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  • 2023/02/01 掲載

大分 豊和銀行に聞く、地銀の人材育成・研修の効果を最大化させるコツ

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地銀の経営環境が厳しさを増す中、戦力強化のため「人材育成」がさらに重要になるだろう。地域に密着し、事業者を支援する「目利き力」を備えた金融人材が必要とされる中、具体的にどのようなことに取り組めばよいのだろうか。大分県の第二地方銀行 豊和銀行は、2021年度「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」で、金融機関の垣根を越えた研修をスタートさせ、成功を収めた。プロジェクトを主導した豊和銀行 ソリューション支援部部長 神野康弘氏に、プロジェクト開始のポイントや、成功の理由について聞いた。

豊和銀行 ソリューション支援部部長 神野 康弘

豊和銀行 ソリューション支援部部長 神野 康弘

photo
「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」
研修最終日の最終プレゼンテーションでの最優秀賞と優秀賞の表彰式
(後ほど詳しく解説します)

なぜ、遠く離れた山形の取り組みを大分へ導入したのか?

 2022年1月から本格的に始動した「おおいた産学金連携コーディネーター制度」は、産学金が連携して、地域の事業の支援・伴走を行える「目利き力」を備えた金融人材の養成を目的として立ち上げられたプロジェクトである。第1回目の「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」では、豊和銀行7名と大分県信用保証協会3名が「おおいた産学金連携コーディネーター」に認定された。

 この制度は2007年から山形大学が金融機関と合同で行っている「山形大学認定産学金連携コーディネーター研修制度」を大分県に移植したものだ。

 豊和銀行ソリューション支援部部長であり、「おおいた産学金連携コーディネーター研修実行委員会」事務局のメンバーでもある神野康弘氏は、「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」導入の経緯について次のように説明する。

画像
豊和銀行
ソリューション支援部部長
神野康弘氏
「豊和銀行の地域における役割として、地元の企業に寄り添うことが重要だと考えます。企業を支援するには、ファイナンスのみならず、事業に対する深い理解や『目利き力』が必要です。企業の経営者の考え方や企業の歴史を踏まえることも大切でしょう。その中で、人材の育成がポイントになると考え、金融機関の垣根を越えた『おおいた産学金連携コーディネーター』の取り組みをスタートしました」(神野氏)

 「おおいた産学金連携コーディネーター」は、山形県で2007年から行われている「山形大学認定産学金連携コーディネーター研修制度」を参考にしている。この制度は山形大学の小野浩幸教授が中心となって行ってきたもので、地域金融機関の横の連携によって新しいビジネスが生まれるなど、着実に成果を上げてきた。金融庁元長官も高く評価したという。

「山形を中心とした東北の地域活性化に資する人材の育成を目的とした『山形大学認定産学金連携コーディネーター研修制度』を知り、『大分でもこうした取り組みを行えないか』と検討を始めました。当行の頭取(権藤淳氏)と小野教授との出会いがあり、このシステムの大分への移植を決めました」(神野氏)

山形と大分の違い、別県のシステムを移植する際のポイント

 「山形大学認定産学金連携コーディネーター研修制度」を参考にして、大分で実施する際に考えなければならないのは、大分県と山形県の違いだろう。大分県の特徴について、神野氏は次のように語る。

「大分県は何か特定の産業に偏っていることはなく、どの産業も全国の平均的な指標に近い形で推移していて、日本全体の産業構造と近いです。日本製鉄を始め製造業が盛んで、工業生産量も高く、九州の中でも所得水準は低くはありません。別府湯布院などもあり、温泉県というネーミングのもと、観光業も盛んです」(神野氏)

 一方で、日本全体の産業構造と近いことは、国全体が抱えている現在の課題が大分の課題にも通じていることを意味している。

「コロナの影響で、近年はインバウンドのお客さまや団体のお客さまが減り、観光関連の産業が疲弊しています。製造業でも、コロナ禍や原材料の高騰、資材不足などの影響を受けていて、厳しい状況が続いています」(神野氏)

 つまり地域経済の活性化は、全国同様に大分県にとっても重要な課題である。山形県との違いについて、神野氏は次のように説明する。

「山形県は、モノ作りが盛んな県です。対して、大分は観光に関わる業種やサービス業の割合が高いと言えるでしょう。着実な成果を上げている山形県の取り組みを参考にしている段階ですが、ゆくゆくは、大分県の産業状況に即し独自性の高い研修とするのが理想です」(神野氏)

「おおいた産学金連携コーディネーター」のプロジェクトは、2019年秋から豊和銀行が主導する形でスタートした。2020年3月には、山形大学の小野教授を大分に招いて、勉強会を開催。その後、本研修の意見交換会、研修に参加する金融機関や支援機関を募り、最終的に豊和銀行から7名、大分県信用保証協会から3名が研修に参加することになった。そして、2022年1月に2021年度の「おおいた産学金連携コーディネーター養成実践研修」がスタートした。

「初回の参加は、豊和銀行と大分県信用保証協会の2つの組織でしたが、金融機関のみならず、地域の支援機関や商工団体など、幅広く参加できる仕組み作りを目指しています。山形県のプラットフォームは、金融機関が主体となっている点が特徴的ですが、大分県では金融機関だけでなく、さまざまな地域の支援機関が垣根を越えて、中小企業を支援する仕組みを構築できたらと考えています」(神野氏)

【次ページ】地域課題解決のプロ「おおいた産学金連携コーディネーター」の認定基準

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