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  • 2021/08/13

米レモネードに「7,100億円」、インシュアテック企業が大きく評価されるワケ

欧米やアジアで数百億円規模の資金調達に成功するインシュアテックスタートアップが相次いで誕生している。その背景にあるのは何か。MS&ADベンチャーズ マネージングパートナーのジョン・ソバーグ氏がモデレーターとなり、ヒッポエンタープライズCEOのアサフ・ウォンド氏、ネクストインシュアランスCEOのガイ・ゴールドスタイン氏が「インシュアテック企業の優位性、市場を席巻している理由」などを話し合った。

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インシュアテック企業に「数千億円」の価値があると認められるケースがある理由
(出典:FIN/SUM 2021)
※本記事は、2021年3月16~18日に行われた「FIN/SUM 2021」での講演内容をもとに再構成したものです。一部の内容は現在と異なる場合があります。肩書は当時のものです。

なぜ今、インシュアテック市場は熱いのか

 モデレーターのジョン・ソバーグ氏は、MS&ADホールディングスのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、MS&ADベンチャーズのマネージングパートナーを務めている。グローバルで保険領域を対象とした投資をするVCの立場から、「最近のインシュアテック市場は非常に好調ですが、インシュアテック企業にとって、どのようなビジネスチャンスがあると考えているか」と最初の質問をした。

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MS&ADベンチャーズ マネージングパートナーのジョン・ソバーグ氏
(出典:FIN/SUM 2021)

 住宅保険(日本で言う火災保険)を提供するヒッポエンタープライズの共同創業者 兼 CEOであるアサフ・ウォンド氏は「既存の保険会社とインシュアテック企業の最大の違いは、顧客に再び焦点を当てていること」と答えた。

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ヒッポエンタープライズ チーフエグゼクティブオフィサーのアサフ・ウォンド氏
(出典:FIN/SUM 2021)

 ウォンド氏によると、保険業界は100年の歴史があるが、その間に構築されたレガシーな仕組みに固執した結果、既存の保険会社が「本当の顧客が誰であるか」を見失ってしまっていると指摘する。

 そうした隙を突くように、インシュアテック企業が、データやテクノロジーを駆使して顧客ニーズを詳細に把握し、そこに則した商品・サービスを提供することで、市場での勢力を拡大しているとの見解を示した。

 中小企業向けの各種保険を扱うネクストインシュアランスのCEO、ガイ・ゴールドスタイン氏もウォンド氏の見立てにうなずきつつ、「自動車保険、企業保険、住宅保険、健康保険など、いずれの分野であっても、顧客に焦点を当てている企業が成功を収めていることが分かる」と付け足した。

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ネクストインシュアランス チーフエグゼクティブオフィサーのガイ・ゴールドスタイン氏
(出典:FIN/SUM 2021)

10年前と現在、大きく変化した保険業界とその周辺環境

 4~5年前に創業したインシュアテック企業が大きく成長し、数億ドルの保険料を集めたことから、投資家の注目を集めている。

 これまで十数年フィンテックに投資してきたソバーグ氏は「その間、モバイルペイメントの波があり、次いでストライプのようなクレジットカード企業の波が起きた。その後、バンキングやレンディング、保険という順番でブームが訪れている。なぜ、今保険業界なのか」と尋ねた。

 ゴールドスタイン氏は「率直に言って分からない」と答えながらも、1つの事実として「規制当局が変化に対してオープンだった」ことを挙げる。

 また、ウォンド氏は「10年前と違う点は、データが豊富に取れるようになった」ことを理由として「データがなければ、1000万人の顧客を持つ企業と競争するのは難しい」と述べた。現在は、すべてのデータソースをAPI経由で入手し、費用対効果の高い方法で調達可能になり、インシュアテックを始められる環境ができた」との見解を示した。

 さらに「10年前に保険会社を作ろうとしたら、おそらく既存の損害保険システム基盤であるGuidewireやDuck Creek Technologiesなどを使わなければならず、インフラ構築のための初期投資が必要だった」と説明。現在は、バックエンドにAmazon Web Services(AWS)を使ったり、PayPalやStripeなどの決済代行サービスも利用可能であることに言及し、「過去数年の中で技術にフォーカスした会社がインフラを整えてくれたことで、インシュアテック企業が顧客の増加に対応できるインフラをスケールアップして構築可能になっている」と語った。

 ウォンド氏が率いるヒッポエンタープライズは2021年3月、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて米国株式市場に上場した。祝辞を述べつつソバーグ氏は、インシュアテック企業のレモネード(Lemonade)が65億ドル(約7,100億円)の評価を受けたことに触れ、「このバリエーションは市場をけん引していると思うか」と尋ねた。

 これに対し、ウォンド氏は「市場が理解し始めたと思う」と回答。さらに「適切な企業に投資すれば、その企業が5年後、10年後に市場の次のリーダーになる可能性があること、そして企業の成長を阻む要因もない」とコメントした。

 ウォンド氏は、2002年にPayPalがeBayを15億米ドルで売却した話に触れ、「最大の失敗」と表現した。eBayの市場価値は約3,000億米ドルにも及ぶことから、「望んでいた規模まで持ち続けるべきだった」という、LinkedInの創立者で起業家・投資家であるリード・ホフマン氏の発言を紹介した。

「インシュアテック企業にテクノロジーと適切なチーム、適切なけん引力があれば、投資家はそのポテンシャルを理解してくれるだろう」(ウォンド氏)

 ゴールドスタイン氏も「保険の市場はとてつもなく大きい。その規模は決済市場よりも大きい」と補足し、ウォンド氏の見解に同意した。

インシュアテック企業と、既存の保険会社との違いは何?

 なぜ、保険業界で起業しようと考えたのか。その理由として、ウォンド氏、ゴールドスタイン氏が口をそろえたのは「巨大な市場規模である」「すでに顕在化した顧客ニーズがあり、ビジネスモデルは確立している」「業界のやり方が“時代遅れ”である」点だ。

 では、インシュアテック企業は、どのようなやり方でこの時代遅れの業界をアップデートしようとしているのだろうか。

 ゴールドスタイン氏は、自社のネクストインシュアランスの特長として「シンプル」「値段が手ごろ」「顧客ニーズに対してテーラーメイドである」点を挙げた。また、それらを実現している理由として「100%デジタルの運営体制である」と説明する。

「当社のWebサイトを訪れたお客さまは、5分以内に保険に加入できる。企業向け保険商品は個人向けとは異なり、月に何度も保険会社とのやり取りが生じる。なぜなら、企業が新しい取引先と契約をするたびに、被保険者証を発行する必要があるからだ。私たちは月に約2万件の証明書を発行しているが、それらは100%デジタルで対応している」(ゴールドスタイン氏)

 また、「新しい従業員を雇用した」「新車を購入した」「保険の限度額を変更する」など、保険加入後のフォローもすべてデジタルで行われる。さらに、企業の業態ごとに保険を用意しているため、レストランを経営する企業が必要な各種保険をワンストップで購入可能であり、非常にシンプルな顧客体験を提供していると強調した。

 100%デジタル化することで、引き受けや監査、証明書の発行にかかるコストを抑えることも可能だ。ゴールドスタイン氏は「他の保険会社よりも平均で3割程度安く提供できる」と付け加えた。

【次ページ】最悪だった顧客体験を向上させるテクノロジーとは?

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