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  • 2024/02/21 掲載

第一生命HD「ベネフィット・ワン買収」の意味は? 「保険サービス業へ進化」のワケ

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第一生命ホールディングスは2023年12月に官公庁や企業の福利厚生業務を担う「ベネフィット・ワン」へTOB(株式公開買付)を発表、2024年2月8日にはベネフィット・ワンの経営陣から賛同を表明される結果に落ち着いた。保険会社による非保険領域の取り組み強化は日本生命による2023年11月のニチイホールディングスの買収が記憶に新しいが、今回の第一生命ホールディングスの動きをどう見るべきなのか? 矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 山口 泰裕氏が解説する。

執筆:矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 山口泰裕

執筆:矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 山口泰裕

2015年に矢野経済研究所に入社後、主に生命保険領域のInsurTechやCVCを含めたスタートアップの動向に加えて、ブロックチェーンや量子コンピュータなどの先端技術に関する市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、事業強化に向けた支援や新商品開発支援、新規事業支援などのコンサルティング業務も手がけている。

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第一生命HD「ベネフィット・ワン買収」は何を意味するか?
(写真:アフロ)

保険料「6割減」の補填を目指すTOB

 2024年2月8日にベネフィット・ワンの取締役会が第一生命ホールディングスによるTOB(株式公開買付)に賛同を表明した。今回、TOBの手法を中心に多くのメディアを賑(にぎわ)している。筆者はこの買収効果として大きく2点あるとみる。1つは「保険サービス業」に向けたエコシステムの構築、もう1つは営業強化である。

 保険サービス業に向けたエコシステムの構築については、第一生命ホールディングスの次期中期経営計画との絡みがあるため次項に譲るとして、後者の営業職員チャネルの強化について触れておきたい。

 第一生命ホールディングスの主軸である第一生命の足元の数値について、同社は、契約件数やチャネル別での契約件数などを公表していないため、2017年度から直近2022年度の個人保険における新契約年換算保険料の推移をみたい。新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない、2017~2020年度だけをみても、年換算保険料は下がり続けている。

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個人保険における新契約年換算保険料の推移
(出典:第一生命のIR資料より矢野経済研究所作成)

 直近においては、2023年3月期の決算資料の中で、第一生命の生涯設計デザイナーチャネル(=営業職員チャネル)における新契約販売は苦戦と言及しているように、年換算保険料は462億円と、2017年度の1,112億円と比較すると4割程度まで低下している。

 こうした低下の状況は第一生命に限ったことではなく、日本生命とニチイホールディングスの記事でも言及したように、日本生命を含め生命保険会社各社ともに同じような状況下にある。現況を鑑みた結果、第一生命では従来の保険業だけでの新契約の反転攻勢を狙うことは難しいとして、第一生命ホールディングスとしてベネフィット・ワンを組み込むことで新たな顧客創出に向けた営業力強化を見込む。

第一生命ホールディングスの「保険サービス業」に向けた戦略

 営業職員チャネルの強化以上に注目すべきなのが「保険サービス業」に向けたエコシステムの構築である。

 第一生命ホールディングスは2024年3月期第2四半期決算・経営説明会において、次期中期経営計画の方向性を示したが、この中で国内事業戦略については、グループ全体として「保険業から保険サービス業への進化」「デジタルを活用した新規エコシステムの構築」「非保険領域における事業スケールの獲得」を挙げている。

 こうしたキーワードから察するに、デジタルをベースとしたプラットフォームを構築したうえで、同グループが展開する(1)国内保険(2)海外保険、(3)資産運用、(4)ヘルスケアサービス(=健康増進アプリ・健康第一などインシュアテック<InsurTech>事業をさす)などをモジュールと位置付けていく考えといえるだろう。

 そして、今後、上記4つのモジュールにとどまらず、特に非保険領域において(3)や(4)とともに、新たにモジュールを打ち立てながら事業スケールをめざす方向性を示している。

 今回のベネフィット・ワンの買収について、筆者はプラットフォーム自体の強化と併せて、新たなモジュールの構築やモジュール間の連携などに向けた動きを加速させるものと考えており、次項で具体的に言及したい。

 なお、具体的なプラットフォームについて、2023年12月7日に第一生命ホールディングスが発表した「株式会社ベネフィット・ワン株式(証券コード:2412)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」において、その姿を示している。

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「4つの体験価値」は中計でも示されている
(出典:第一生命HD中期経営計画Re-connect 2023)

 2030年にグローバルトップティアの保険グループになるために保険業から保険サービス業へ進化し、「保障」「資産形成・承継」「健康・医療」「つながり・絆」の4つの体験価値をシームレスに提供する、Well-beingサービスを提供する社会インフラ・総合プラットフォームを軸とした経済圏の構築を目指すとしている。

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非保険領域の強化が「保険サービス業」の進化を担う理由とは
【次ページ】「保険サービス業への進化」とは何を指すのか?

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