- 2026/07/28 16:00 更新
韓国SKハイニクス決算、HBM爆売れで営業利益557%増、それでも消えない「3つの不安」(2/2)
株価反発でも消えない、AIメモリー相場の3つの死角
もっとも、現在の利益率がそのまま続くと考えるのは危険だ。第1の死角は、マイクロソフトやグーグル、アマゾンなど巨大IT企業によるAI設備投資の持続力である。データセンター建設にはGPUだけでなく、電力設備、通信機器、冷却設備、メモリーが必要になる。AIサービスから得られる収入が投資額に追い付かなければ、設備投資が減速し、HBMの発注にも時間差で影響が出る。第2が供給過剰だ。SKハイニクスはM15X工場の量産開始を前倒しし、2027年初めには竜仁半導体クラスター第1期のクリーンルームを開く方針だ。先端パッケージング施設「P&T7」やNAND生産拠点「M17」への投資も段階的に進める。一方、サムスン電子や米マイクロン・テクノロジーも増産を進めている。各社が現在の不足だけを見て能力を増やせば、完成時には需要を上回る可能性がある。半導体産業で繰り返されてきた景気循環だ。
そして第3が中国勢の追い上げである。特にCXMTは汎用DRAMを中心に存在感を高めている。中国勢がすぐ最先端HBMで追い付かなくても、汎用DRAMを低価格で供給すれば、SKハイニクスの一般向け製品の採算を圧迫しかねない。HBMで稼いだ利益が、別の製品分野の値下がりで削られる構図である。
株価が反発したのは、足元の供給不足が続くとの期待が強いためだ。ただ、設備投資の減速、競合の増産、中国勢の価格攻勢が重なれば、高収益は急速に崩れ得る。まさに三重の死角。
2027年の勝敗を分ける、SKハイニクスの防御力
SKハイニクスも、メモリー市況が反転するリスクを理解していないわけではない。対策の1つが長期契約である。同社は主要な戦略顧客を含む約10社と長期供給契約を結び、ほかの大手顧客とも協議を進めている。従来のメモリーは、需給に応じて価格が激しく変動する市況商品だった。複数年契約で数量や供給計画を固められれば、将来の売上高を読みやすくし、工場投資のリスクも抑えられる。米エヌビディアとの関係も重要だ。両社は2026年6月、次世代AIメモリーを共同開発する複数年の技術提携を発表した。エヌビディアのAIインフラ計画に合わせて製品を開発し、Vera Rubin向けスーパーコンピューターやAIパソコン、ロボットなどへ供給領域を広げるという。
この関係が強いのは、完成したメモリーを後から売り込むのではなく、顧客の製品ロードマップに開発段階から入り込める点だ。顧客に最適化したカスタムHBMが増えれば、競合製品への切り替えは難しくなる。価格だけで選ばれる市況商品から、共同設計型の基幹部品へ。事業モデルそのものの転換である。
それでも、長期契約が需要減少を完全に防ぐわけではない。今後はHBM4の出荷量、量産歩留まり、設備投資額、顧客在庫、DRAM価格を併せて見る必要がある。営業利益率76%は、同社の強さを示す数字である一方、競合を増産へ駆り立てる数字でもある。株価の急反発が本物かどうかを決めるのは、今回の最高益ではない。巨額投資が立ち上がる2027年以降も、供給より需要が多い状態を維持できるかどうかである。
半導体のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR