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- 2024/03/26 掲載
GDPは日本並み? でもシリコンバレーなどから「脱出」相次ぐカリフォルニアのヤバい影
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
・1人当たりGDPは「韓国」にも抜かれる?壊滅近づく「日本経済」復活のカギは教育・育成(https://www.sbbit.jp/article/fj/129707)
すでに英国を上回っている「カリフォルニア州のGDP」
まず前提として、米ドルで計測される名目GDPは、ドル換算レートの影響で真の経済力が見えにくくなる可能性が指摘される。そのため、「GDPは購買力平価で考えるべき」とする意見や、「順位で一喜一憂する必要はない」「もう規模や成長率のみを気にする『GDPレース』は忘れるべきだ」とする脱競争論まで、さまざまな批判がある。しかし、現実に存在する国際競争などにおいて、経済規模や成長率という「国力」が政治力や影響力を決定付ける重要なものであることは当然のことである。まずは名目GDPの欠点にはあえて目をつむり、国際通貨基金(IMF)が2月に集計したGDP世界トップ10の国々の経済規模を比較してみよう。それが冒頭の図1である。
世界GDPランキングのダントツの1位は米国で、名目GDP、1人当たりのGDPともに群を抜いている。いかに米国経済のパワーが「バカでかい」のかが、2位以下との比較で明らかである。
続く2位の中国は規模こそ大きいが米国に及ばず、1人当たりのGDPは米国の16%にも満たない。日本を抜いた3位のドイツは規模こそ米国や中国に劣るものの、1人当たりのGDPは米国の67%と、健闘している。
4位の日本は1人当たりのGDPが米国の41%。そのすぐ後に迫るインドは米国のわずか3%に過ぎないことは留意しておく必要がある。そして英国は1人当たりのGDPが米国の63%だ。
その英国の名目GDPを上回るのが、米西海岸にあるテクノロジーの都、カリフォルニア州だ。2023年の州内総生産で3兆8,900億ドル(約583兆5,000億円)をたたき出した。日本の4兆2,910億ドル(約643兆6,500億円)と比較しても、遜色がない。
州知事も「ドイツを抜く」宣言
今から2年前の2022年、世界のGDPランキングで日本が3位、ドイツは4位であったが、コロナ禍のドイツ経済の落ち込みが急激で、4兆ドル未満にまで下がったことがあった。パンデミック中でもカリフォルニア州の経済は全米で最も成長し、ドイツを抜く勢いであった(図2)。同州のギャビン・ニューサム知事は2020年10月に声明を発表し、「(米国の繁栄の中心がテキサス州やフロリダ州など規模の大きな南部共和党州に移りつつあると論じる)アンチたちは『カリフォルニアの最盛期が終わった』との言説を流布しているが、現実には我が州の経済成長や雇用増加こそが全米の経済を元気付けている」と述べ、同州の国内における優位は揺らがないと示唆した。
続いてニューサム知事は、「カリフォルニアの価値観や起業家精神が今や、世界経済ランキングの4位にまで押し上げようとしている。我々は、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーなど未来の産業に倍賭けの強化を行うことで、世界GDP4位の地位への上昇を続ける」と語った。
実際にはこの後、ドイツ経済が勢いを取り戻して名目GDPで日本を抜くこととなる。カリフォルニア州がドイツの名目GDPに迫るのは当分先のことになりそうだ。だが、同州が日本を抜いて4位に浮上する可能性は大いにある。ただカリフォルニア州の強さを詳しく分析すると、経済の光と影が垣間見えてくる。
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