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  • 2023/03/29 掲載

島根銀行がいち早く「勘定系クラウド化」に踏み込めた理由、APIを軸にDXを推進

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島根銀行は1月30日、勘定系システムのクラウド移行に向けた計画を公表しました。SBI地方創生バンキングシステムが提供する地銀向けシステムを利用し、2025年度中の運用開始を目標に掲げています。メインフレームのクラウド化という難問に、取り組みだした島根銀行の「自信」は一体どこから来るのか──SBIホールディングスとの資本業務提携を機に取り組んだオープンAPI実装と、その過程で実現した一部基盤のクラウド化に焦点を当てながら考えてみます。

執筆:金融ジャーナリスト 川辺 和将

執筆:金融ジャーナリスト 川辺 和将

元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

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勘定系クラウド化を打ち出した島根銀行、“自信”の源泉はAPI分野での経験蓄積?
(Photo/Shutterstock.com)

勘定系システムの「クラウド化」を実現するには?

 島根銀行は、SBI地方創生バンキングシステムが提供する地銀向けシステムを利用することで2025年度中の運用開始を目指しています。「勘定系システムのクラウド移行」を発表するまでにどのような経緯があったのでしょうか。

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勘定系システムなどがクラウド化される
(出典:島根銀行 報道発表

 現在、既存規格の制約を脱し、機動的なサービス展開を推し進める上で、銀行業務のコア部分を司る勘定系システムのクラウド移行は重要な選択肢となっています。ただ、旧来のメインフレームを外部サービスと連携させるハードルは高く、クラウド化に向けた動きは地銀の中でまだまだ限定的です。

 なぜ、総資産規模が他行に比べ決して大きいとは言えない島根銀行が、比較的早い段階でクラウド化に向けたスタートを切ることができたのか。その理由について業界内からは「島根銀行が単独で利用していた勘定系システムだから、共同利用行に比べて迅速にスタートを切れた」(ベンダー幹部)という声も聞かれます。

 地銀では、NTTデータやIBM、日立、ビプロジーなどSIerが勘定系システムを複数の地銀に提供しその運用を含めて担うことが多いのですが、島根銀行では、自社で勘定系システムを運用していたのです。

 たしかにそれも一因でしょう。が、経緯を振り返ると、オープンAPI分野での実績の積み重ねがクラウド移行の決断につながったという、別の側面も見えてきそうです。

転機となった資本業務提携

 2017年の銀行法改正でオープンAPIの実装が努力義務化された当初、島根銀行は有効な具体策を持ち合わせていませんでした。島根銀行次世代勘定系システム開発室の小川 隆浩室長は「勘定系システムと接続する仕掛けを作り上げるうえでの技術的な、そしてコスト上の問題があり、先送りになっていた」と振り返ります。

 勘定系システムを複数の銀行間で共同利用している場合には、システム改修の費用を他行と分担するという手を取ることができます。しかし先にも触れたとおり島根銀行はメインフレームを単独で運用しているため、法改正という号砲と同時スタートを切ることは困難でした。

 転機の1つになったのは、2019年9月のSBIホールディングスとの資本業務提携です。「(SBI側が有する)テクノロジーなどの活用を通じた当行の顧客利便性の拡充及び営業コストの最適化」(当時のニュースリリース)が打ち出され、島根銀行はDXへと急速に舵を切ることになります。

 オープンAPIの実装に向けてまず問題となるのは、勘定系システムを中心とした旧来のメインフレームとの接続方法です。勘定系システム自体を時代に合わせて改修するのも手ですが、「(一般論として)かつてレガシーの立ち上げに携わった人材の高齢化、退職により、メインフレームの仕組みを理解しているスタッフが銀行内に限られている」(別のベンダー幹部)ことは、多くの金融機関にとって共通の悩みといえるでしょう。

 島根銀行は、勘定系システムにはほとんど手を加えることなく、メインフレームと外部システムを連携するAPIを開発する道筋を探りました。SBI側からの紹介を受け、APIの自動生成が売りのイスラエル発ベンダー、オープンレガシージャパンの協力の下、同年12月、簡易的なシステムで計画の実現性を検証する概念実証(PoC)に挑戦します。

 基本的動作に問題がないことは、検証を開始したその日のうちに確認されました。本格的な計画作りに着手し、「既存メインフレームのベンダーも含めて話し合い、1週間も経たないうちに新たな仕組みの基本骨格ができ上がった」(小川氏)といいます。

 その時の「基本骨格」をベースにして実際に構築された体系の概略図は以下のとおりです。

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メインフレームと外部サービスをつなぐ基盤はクラウド上に置かれている
(出典:オープンレガシー )

 ここで島根銀行は、勘定系などのデータセンターと外部アプリなどを結ぶAPIゲートウェイ基盤を、AWS(アマゾン提供のクラウド基盤)上に置く決断をしました。小川氏はその狙いについて「将来的に勘定系システムが変化すれば、接続の形態も変わる。そのため、変化しやすい仕組み、動きやすい仕組みをと考えた」と説明します。

【次ページ】問われる「意識改革」

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