- 2026/10/15 06:50 掲載
「完成車メーカーの要求通り」もう限界…創業103年ミクニが挑む「製造大変革」の中身
連載:桃田健史のSDVトレンド最前線
桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。
これは興味深い…「熱マネ」はただの新事業じゃない
これは、興味深い……。ジャパンモビリティショー2025で、ミクニのブースで展示していたMsMV(Mikuni Smart Multi Valve)が気になった(冒頭の写真)。水冷コンデンサ、電動ウォータポンプ、冷却水循環装置を組み合わせたユニットだ。右隣に置かれた展示説明では、BEVのバッテリーを適温に保つために、熱エネルギーを自在にコントロールする「新サーマルマネジメントモジュール」とある。
また、ミクニの要素技術を生かした、MBSE(Model-Based Systems Engineering)を取り入れ、新たな成長領域を切り拓くと記されている。
近年発表されている新型BEVでは、バッテリーに関する「熱マネ(サーマルマネジメント:バッテリーやモーターなどを適切な温度に保つ技術・システム)」に関する新技術が搭載されている。多くの場合、自動車メーカー各社が電費などについて先代モデル比などでデータを示すものの、熱マネのシステムについて深堀りして説明する機会はほとんどない。
BEVの本格普及期に向けて、バッテリーの熱マネ関連事業の市場動向を知りたいという思いがあり、筆者はジャパンモビリティショー2025のミクニブースで説明員と意見交換した。
その際、ミクニはいま、熱マネを単なる新規事業として捉えているのではなく、話はもっと根深いという印象を持った。今回、改めてミクニを取材すると、そこには単なるSDVという表現を超える、実にミクニらしい次世代のモノづくりが見えてきた。
「すり合わせだけ」からの脱却、ミクニが挑む大転換とは
ミクニは2026年4月から「総合商品計画」を実行している。長期ビジョン「VISION 2033」に基づき、中期経営計画と直接リンクするものだ。年間売上1,000億円超の中堅部品メーカーが、こうした大胆な商品計画を打ち出すことは珍しい。
見方を変えると、特定の4輪・2輪メーカーやメガサプライヤーの傘下ではないミクニのような独立系中堅部品メーカーとしては今、大きな変革が必然の時期だと言えるかもしれない。
総合商品計画の目的を「中長期視点で、先回りして提案できる部品サプライヤーへ」企業風土を変革することと定めた。これまでのように完成車メーカー(OEM)の要求通りの“すり合わせ”で対応していくだけでは、ミクニの事業規模が縮小し続けるという危機感がある。
だから、もっと先回りするというのだ。
これを実現するために、「技術戦略」「生産・調達戦略」「顧客基盤戦略」の3つを連動させ、創業から100年かけて培ってきた商品を強化・進化させるとした。 【次ページ】変革を支える独自技術「3つのM」
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