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- 2020/11/25 掲載
日銀の「特別付利」をわかりやすく解説、地域金融機関への影響とは?
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
特別付利とは
日銀が導入を決定した「特別当座預金制度(以下、特別付利)」とは、経費削減や合併検討によって経営効率化に取り組み、一定の条件を満たした地銀(第二地銀を含む)に向けられた制度だ。条件を満たした地銀は、中央銀行の当座預金に預け入れている残高(日銀当座預金残高)にプラス0.1%を付利されるという仕組みとなっている。条件を満たした地銀にとっては、預け入れているだけで資金が増えるメリットがある。そもそも付利とは、民間銀行が中央銀行の当座預金に預け入れている残高(日銀当座預金残高)に対して適用される利子のこと。
ちなみに、現在日銀は日銀当座預金残高の一部に対して0.1%のマイナス金利を適用しているが、これがマイナス金利政策と呼ばれる政策だ。銀行からすれば、預け入れているだけでお金が減ってしまうため、融資や投資などを増やし積極的に市場にお金を流そうとする、というのがマイナス金利政策の狙いでもある。
今回の特別付利は、日銀当座預金残高に“プラス”0.1%を付利する制度であり、地域経済活性化や経営基盤の強化に取り組んだ地銀を応援する狙いがある。
通常会合と金融政策決定会合の違い
ただし、注意すべきはこうした金利が絡む重要事項が、日銀の「通常会合」でひっそりと決定されたことにある。通常会合とは、原則として毎週2回開催され、金融政策との直接的関係が希薄な事項を決定する場である。具体的には、「マクロプルーデンス」と呼ばれる金融システム全体の信用秩序維持に資するための業務のほか、経費予算の作成、国会への報告書・業務概況書の作成といった事務的なものも含まれる。したがって、通常会合における決定がメディアで報道されることは極めて稀であるほか、金融市場への影響も小さい。
一方、政策金利の変更や長期国債、ETF(上場投資信託)などの資産購入といった、金融政策上の重要事項は、年8回開催される「金融政策決定会合」において9名の政策委員(総裁、副総裁2名、審議委員6名)によって決められる。
今回のように「金利」が絡んでいる事項は、通常であれば金融政策決定会合で決められるものであると筆者は理解していたが、今回は通常会合で決定された。日銀は、今回の措置を金融政策に該当しないと判断した模様である。筆者は、特別付利の導入に関する速報を目にした際、驚きを禁じ得なかった。
そうした中、決定された日銀の特別付利は、地域金融機関、さらには金融市場全体にどのような影響を及ぼすのだろうか。
【次ページ】特別付利の影響
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