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  • 2020/12/03

Fintech協会 新会長が「金融は一周して元に戻った」と語る理由

日本のフィンテック黎明期に設立されたFintech協会は、日本のフィンテックをけん引してきた組織の1つだ。同協会の新しい会長に就任した沖田 貴史 氏に、フィンテックの今後、フィンテックにおける新しい潮流である「分散型金融」の可能性、既存の金融の世界に与える影響などについて聞いた。

FinTech Journal編集部 山田 竜司

FinTech Journal編集部 山田 竜司

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一般社団法人Fintech協会 代表理事 沖田 貴史 氏


フィンテックが迎えつつある新たなフェーズ

 フィンテックはいま、生活に溶け込むフェーズだと思います。一定の閾値超えると、もう元に戻ることはありません。そこで、今後は仕組みやインフラの再構築が重要になります。

 金融庁の制度はグローバルを参考にしているので、今の延長線上である「未来からの逆算」で作られています。公正取引委員会の指摘を受けて見直しがされている「全銀システム」など「どうしても止めてはいけないシステム」もあるべき姿から逆算して、ロードマップを引くことが必要でこうした取り組みからは目が離せないでしょう。

 一方、分散型金融など、現在のシステムやフィンテックの延長線上には「ない」ものにも注目しています。分散技術はある種のゲームチェンジャーで、イノベーションそのものです。馬を増やしても列車にはならないのと同じです。注目すべきインダストリーとして、外せない領域です。

 ただ、分散型金融も結局は「手段」であるとも考えています。大きいインダストリーを作る際、最初は「手段が目的になる」ことが多いのです。たとえば、「ブロックチェーンで●●しました」というニュースです。しかし、大切なのは「新技術でどんな課題を解決できるのか」です。

 「手段の目的化」は通過儀礼のようなものです。イノベーティブな技術やプロダクトは見て触って、やってみないと分からないものなので、否定はしません。しかし、分散型金融や付随するテクノロジーが「どういうメリットがユーザーに提供されるのか」を真剣に示すべきフェーズだと思います。たとえば、LayerXのCEOである福島 良典氏さんは、より強くそうした例を打ち出してきていると思います。

 分散型金融はテクノロジーにしても業態にしても、まだ「縦」で、専門家が深掘りしている段階ですが、“横ぐしを刺す”のは「ユーザーや社会に対して」であるべきです。

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「ユーザー」「社会」のための金融への再構築

 現在、国際送金やSTO(Security Token Offering)などの領域で、ブロックチェーンに代表される分散型技術が社会に実装されつつあります。これらは、従来の金融の仕組みの 「延長線上」にはないものです。

 協会としては、既存の金融とそれに付随するフィンテックも分散型金融も両方にアプローチし、両者の共存を望んでいます。

 一方さまざまな領域で「自分たちががんばっていると、相手を否定したり非難したりしたくなる」という性質について難しいと思うことがあります。私もブロックチェーンの関連会社にいましたが「ブロックチェーンはダメ」という人もたくさんいましたし、「すべての分野」にブロックチェーンを採用したい人もいました。自分の信じるものは大切ですが、信じるあまり相手を非難するのは、まったく生産的ではありません。

 規制側、たとえば金融庁などは、どの技術も公平に見ているように感じます。本当の分散金融になると「誰に対して規制するのか」が問題になりますが、規制当局は、「既存の仕組みにDLT(分散台帳技術)を使いました」というものだけでなく、トークン発行に伴う資金調達やマーケティングを暗号資産取引所が支援する「IEO(イニシャルエクスチェンジオファリング)」にも、ちゃんと対応しているイメージです。

 分散型金融にある種の偏見があったのは理解できます。マネーロンダリングにつながりかねない「仮想通貨のエクスチェンジ」や「KYC」などへの対応が緩いという問題もあったわけですが、ユーザーが広がって「あなたの家族や大事な人が被害に遭うかもしれない」となれば、既存の金融同様に安心安全が求められるのは当然です。

 協会では、こうした多様な考え方を取り入れることが、エコシステムが広がる中で重要だと考えています。「ユーザー」「社会」というキーワードを、しっかり主語に持っているべきということです。

 「ユーザー」「社会」のための金融というのは、けっしてきれいごとなく、本質だと思います。学術領域での私の定義ですが、フィンテックには「金融領域のパワーシフト」の側面があります。つまり、フィンテックは「ユーザー」「社会」という言葉とある種同義なのです。この軸を起点に組み直していくべきだと思います。

 そもそも歴史的に見ると、中央銀行は、もっとも古いものでも350年前で、ドルの兌換停止、いわば「金と交換しません」というニクソンショックはまだ50年ぐらい前です。預金封鎖も、私の祖父世代の事件です。

 中央銀行がある世界が我々にとっては自然で普通である一方、人類が文明をまともに持ってからゆうに2000年以上経っています。「キングダム」や「項羽と劉邦」は紀元前の話ですから(笑)。2000年以上昔から金融に相当するものが、当然存在しているわけです。

 つまり、分散金融が壊しかねない常識とは、この50年ぐらいのものです。もう少し広げれば150年ぐらいでしょうか。江戸時代には中央銀行なんてないわけですから。人間は何度も何度も制度を変えてきたのです。

【次ページ】当たり前になったオープンイノベーション

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