけなのに、そこに差額(ボラティリティによる利益)で税金が発生する状況は、決済においては不便である」と説明する。そういう意味でも「ステーブルコインやデジタル通貨は、技術と法律とリテラシーを上げていくものとして期待している」と語った。

日本円でも正直、あまり困っていない? 保険業界の現状

 同様の質問に対して、住友生命保険 秋山氏は「保険業界はさらにレガシーだ」と強調した。同氏は保険業界において現業でもデジタル通貨でできることとして「保険料の収納」を挙げた。

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住友生命保険 デジタルイノベーション推進室長の秋山 寛暢氏

 「当社の保険料だけでも、800万人近くの顧客から年間3兆円の収納がある。この管理だけでも相当な業務になる」という。また、「生命保険会社の役割としては、万が一のときに死亡保険金や入院給付金などをスピーディーかつ確実に支払いをする業務があるが、デジタル通貨はそのような分野で利用できると考えている」と説明する。

 これを受けて、藤井氏は「決済部分がブロックチェーン決済になることで、保険業界に何かメリットはあるか」と尋ねた。秋山氏は「藤井氏の指摘のとおり、実は日本円でも正直、あまり困っていない」と回答した。

 その上で決済の仕組みが変わることによるメリットについて言及した。「この病気のときにどれだけ支払いが行われたかなどの履歴を蓄積することで、実は今まで保障できていなかった病歴などを保障できるようになるのではないか。そうした新しいサービスを生むことができるようになることに期待している」と述べた。

【次ページ】「ブロックチェーン×決済」のトレンド、「同盟」が鍵に?

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