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本年9月にはデジタル庁が設置され、国・都道府県・自治体が一体となった行政デジタルプラットフォームの構築が進もうとしている。IT化で行政手続きの高度化や合理化を推進しようという試みだ。本稿では、前回のマイナンバーを活用した業務の高度化に続き、デジタル庁の主要ミッションについて解説する。
デジタル庁のミッションとは何か
政府公表資料である「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」をみると、この2021年9月に設置予定のデジタル庁の業務(ミッション)が定義されている。
まず示されているのは「国の情報システム」である。国の情報システムについて、(1)デジタル庁システム、(2)デジタル庁・各府省共同プロジェクト型システム、(3)各府省システムの区分に分類し直した上で、これらのシステムに関する事業を統括・監理し、情報システムの標準化や統一化により相互の連携を確保する、とされる。予算規模は、令和2年度で合計約8,000億円、令和3年度の一括計上予算は3,000億円という。
さらに、デジタル庁の業務として、「地方共通のデジタル基盤」や「マイナンバーの利活用」が挙げられ、対象は大きく「全国規模のクラウド展開」「マイナンバー関連のシステム整備」「官民連携に向けたデジタル基盤の整備」の3つから成る。
全国規模のクラウド展開
全国規模のクラウド移行に向けて、デジタル庁が総務省と連携して地方公共団体の情報システムの標準化・共通化に関する企画と総合調整により、政府全体の方針の策定と推進を担うほか、補助金の交付されるシステムについて統括・監理するとされる。
これらにより、地方公共団体の情報システムのうち、住民に関する事務に係る情報システムのうち相互に連携する領域(住民基本台帳、地方税など)について、人的・財政的負担の軽減と、サービスの利便性向上を図ることが目的だ。
具体的には、住民記録、地方税、福祉など、自治体の主要な17業務を処理するシステムの標準仕様を、デジタル庁が策定する基本的な方針の下、関係府省において作成することとなる。ただし、地理的環境や産業構造の差異などを受け、自治体の業務は多岐に及んでおり、すべての自治体の業務を共通的な視点で整理することは極めて困難だ。
さらに、結局は各省庁が業務要件の標準化・共通化の検討を進めることとなり、デジタル庁はアドバイザーのような恰好での関与にとどまる可能性が高い。これは自治体における各業務に精通することが短期的に困難であることに加え、デジタル庁としての絶対的な人員が不足しているためだ。現在、コロナ対応、とりわけワクチン接種を巡る対応で自治体はおろか厚生労働省の対応要員の不足が際立っている。
そのため、1月下旬には各省に派遣されていた厚生労働省からの出向職員が本省に大規模に急遽復帰を余儀なくされるなど、デジタル庁準備室の要員確保にも影響を与えているのが実態なのだ。かつ、全国には1700以上もの自治体が存在し、その1つひとつの移行作業を短期間で実現すること自体、想定を超える人的稼働を伴うことが容易に予見されるところだ。
国はこの4月から標準システムの機能要件定義に向けた作業を開始するとしている段階であり、全自治体の新クラウド基盤への移行を2025年に予定するという国が公表しているスケジュールは、既に大幅な遅延が確実な状況とも言える。
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