- 2024/04/16 掲載
[確認用] 「Web3×メタバース× IOWN」で何が変わる? ドコモらが大胆予測(2/2)
IOWNのロードマップ
林氏は、「IOWNというとネットワーク技術をイメージするかもしれないが、実はポイントは光電融合デバイスに代表されるデバイスの進化にある」と述べる。光電融合デバイスのロードマップによると、2032年以降にチップ内の光化が実現目標として示されている。
林氏は「チップ内の光化が実現すればたとえば、VRデバイスが小型化し電力効率も大幅に向上し、1日装着しても大丈夫な世界が実現するかもしれない」とした。
チップ内の光化は、コンピューティングアーキテクチャーをも変革させるという。CPUやメモリ同士を光で直結し動的に組み合わせた、超低消費電力・超高速のコンピューティング基盤「ディスアグリゲーテッドコンピューティング」の実現で、これにより、膨大な電力を消費するブロックチェーン基盤を効率的に運用できるようになる可能性を示した。
「次世代ライブ」では高性能な通信インフラが重要に
続く話題は、IOWNをはじめとする光技術の進展により、Web3やメタバースにはどんな影響があるかについてだ。小田倉氏は「MetaMeではデジタルツインコンピューティングの技術群を試験実装している」とした上で、「これがメタバースにおける関係人口拡大にどんな貢献ができるか」について話した。たとえば、地域やコミュニティーに関わるすべての人が、最初からオンラインコミュニケーションに前向きとは限らない。この壁を越えられないと、「次第にコミュニティーの中心は、熱量が高い限定的なユーザーとなってしまう」と小田倉氏は話す。
そこで、地域を良く知る“人の分身(デジタルツイン)”が、いたらどうなるだろうか。「他の利用者の話題を伝えてくれたり、利用者の価値観を理解した上で話し相手になったり、時には質問に答えてくれる」と小田倉氏は述べ、「メタバース空間の中に、自分を理解してくれる存在がいれば、利用者は1人でも楽しめる」とした。
「デジタルツインがハブとなり、価値観の理解というステップを経て価値観の合う利用者をつないでいけば、メタバース空間は気軽で心地よいものに変わるはずです。現実世界でたとえると、散歩中の犬がじゃれあうことで、犬を連れた飼い主同士に会話のきっかけが生まれるイメージです」(小田倉氏)
MetaMeには、ユーザーがログオフした後でも、自分の価値観や行動パターンをAIが代わりに理解し、その世界で気の合う人とのつながりを広げてくれるような、“自分のパートナー”を担う「ウィズミー」と呼ぶAIペットが搭載されているという。
このように、「IOWN×メタバース×Web3」の連携が展望されるが林氏は、前述した2025年に開催予定の「大阪・関西万博」がこれまでの挑戦を表現する場の1つになるとした。「万博会場をIOWNのAPNで環境構築し、場所が離れていてもあたかも近くにいるような空間を演出する仕組みを準備している」と林氏は述べた。
2023年12月には、東京・歌舞伎座で上演した「超歌舞伎」で、IOWNのAPNを活用したリアルタイム演出を提供した。遠隔スタジオの演者の動きをリアルタイムで初音ミクのCGに反映させ、「サイバー空間であたかも側にいるような距離感で、遅延を気にせず、よりインタラクティブな表現が話題となった」と林氏は説明した。
小田倉氏も「エンターテインメントにおいては、ライブを中心に高性能な通信インフラが重要になってくる」と期待を述べる。特に、“推し活”の活動は多様化しており、「ハレの日のライブにおいては、バーチャルとリアルが融合したステージ演出が可能となり、また複数拠点をつなぐコール&レスポンスなど、わくわくするような空間が作れるのではないか」ということだ。
「IOWN×メタバース×Web3」の展望
小田倉氏は、2030年に向けた今後の展望について、「まずはいくつかのコミュニティーを立ち上げていきたい」と話す。小田倉氏は「コミュニケーションがビジネスになるのか、とよく聞かれるが、たとえば、知らない土地を訪れるときのことを思い出してほしい」とする。そして、知らない名産品を買ったり、お酒をのんだりするという行動などといった「その場所を訪れた際や、嗜(たしな)む際の高揚感につながる『コト』を、コミュニティーでは価値提供していくことを考えている」と話した。その上で、原価の積み上げ以上の価値を価格に反映できれば、地域貢献のあり方の1つになるのではないかという考えを示した。
小田倉氏は、「地域には、ブランド認知が行き渡らない銘品や地域がたくさんあり、生産者や町の人とエンゲージメントを高める仕組みとしてWeb3を機能させていきたい」と説明、「IOWN×メタバース×Web3」の展望については、「オンラインコミュニティーは、インターネットで1日を過ごす人にとっての『サードプレイス』を志向すべきだ」とした。
サードプレイスとは一般的には、自宅、職場以外の心安らぐ場所のことだ。今後は、オンライン上での自己の拡張や時間の拡張が段階的に進んでいく。「MetaMeでも、超多人数が同時に体験を共有することや、利用者の深層心理を理解し、利用者同士を引き合わせる技術を磨き込んでいく」と小田倉氏は話した。
具体的には、1万人が1つの仮想空間上でやり取りできるようにする「超多人数同時接続技術」や、利用者の深層心理を理解する「価値観理解技術」、そしてその価値観に合うヒト・モノ・コトの出会いをサポートする「行動変容技術」などだ。
その上で、小田倉氏は「MetaMeがオンライン版のサードプレイスに位置づけられると良い」とした。オンライン版のサードプレイスでは、目的をもって交流するだけでなく、交流そのものが目的となり、人やコミュニティーの魅力で人が集まり、居心地の良いコミュニケーションの場となることをイメージしている。
小田倉氏は「このような世界観をめざし、今後数年で現実世界の自分よりも理想に近い自分になれるような“自己の拡張”や、自分がログインしていない間は自分の行動を学習したAIが活動するような“時間の拡張”が段階的に進んでいくのではないか」と話した。
一方、林氏は展望について「IOWNの進展により、DTC(デジタルツインコンピューティング)の環境が大きく進化すると考えている」と話した。
あらゆるものがサイバー空間上でやりとりされるようになり、「サイバー空間の中で、ブロックチェーンなどのWeb3を活用し、特定の所有者や管理者が存在せずに事業やプロジェクトを推進できるDAO(分散型自律組織)などのコミュニティー、マーケットプレイスやトークン化などの新たな形が生まれていくのではないか」との展望を林氏は示し、セッションを締めくくった。
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