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  • 2021/02/01 掲載

京大院教授 岩下直行氏が語る、「20年停滞した金融」がコロナ禍で一気に変わるワケ

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「インターネットが金融を変革する」と言われ続けて20年、現実はそれほどドラスティックには変わらなかった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で社会のオンライン化が一気に進み、こうした状況も変わりつつある。これまで、日本を含む先進国でフィンテックが思ったように進展しなかった理由と、それが急速に変わりつつある現在の状況、そして今後の展開について、京都大学公共政策大学院 教授・国立情報学研究所 金融スマートデータ研究センター客員教授 岩下 直行 氏が解説した。
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日本の金融が「20年停滞」している間、新興国の金融は著しい変化を遂げている
(出典:NII⾦融スマートデータ研究センター・シンポジウム)
※本記事は、2020年12月14日に行われた「NII⾦融スマートデータ研究センター・シンポジウム」での講演内容をもとに再構成したものです。一部の内容は現在と異なる場合があります。肩書は当時のものです。


2020年、「日本の21世紀がスタートした」

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京都大学公共政策大学院 教授
国立情報学研究所
金融スマートデータ研究センター
客員教授 岩下 直行 氏
(出典:NII⾦融スマートデータ研究センター・シンポジウム)

 新型コロナウイルスは、我々の社会に大きなマイナスのインパクトを与えている。ただし、そのインパクトは、インターネットのおかげで、かなり緩和されているのも事実だ。リモートワークもその1つだ。コロナの感染リスクを回避しながら経済活動を続けられているのは、まさにインターネットのおかけである。もしもインターネットがなかったら……その犠牲は、我々の想像をはるから超えるだろう。

 ただし、同時に今回のコロナ禍は「日本社会がいまだに20世紀にとどまっていた」ことも明らかにした。そう述べるのは、京都大学公共政策大学院 教授・国立情報学研究所 金融スマートデータ研究センター客員教授 岩下 直行 氏である。

「今回、我々が実感したのは、この20年間、インターネットがこれだけ普及しているにもかかわらず、社会そのものはそれほど変わっていなかった事実です。対面取引や署名主義、日本特有のハンコの文化などは、何も変わっていなかったのです」(岩下氏)

 岩下氏は、背景には全員が同意しないと動かない日本人のメンタリティがあると述べる。少しでも反対があると古い仕組みが残ってしまう。ある意味では優しい社会なのかもしれないが、やはり変化への対応は遅くなる。

 しかし、今回のコロナ禍によって、変わらなかった日本社会が変わりつつある。医療の世界では、緊急措置として初診対面原則が見直され、遠隔での初診・服薬指導が可能になった。企業間の契約でも電子契約サービスが広がり、行政文書の認印は99%が廃止される。

「21世紀に入ってから約20年、何となく20世紀がそのまま持ち越され、我々はその延長線上で生きてきたような気がします。そして、2020年3月、新型コロナウイルスが拡大し、世の中が一気にオンライン化しました。わずか数ヶ月で10年分ぐらいの変化が起きたようです。2020年、日本社会はようやく21世紀を迎えたのです」(岩下氏)

なぜ「インターネットで金融を変革」できなかったのか

 では、金融の世界はどうか。この20年間、「インターネットが金融に革命を起こす」といった言説が繰り返し登場し、消えていった。現実に銀行や証券会社、保険会社の業務の中身を見ると、10年前、20年前とそれほど変わっていないという声は少なくない。「インターネットが金融を変えて革命が起きるという話は、もう聞き飽きた。実際には、そうならないじゃないか」ということだ。

 岩下氏は、その原因を「動かない山があったから」と次のように説明する。

「皆さんの周りにも『インターネットでお金を取引するなんて』『判子をなくすなんて』『対面をなくすなんて』……といった保守的な考え方を持つ方々がいるのではないでしょうか。私はこれを『動かない山』と表現していますが、この山が金融の世界がこれまで変わらなかった大きい原因であると思います」(岩下氏)

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コロナ禍では金融だけでなく「対面医療」などさまざまな制度が見直された
(出典:NII⾦融スマートデータ研究センター・シンポジウム)

 しかし今回のコロナ禍をきっかけに、この「動かない山」が動くかもしれないという兆候が見られると、岩下氏は指摘する。その大きい背景となっているのが次の3つだ。
  • ・世界的なデジタル金融の拡大
  • ・政府の姿勢の変化
  • ・保守的な個人顧客の世代交代

【次ページ】新興国で爆発したデジタル金融のインパクトが先進国に跳ね返る

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