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近年、国内企業のDX推進の動きが顕著になっている一方で、一般企業と比較すると、地銀のDXはあまり進んでいない状況があった。しかし、ここ1~2年、積極的にDXに取り組んでいる地銀も目立っている。こうした中、金融機関のDX動向を調査するメンバーズルーツカンパニー社が「第一地銀・メガバンクDX推進状況レポート」(2022年7月)を発表した。今回は同社の実施した調査結果を踏まえ、地銀のDXの現状と、地銀ごとの差が生じる要因について、メンバーズルーツカンパニーの三角恭平氏に解説してもらった。
銀行DXの姿勢、「Webサイトの品質」から読み取れるワケ
メンバーズルーツカンパニーは、「“MEMBERSHIP”で地方・中堅企業のマーケティングを変え、心豊かな社会を創る」というミッションを掲げ、地方の中堅企業向けにデジタルクリエーター提供事業を展開している企業である。地方銀行のDXやデジタルマーケティングのサポートも行っている。2020年12月には、「第一地銀64行+メガバンク3行のWebサイト・非対面接客のDX推進レポート」を作成して、地銀の抱える課題を浮き彫りにした。
その結果を踏まえて、2022年7月にも地方銀行62行とメガバンク3行を対象に調査を実施し、「第一地銀・メガバンクDX推進状況レポート」を発表している。地方銀行62行とメガバンク3行とを並べた狙いについて、メンバーズルーツカンパニーの三角恭平氏がこう説明している。
「メガバンクと地銀のDX推進の状況を比較することによって、『地銀がDXに取り組める余地がどれくらいあるのか』ということが見えてきます。また、地銀同士の比較で見ても、先進的な取り組みをしている地銀もあるため、『先進的な地銀から、ほかの地銀が取り入れられる取り組みがあるかどうか』も分かります」(三角氏)
前回の「第一地銀64行+メガバンク3行のWebサイト・非対面接客のDX推進レポート」では、地銀よりもメガバンク3行のDXが進んでいる傾向が見えてきた。しかし、地銀の中でもかなり差が出ており、メガバンクを上回る評価を獲得している地銀もいくつかあった。
この結果を受け、各金融機関の「どのような点に強み・弱みがあるのか」をさらに深堀りすべく、今回の「第一地銀・メガバンクDX推進状況レポート」では、前回調査と同様にWebサイトの使いやすさを調査するとともに、専用アプリの使いやすさも調査項目に加えている。詳しい調査項目は下記のとおり。大きく分けて「Webサイト体験」と「顧客接点のデジタル化」という2つの観点に分けられる。
(1): | Webサイト(PC/SP)体験(Webサイト上の顧客体験) |
| - Webサイト全体が使いやすい設計になっているか
- 金融商品が検索しやすい設計になっているか
- Webサイトの安全性
- Webサイトのページスピード
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(2): | 顧客接点のデジタル化(ATM、店頭窓口など、「リアル店舗で提供される機能」をオンライン上でどれだけ補完できているか) |
| - 商品ページのSEO対策
- ライフプラン、ローン、資産運用のシミュレーション機能
- オンライン相談の充実度
- 専用アプリの機能の充実度
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ここからは、金融機関のDXの取り組みの中でも、同社の実施した調査の対象となっている「Webサイト体験」と「顧客接点のデジタル化」を取り上げ、金融機関の取り組み状況を見ていきたい。
Webサイト改善が進む銀行と遅れている銀行の差
はじめに、Webサイト上で優れた顧客体験を提供できているかという観点から調査をした「Webサイト体験」の項目の結果から見ていきたい。
Webサイトの使いやすさ(PC、SP)の調査するにあたり、まず最初の調査項目として「パソコンでWebサイトを訪問した顧客が、目的のページに遷移しやすいメニュー設計になっているか」という観点から、対象となる金融機関のページ設計を調査した。複数階層のメニュー表示が可能な地銀は62行中46行で約74%、固定タイプのヘッダーでサイドにメニューを表示するタイプが62行中7行で約11%、固定タイプのヘッダーが62行中9行で約15%だ。
2020年12月の調査では、利用者にとって利便性の高いメガドロップダウンメニューを採用している銀行は64行中38行であり、そこから増加していることが分かる。前回と今回の結果と比較して、三角氏はこう分析している。
「各銀行がかなり速いスピードでDXに取り組んでいる結果が、この数字に表れていると考えています。銀行のWebサイトは、ほかの業界のWebサイトと比較すると複雑になりがちです。金利の更新が滞ってしまうと業務改善命令を受けてしまうなど、リスクの高い情報を扱っているためチェック項目も多くなります。目に見えない裏側の部分でも、DXに取り組まないとメニューの改善はできません」(三角氏)
メガドロップダウンメニューの使用率が約74%という数字は、銀行が前向きにDXに取り組んでいる成果の表れであると、三角氏は分析している。その一方で、固定タイプのヘッダーを使用している銀行が約15%ある。この差について、三角氏はこう指摘する。
「DXを推進しながらも、実店舗の充実に力を入れている地銀もあります。割ける人員が限られている地銀が多いため、Webサイトにまで手がまわらないことも考えられます」(三角氏)
つまり地域柄によって地銀の収益構造が異なるため、Webサイトの充実度に差が出てくるケースもあるのだ。銀行ごとに経営戦略も異なるため、すべての地銀が必ずしも高いレベルでWebサイトの改善を進めなければいけないわけではないと、三角氏は語る。
【次ページ】Webサイトの「利便性・ページ速度」、地銀よりメガバンクが劣る理由
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