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  • 2023/02/02 掲載

インフレ終焉は本当? かけ離れた統計と実態…今後広がる「貧富の差」がヤバすぎる

米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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日本の消費者物価指数(CPI)の伸びが2022年12月に前年同月比4.0%上昇し、41年ぶりの物価高に大きな話題を集めている。一方米国では、同時期のCPIの伸びが2022年6月につけたピークの9.1%から6カ月連続で鈍化した。統計上はインフレが峠を越したように見える。だが、多くの生活者が統計と実態が大きく乖離していると感じており、特に不安視されているのが賃金上昇率の動向と企業による大量解雇だ。これらが経済を低迷させ、ひいては富裕層と低所得層との間で経済的な大きな格差を生むと懸念されている。本稿では、2023年における「インフレ後」の米経済の行方を賃金動向から分析する。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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インフレは本当にピークアウトしたと言えるのか
(Photo/Getty Images)

「インフレ終焉」は本当なのか?

 物価上昇が続く日本では日本銀行による実質上の金利引き上げや、2023年4月の日銀新体制の発足と政策転換への期待などで、インフレが峠を越すかが注目されている。一方、米国ではすでにインフレがピークアウトしたとの見解が優勢だ。

 ノーベル経済学賞受賞者であるニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン教授は、「輸送費の高騰をもたらしたサプライチェーン問題を覚えているだろうか。それは、もう終わった」と指摘。たしかに供給網の問題は改善し、大混乱をもたらすはずだった2022年12月の鉄道労働者によるストも回避された。

 12月のガソリン価格は前月比で9.4%も下落したのをはじめ、中古車は2.5%低下、航空運賃も3.1%下落したことは大きな肯定材料である。だが同月の物価動向を詳しく分析すると、楽観できないことがわかる。

 まず、食品分野では肉類・卵・魚が鳥インフルエンザまん延の影響などで前月比1.0%増と7カ月ぶりの高い伸びを記録した。さらに自動車メンテナンス・修繕が前月比1.0%値上がりし、家賃および住宅は0.8%上昇、教育サービスが0.3%増、娯楽サービスが0.2%上昇、医療サービスも0.1%上昇など、依然として家計は圧迫され続けている。

差は“数倍”以上? かけ離れた物価の統計と実態

 ここで問題なのが、統計と生活実感の差が拡大していることだ。決済調査企業PYMNTSのアナリストであるカレン・ウェブスター氏は、「消費者は食品やガソリン、衣服、家庭必需品の価格が政府発表の2倍以上であると感じており、肉類や野菜にいたってはCPIの5倍の速さで値上がりしていると見ている」と述べた

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米消費者が感じている、統計とはかけ離れた物価の実態。どれほどの乖離が生じているのか
(Photo/Getty Images)

 筆者(米国在住)の肌感覚でも、「肉類・卵・魚は2022年12月に前年同月比7.6%上昇した」との統計は実態を反映していないと感じる。ざっくり見て卵は3倍以上、肉類も3倍に値上がりし、高止まりしていると思えるからだ。それでも食費を何とか抑制しているが、それは値段が1年前近くに戻る特価販売日を逃さずにやりくりしているからである。

 一方で、クルーグマン教授など多くのエコノミストたちはこの先さらに物価上昇率が鈍化すると見ている。物価全体の下落トレンドから見れば、突発的なイベントが起こらない限り、それはおそらく真実であろう。

 だが米経済にとっての落とし穴は、後ほど詳述するが賃金上昇率の動向と大解雇時代の到来である。それにより米国内総生産(GDP)の70%を占める消費が減速し、経済後退に至る恐れがあるのだ。そして、再び経済格差が拡大に向かうことも不安視されている。

【次ページ】25年間で最も厳しい「実質賃金」と、テック大手で始まった「大解雇」

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