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  • 2024/03/20 掲載

日銀のマイナス金利解除で何が変わる?「デフレ脱却宣言=生活良くなる」ではない理由

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日銀がいよいよ金融正常化に乗り出した。このタイミングで決断ができなければ、正常化に向けて舵を切ること自体が不可能だった可能性もあり、その意味では今回の決定はまさに紙一重だったと言っても良い。
執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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日銀の「マイナス金利」の解除により、私たちの生活はどう変わるのか?
(写真:ロイター/アフロ)

日銀がなかなか決断できなかった理由

 日銀は2024年3月18日と19日に開催した金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を決定した。日銀は以前から早期の金融正常化実施を強く望んでおり、今回のタイミングでのマイナス金利の解除は既定路線に見える。だが現実はそう簡単ではなく、いくつかのラッキーな偶然が重なり、何とか解除にこぎつけられたというのが現実だ。

 10年以上にわたる大規模緩和策の弊害で、日銀当座預金には600兆円もの預金が積み上がっている。これまで当座預金はほとんど眠ったままであり何も動いていなかったものの、GDP(国内総生産)の規模が550兆円しかない日本にとって、日常的な決済に使われるマネーに加え、その金額をはるかに上回る余剰マネーが存在することは、制御できないインフレの時限爆弾を抱えているようなものだ。

 日銀としては一刻も早く正常化に舵を切り、相対的な余剰マネーを減らしていく必要があった。だが大規模緩和策という麻薬にどっぶりと浸かってしまった日本経済にとって、容易な決断ではない。

 20年以上にわたる低金利政策によって、日本の産業界は金利がゼロであることに完璧に慣れ切ってしまった。本来、企業が事業を行うためには、一定の金利を支払って資金を調達する必要があるが、金利が存在しないことが常態化してしまうと、企業の経営は確実に劣化していく。今の日本はまさにそのような状況であり、ごくわずかでも金利が上がっただけでその負担に耐えられず、経営を持続できなくなる、いわゆるゾンビ企業が無数に存在している状況だ。

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20年以上も続いた低金利政策に慣れ切ってしまった企業・個人は多く、マイナス金利解除後の影響は大きいかもしれない
(Photo/Getty Images)

 個人の経済活動も同じである。

 大規模緩和策による余剰マネーは多くが不動産に集中しており、それは個人の住宅ローンにも及んでいる。日本の場合、米国とは異なり、借金が返せなくなっても家を銀行に売れば終わりという仕組みにはなっておらず、銀行は消費者が完済するまで容赦なく返済を迫る。

 大規模緩和策の影響で住宅価格はここ十年上がりっぱなしであり、その分、多くの国民が背伸びをして(より金利を安く設定できる)変動金利で住宅ローンを組んできた。変動金利の場合、金利が上昇すると支払額もその分だけ増えていくので、金利の引き上げは住宅ローン破綻者の増加を意味する。

 日銀としては、金利を引き上げた場合、企業倒産や住宅ローン破綻が増え社会問題になる可能性について考慮せざるを得ず、これが決断を遅らせる要因の1つとなっていた。 【次ページ】なんとか「マイナス金利解除」に踏み切れた理由(1)

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