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  • 2023/08/08 掲載

ふるさと納税で「地域間格差」拡大、総務省「5割ルール」へどう対応する?

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良くも悪しくも話題に事欠かないふるさと納税であるが、本年10月より総務省による適正化策が発効することとなった。筆者らが所属する地域公共政策チームでは、複数の自治体のふるさと納税の適正化支援を実施しており、筆者(大野、坂田)はいずれも総務省の「地方公共団体経営・財務アドバイザー」を拝命してもいる。本稿では自治体の現場での支援活動から得られた問題意識を念頭に、今後のふるさと納税を巡る規制や費用支出のあるべき姿を提言することとしたい。

執筆:NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂 、坂田知子

執筆:NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂 、坂田知子

NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット地域公共政策チーム ユニット長、パートナー 大野博堂(おおのはくどう) 地域公共政策チーム シニアマネージャー 坂田知子(さかだともこ)

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ふるさと納税の最適化で期待される業務の域内対応とは?
(Photo/Shutterstock.com)

9月までに総務省の新たなルールに向けた対応が必要

 ふるさと納税について、さまざまな事務コストが自治体の手元に残る寄附金を圧縮している。

 そもそも、総務省の規制により返礼品の割合は寄附額の3割までとされてきた。自治体では、これにポータルサイトの利用にかかる手数料、寄付者対応等の中間管理業務にかかる外部委託会社への委託料、さらには返礼品の送料が加算され、結果的に、自治体の中には4~6割近くの資金が費用として計上されている例も多い。

 そこで総務省は「寄附額に占める経費の割合を5割以内に収めること」を新たに自治体に要請し、急遽本年10月からの施行を決定するに至った。さらに、この「経費」にはいわゆる「募集外・募集内」といった事業者都合の計上区分の設定は認められず、一律「経費」として算定されることにもなった。そのため、本年9月までに各自治体はこうした経費圧縮策の早急な対処が求められることになったわけだ。

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ふるさと納税の受入額及び受入件数の推移(全国計)
(出典:総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施))

10月時点では「返礼品価格を上げて対応」せざるを得ない

 経費率5割を突破している自治体については、9月までに目先の方針を確定する必要に迫られている。この2か月で業務委託内容を精査し、内製に切り替えたり、中間管理委託業務事業者と経費率引き下げ交渉を実施するには時間的猶予がないのが実態だ。

 そこでまずは総務省ルールに従うことを優先し、10月の新ルール発効時には返礼品の価格引き上げで対応せざるを得ないものと思料する。そのうえで、経費率削減に向けた対策を順次施していくことが現実解となろう。

北海道や九州の自治体は「過重負担」、送料の地域間格差

 ところで、この5割ルールを厳格に運用すると、結果的に地域間格差を生みだしてしまうことが懸念される。

 地域によって返礼品の送料負担が異なり、とりわけ需要の高い都市部への送料は北海道や九州など、都市部との距離が遠くなる地域ほど負担が増大することが考慮されていないためだ。

 経費率5割の中に組み込まれている送料について、この一律の基準はあまりにも歪である。地方の自治体ほど負荷が伴うことを勘案し、本来は経費率5割に含まれる経費対象から送料は除いたうえで自治体間の公平を期すべきだ。

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ふるさと納税の受入額及び受入件数(都道府県別)
(出典:総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施))

「個別の送料が管理されていない」実態を改善する必要性

 なお、自治体によっては、いわゆる「送料の一括計上」「送料の平均額での算定」という形で中間管理委託業務事業者任せで送料が設定・請求されている場合がある。

 東京に住むAさんへの送料も隣町に住むBさんへの送料も、管理上は「同額」としてみなし計上せざるを得ない。その上で、想定送料を上回った額は自治体に後ほど請求することで清算される例もある。

 つまり、自治体によっては個々の返礼品毎に個別の送料を管理することが出来ていない可能性があり、経費率5割を下回るうえでは精査と管理の徹底が欠かせない。

返礼品の調達価格を単価契約で設定、調達価格を可視化

 返礼品の調達を自ら実施していない自治体では、返礼品提供事業者との間で単価契約を締結していない。こうした自治体は中間管理委託業務事業者に返礼品の調達行為を委ねており、自治体自身は個々の返礼品がいったいいくらで実際に調達されているかを把握することが困難となっている。

 1万円の寄附金に対し、事業者は「一律3割」として3000円を自治体に請求しているが、実際は寄附金のちょうど3割に調達価格が設定されているとは限らない。

 同じ1万円の寄附であっても、返礼品毎に調達価格は異なる。つまり、端数が生じて3105円となっていたり、低廉な価格で2800円などで調達されていたとしても、自治体ではこうした請求行為の中身を検証することが難しいのが実態だ。

 自治体には業務改善に向け、返礼品提供事業者との連携強化が欠かせない。そこで、調達行為自体は中間管理委託事業者に委ねたとしても、あらかじめ個々の返礼品毎に提供事業者と自治体が協議のうえ単価契約を締結し、その条件での調達を事業者に委託する、といった形での改善が必要であることは言うまでもない。 【次ページ】「5割ルール」遵守へ、自治体がコストを削減するには?

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