- 2026/07/25 07:50 掲載
折りたたみスマホはAI端末の本命?サムスン新型とアップル参入で変わるスマホの常識(2/2)
アップル参入で始まるAI体験の囲い込み競争
折りたたみ市場を大きく変えるとみられているのが、米アップルの参入である。アップルは2026年7月23日時点で折りたたみiPhoneを正式発表していない。ただ、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどは、同社が2026年秋に最初の折りたたみ端末を投入するとの観測を伝えている。予想される価格は約2,500ドルで、安価な普及機ではなく、最上位のプレミアム端末になる可能性が高い。調査会社カウンターポイントリサーチは、世界の折りたたみスマートフォン出荷台数が2026年に前年比21%増えると予測する。特に成長が見込まれるのは、縦に折るフリップ型ではなく、横に開くブック型だという。アップルの参入は、既存メーカーの利用者を奪うだけでなく、これまで折りたたみ端末を様子見していた消費者を市場へ呼び込む可能性がある。
本当の競争は端末の薄さではなく、AIと個人データをどこまで結びつけられるかで決まる。サムスンはGalaxy AIに加え、グーグルのGeminiや各種アプリを横断する仕組みを強めている。一方、アップルはメール、写真、予定表、メッセージなど、利用者が日常的に使うサービスを自社の基本ソフト上で統合できる。利用者の文脈を理解する上では、大きな優位性だ。
ただし、アップルの参入はサムスンにとって必ずしも悪材料ではない。iPhone向けに折りたたみ画面へ対応するアプリが増えれば、開発者はAndroid版も最適化しやすくなる。これまで折りたたみ端末は、開いても通常のスマートフォン画面が引き伸ばされるだけのアプリが少なくなかった。アップルが市場へ入ることで、端末ではなくアプリ側の対応が一気に進む可能性。競争相手の参入が、市場全体を育てる構図である。
仕事道具として普及するために越える3つの壁
それでも、折りたたみ端末が仕事道具として一般化するには、3つの壁が残る。最大の壁は価格だ。サムスンの公式教育機関向け価格でも、Fold8は25万6,385円から、Fold8 Ultraは28万1,941円からとなる。一般向けには下取りや分割払いが用意されるものの、通常型の高性能スマートフォンとタブレットを別々に買えるほどの負担である。第2の壁は耐久性と修理費だ。折りたたみ端末には通常型にはないヒンジや柔軟なディスプレイがあり、落下や画面損傷への不安が残る。サムスンは水没、画面割れ、盗難などを対象にした「Galaxy Care」を最長2年間提供するが、保険への加入を前提に購入価格を考える必要がある。企業が従業員へ支給する場合も、本体価格だけでなく、故障時の交換時間や予備機の確保まで含めた総保有コストが問われる。
第3の壁は、折りたたむ必然性である。メールを読む、動画を見る、写真を撮るだけなら、通常型スマートフォンでも困らない。端末を開く手間に見合うほど作業時間が短縮されなければ、利用者はやがて開かなくなる。生成AIを載せただけでは不十分で、会議、営業、保守、店舗運営など、職種ごとに「この作業なら開いたほうが速い」という用途を作る必要がある。
折りたたみ端末がパソコンを完全に置き換える日は、まだ遠いだろう。ただ、移動中はスマートフォン、机では小型タブレット、半開きにすれば撮影端末というように、1台で役割を変えられる点は大きい。アップル参入後の勝者は、最も薄い端末を作ったメーカーではない。高価格を納得させるほど頻繁に「開く理由」を提供し、AIを日常の作業へ溶け込ませた企業になる。折りたたみスマートフォンの勝負は、形状競争から仕事体験の競争へ移ったのである。
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