• 会員限定
  • 2023/03/15 掲載

なぜ今さら? 米銀7行が「決済アプリ開発」を始めた理由、PayPalの牙城を崩せるか?

米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

記事をお気に入りリストに登録することができます。
フィンテックのイノベーションに出遅れたJPモルガンチェースやバンクオブアメリカなどの米銀行大手。ここにきて大手7行が、Apple PayやPayPalなどIT企業が提供するデジタルウォレットに対抗し、決済アプリの共同開発を急いでいる。2023年下半期をメドに、決済アプリを市場へ投入する予定だ。これにより、IT企業と銀行によるガチンコ競争が始まる。IT企業がひしめくデジタルウォレット分野で、出遅れ感のある「銀行連合」に勝機はあるのか。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

photo
銀行連合とIT企業がデジタルウォレットでガチンコ勝負
(Photo/Shutterstock.com)

「銀行連合」のデジタルウォレットって何?

 米ウォールストリート・ジャーナルの報じるところでは、JPモルガンチェース、ウェルズファーゴやバンクオブアメリカ、キャピタルワン、PNCファイナンシャルサービス、USバンク、トゥルーイストの大手7行が共同で、デジタルウォレット(名称未定)を2023年下半期にリリースする予定だ。

 開発主体は、キャピタルワンやPNCなど複数行が出資するEarly Warning Services(EWS)という会社だ。2017年に立ち上げられたEWSは、(全米1700の銀行や信用組合の口座を持つ)推定6110万人が利用する銀行系デジタル送金サービスのZelleを提供している。

 新たなデジタルウォレットはZelleとは別のアプリであり、Visa・Mastercardといったクレジットカードやデビットカードの所有者に提供される。ユーザーはデジタルウォレットを自分の決済カードに紐づけることで、加盟する小売業者などで簡単に決済できるようになるという。

 ウリは、Apple PayやPayPalと同じく「クレジットカードやデビットカードを持って外出する必要がなくなり、スマートフォンを持つのみでこと足りる」という点だ。実店舗での買い物の多くはいまだにクレジットカードやデビットカードで行われているが、決済カード情報をスマホに登録してしまえば、クレジットカードやデビットカードを持ち歩く必要性がなくなる。

実は米国人にデジタルウォレットは必要ない

 米調査企業モーニングコンサルトの調査によれば、2022年6月にデジタルウォレットを使う米成人の割合は60~65%であった。そのうち、毎日の生活で実際にデジタルウォレットを利用する人の割合は7%、週何回かが15%、週1回が14%、月1回が11%と、利用率は低い。中国で45%の人が毎日デジタルウォレットを利用することと比較すれば、米国の「後進性」は明らかだ。

 その理由として挙げられるのが、米国で銀行系が提供する個人小切手やクレジットカード、デビットカードなど、物理的な金融サービスが非常に高度に発達しており、一朝一夕にデジタルサービスに移行しにくいという事実だ。

 つまり、決済手段はすでに十分便利で選択肢も多いので、わざわざデジタルウォレットに乗り換える必要がない。そのため、小売など業者側のデジタルウォレットへの対応も遅れている。

 普及のペースが遅い米デジタルウォレット市場だが、銀行が進出する先には強力なIT系の競合がひしめいている。米アクセンチュアが13カ国の1万6000人の消費者を対象に行った調査によれば、米国の消費者の46%が少なくとも1つのデジタルウォレットを利用している。

画像
断トツシェアのPayPalなど、IT系デジタルウォレットの牙城を銀行連合は崩せるか
(Photo:Tada Images/Shutterstock.com)

 そのうち、PayPalが35%のシェアと断トツで、それをApple Payの12%、PayPal系のVenmoの11%が追う。つまり、PayPalはVenmoを合わせれば46%と、デジタルウォレットを利用する米消費者の半分をコントロールしていることになる。

 言うまでもなく、先行するPayPal、Venmo、Apple Payなどは大きなブランド力を持っており、すでに市場でひしめき合っている状態だ。またアップルが提供するiPhoneユーザーは裕福な層が多いため、Apple Payはまだ市場シェアが小さいものの、利用額の大きさで潜在的な可能性を持つ。銀行系ウォレットがこの牙城を切り崩せるかが注目だ。 【次ページ】PayPalの牙城を崩せるか? 銀行系が打破すべき「不利な条件」

関連タグ

あなたの投稿

関連コンテンツ

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます