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  • 2022/11/07 掲載

まだ「失われた30年」は終わらない…日本経済を衰退させた“残念すぎる”3つの真相

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

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製造業は高度成長期の日本の中心産業であった。しかし、1970年代から伸びが鈍化し、1990年代からは衰退した。日本の基幹産業が大きく変わったにもかかわらず、日本は経済政策も社会体制も変えなかった。そのため新しい産業は成長できず、また今日の貿易赤字や異例の円安につながっている。産業構造の変化を促し、それに対応しなければ、日本経済は「失われた30年」から「失われた40年」に突入することになる。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

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日本の産業構造はどのように変化し、なぜ経済は衰退したのか
(Photo/Getty Images)

日本の産業構造は問題だらけ

 2020年11月から、貿易収支の赤字が続いている。こうなるのは、資源価格が高騰しているからだが、日本の産業構造が古いままであることも原因だ、との指摘がある。そして、円安が止まらないのは、日米金利差が拡大しているためだけでなく、産業構造改革の立ち遅れが原因になっているとの考えがある。

 以下に見るように、現在の日本の産業構造にはさまざまな問題がある。とりわけ、世界経済の大きな変化に追いついていないことが問題だ。産業構造は、経済全体のパフォーマンスに大きな影響を与える。その動向を正しく捉えることはさまざまな局面で重要だ。

 日本の産業構造は、1950~1960年代の高度成長を通じて大きく変わった。農業と軽工業を中心としたそれまでの産業構造から、重化学工業を中心とする産業構造に大きく変わったのだ。そして、製造業が高度成長を支えた。

 1970年代のオイルショックで日本の回復が早かったのは、製造業が省エネを進めて原油価格高騰に対応し、賃金を抑えることによってインフレの進行を回避したからだ。

製造業が衰退したワケ

 法人企業統計調査によって、製造業と非製造業の付加価値の推移を見ると、図1の通りになる。

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図1:1975年ごろまでは製造業と非製造業の付加価値に差が見られなかったが、1970年代後半以降は大きく差が開くようになっている
(出典:法人企業統計調査のデータより筆者作成)

 1960年度から1975年度の間に、製造業の付加価値は3.9兆円から32.6兆円となり、非製造業の付加価値は3.0兆円から45.1兆円となった。1975年ごろ、日本の最も重要な産業は製造業であった。日本のリーディングインダストリーであり、日本の屋台骨を支えていた。

 しかし、1970年代後半になると、製造業と非製造業の成長率に差が生じてくる。これは、中国工業化の影響による。

 製造業は1980年代に付加価値の伸びが停滞し、1990年代から2000年代の初めまでは、停滞どころか、減少する事態になった。さらに、2008年のリーマンショックによって、製造業の付加価値は大きく落ち込んだ。非製造業も、1990年代には停滞に陥ったが、2000年代以降は成長を続けた。

 1975年にはほぼ等しかった両者だが、2021年では製造業の付加価値が81.3兆円に対して、非製造業の付加価値が218.7兆円だ。つまり、非製造業が製造業の2.7倍になっている。

 さらに就業者数で見ると、1973年は製造業が1440万人なのに対して、卸売・小売業と飲食店の合計は1077万人だった。このころに比べれば、現在の製造業のウエイトは、大きく低下した。2021年における製造業の就業者数は1045万人であり、これは卸売・小売業の1069万人とほぼ同じだ。

 製造業と非製造業のウエイトが大きく変わった。いまや製造業は、日本のリーディングインダストリーとは言えない。

【次ページ】1975年から変わらない…経済政策は誰のためのものか

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次のページ以降では、産業別就業者数で見る産業構造の変化や、1975年から変わらない経済政策の危険性、経済の停滞を招いた「3つの真相」などについても解説します

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