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  • 2023/03/15 掲載

金利上昇は関係ない? 経営破綻を招いた「シリコンバレー銀行」の特殊なビジネスモデル

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米国カリフォルニア州に拠点を置くシリコンバレー銀行が経営破綻した。直接的な原因が金利上昇による損失拡大だったことから、急ピッチな利上げの弊害を指摘する声も上がっている。日本も今後、金利上昇が確実視されているが、今回の破綻劇について、どう理解すれば良いのだろうか。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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シリコンバレー銀行が経営破綻をした。直接的な原因は金利上昇による損失拡大だったといわれている。今後、日本の金利上昇も確実視されているが、今回の破綻劇から得られる教訓とは?
(写真:ロイター/アフロ)

金利上昇がもたらした危機なのか?

 米国の金融当局は2023年3月10日、米シリコンバレー銀行が経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の傘下に入ったと発表した。同行は総資産約28兆円、全米16位の規模を持つ銀行で、リーマンショック以後としては最大規模の破綻である。

 破綻の直接的な原因は保有していた債券の価格が金利上昇によって下落し、損失が膨らんだことである。金利が上がったのはFRB(連邦準備制度理事会)による利上げが原因であり、一部からはFRBの急速な引き締めが金融危機を誘発していると指摘する声が上がった。

 日本でも似たような声が聞こえてくる。

 米国と比較すれば日本の金利はまだ低い状態だが、日銀の新体制が4月からスタートすることもあって、市場は金利上昇を見込んでいる。日本経済は低金利にどっぷり浸かった状況であり、金利が急騰した場合、国内でも同じようなケースが発生するとの懸念である。

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FRBの金融引き締めがキッカケにはなっているが……シリコンバレー銀行の破綻劇は同行の特赦なビジネスモデルが原因にある?
(Photo/Shutterstock.com)

 結論から言うと、今回の破綻劇は同行の特殊なビジネスモデルが原因であり、FRBの利上げが行き過ぎということではない。日本では同行に近いビジネスモデルを持つ銀行が存在していないため、同じような事例が発生する可能性は低いと考えられる。

 だが、経済・金融の一般論として、金利が上昇すると債券価格が下がり、債券の保有者に損失が発生するのは事実である。米国の金利が上昇し、米国債の価格が下落したことで、国内地銀の一部ではかなりの損失が発生しているとも言われる。

 日銀も大量の日本国債を保有しており、金利が上昇した場合、日銀も含み損を抱える。日銀の場合、国債の売却を強いられる要因はなく、時価評価も行わないので、直接、損失を計上する必要はない。だが、含み損が発生すれば、対外的な信用は下がり、円安を誘発するリスクがある。今回の一件は日本においても参考にすべき事例と言って良いだろう。 【次ページ】破綻したシリコンバレー銀行の特殊なビジネスモデルとは?

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