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- 2022/02/17 掲載
日銀「指値オペ」が引き起こす「悪い円安」とは? それに続く驚くべき展開とは
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
日銀「指値オペ」で円安加速
今回の日銀の指値オペによって10年金利の上限が0.25%であることが再認識された。このことは円金利以外の金融市場、あるいは日銀の金融政策にどういった示唆があるだろうか。一番に想起されるのは日米金利差の拡大観測を通じた円安であろう。実際、2月10日の米国時間では、米10年金利が2%超えを目指すのをよそに、日本の10年金利の0.25%の上限が再認識されたことで、思惑的な円安が進行した。
為替は内外金利差のみならず、日米インフレ率格差なども考慮されることを踏まえれば、今後、一方的な円安進行は考えにくいが、少なくとも短期的には「日米金利差拡大→円安」といった反応が見られたのは事実である。
日銀が招いている?批判殺到「悪い円安」
仮に円安トレンドが持続した場合、筆者は日銀の金融政策に一定の影響を与える可能性があると見ている。円安が続く下でガソリン、日用品、加工食品の値上げが相次ぎ、消費者の体感物価が著しく上昇し、個人消費に悪影響を与える事態となれば、円安批判が激化しても不思議ではない。昨年来、脚光を浴びている「安いニッポン」を語る文脈では「悪い円安」という表現も多く見られており、その背景に日銀の金融緩和があるとする指摘もある。
今後ドル円が横ばい圏内で推移したとしても、過去数年との比較では円安水準にあり、輸入物価は高止まりする。また、海外とのインフレ率格差を加味した実質実効為替レートが示す“見えない円安”は続き、その間、円の購買力は一層低下する。そうした事実を根拠に円高の必要性を主張する識者(含む政治家)も増えてくるだろう。
そうした円安を「悪」とする声を察してか、日銀は3カ月に一度公表する「展望レポート」を通じて、円安のプラス効果を強調した(2022年1月展望レポートBOX1、P40~43)。
日銀の分析によれば、10%の円安はGDPを年間プラス0.8%押し上げる効果があるとしており、黒田総裁も「全体として経済にプラスに作用しているという基本的な構図に変化はない」、「現状、悪い円安とは考えていない」と1月18日の金融政策決定会合後の記者会見で発言した。
日銀は「円安悪論」が盛り上がっている現状を心地良く思っていないのだろう。
【次ページ】「指値オペ発動→円安→円安批判激化」に続く展開とは?
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