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  • 2024/02/08 更新

「IOWN構想」とは何か? NTT“次世代戦略”と参加企業をわかりやすく解説

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2019年5月、NTTが発表した新しいネットワーク構想「IOWN(アイオン)」。「beyond Internet」「beyond 5G」を目指す取り組みは、インテルやソニーとの共同研究を経て、着実に実現への歩みを進めている。従来のインターネットが抱える課題を一気に解決しようとする野心的な試みである「IOWN構想」の最新動向と参加企業についてわかりやすく解説する。(2022年5月23日初出、2024年2月8日に参画企業のみ更新)
監修:NTT(日本電信電話)

監修:NTT(日本電信電話)

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「IOWN構想」とは何か?
(Photo/Getty Images)

IOWN構想とは何か?

 IOWN(アイオン)構想とは、NTTが2019年5月に発表した、ICTインフラ基盤構想である。従来の電子技術(エレクトロニクス)から光技術(フォトニクス)にシフトし、より「低遅延」「低消費電力」「大容量・高品質」のネットワークを実現しようというものだ。

 また、IOWNとは「Innovative Optical and Wireless Network」の略称。光信号のままで伝送・交換処理を行うオールフォトニクス・ネットワークを実現し、従来のインターネットが抱える課題を一気に解決しようとする試みでもある。「beyond Internet」「beyond 5G」というキャッチフレーズとともに語られることも多い。

 NTTによると、デジタル技術の発展によって、映像の超高精細化などさまざまな技術革新が生まれてきた。今後、さらなる進化を遂げるためには、発想の転換が求められるという。そのため、IOWN構想では、人間だけの価値観でフィルタリングせず、より多様な価値観・知覚を通して、ありのままの現象・情報を捉えるようにすることが重要だと定義している。

 その1つの指針となる考え方は、ドイツの生物学者であるヤーコプ・フォン・ユクスキュル博士が提唱した「環世界」(ドイツ語では「Umwelt」)だ。すべての生物は種特有の知覚システムを有しており、それぞれが種特有の知覚世界を持ち、その主体として行動する。

 つまり、見る主体によって物の見え方は異なり、それぞれの価値観に応じて伝えるべき情報も処理の仕方も変わってくるという考えだ。IOWN構想では、デジタル技術を活用してさまざまな環世界で情報を捉え、人間がストレスを感じることなく自然に享受できる心地良い状態「ナチュラル」になることを追求するという。

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IOWN構想:Digital to Natural
(出典:NTT)

IOWN構想が生まれた背景とは?

 IOWN構想が登場した背景には、現在のインターネットが抱える課題がある。

 IoT(Internet of Things)の進展でインターネットに接続するデバイスが増えたことで、ネットワークに流れ込むトラフィックが爆発的に増大している。ただ、IoTのアプリケーションやサービスの多くが、インターネットにつながる必然性はない。たとえば、自動運転車のデータや監視カメラの映像は最終的には1カ所のサーバで処理されるため、その間をインターネットで結ぶ必然性はないのだ。

 現在のインターネットでは、できるだけ多くの機器を接続可能にし、いわば“数の原理”で機器や接続コストを下げてきた。また、そこで利用されるプロトコルも、こうした考え方を元に作られている。しかし、「用途や目的によっては、必ずしもインターネットプロトコルに縛られる必要はないのでは」というのが、IOWN構想の背景にある。

 また、遠隔手術のような人の生命に関わるサービスを提供する際、手術室の機器とそれを操作する医師の間をインターネットで接続して、本当に問題ないだろうかという疑問も出てくる。その場合「確実性」と「遅延時間」が最も重要な要件であり、従来のインターネットではなく、手術機器をダイレクトにコントロールできる新しいネットワークが必要だと考えるのは、自然なことではないだろうか。

IOWN構想を担う「発想の転換」とは

 そうしたインターネットの課題解決で必要になるのが、発想の転換だ。NTTは、シャコの視覚を例に説明する。

 人間は、赤青緑の3原色を3つの受容体で受け取り、脳で中間色を生成する。対して、シャコは12色の受容体を持ち、12色をダイレクトに脳で処理できる。そのため、反応が非常に高速だという。

 情報処理の方法は、決して1つではない。NTTでは、人間の価値観でフィルタリングせず、ありのままの情報を扱えることが重要と捉えている。言い換えると、シャコの環世界、ミツバチの環世界などのように、さまざまな価値観に応じた情報を余すことなく伝え、そして処理することを目指している。

 新たな発想が求められる背景には、現在のインターネットが限界を迎えつつある現実もある。インターネットのトラフィックは増大し、IT機器の消費電力も増大した結果、「半導体の集積率が18カ月で2倍になる」というムーアの法則は、すでに破綻している。

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IOWN構想:持続可能な成長に向けた課題
(出典:NTT)

 そもそも集積率は2010年ごろにすでにピークを迎えている。今や動作周波数と電力消費の壁に阻まれているため、集積率を上げることが困難になった。IOWN構想が目指すのは、今まで以上に膨大な情報処理を支え、従来技術の限界、主に消費電力の壁を越える変革をもたらす、革新的な情報処理基盤の構築である。

画像
IOWN構想:持続可能な成長に向けた課題
(出典:NTT)

IOWN構想への参画企業一覧

 IOWN構想へはどのような企業が参画しているのだろうか? 以下が2019年にNTT、米国インテル、ソニーが発起人となって立ち上げた「IOWNグローバルフォーラム」の参画企業一覧である。「Founding Members」「Sponsor Members」「General Members」「Academic and Research Members」に分類されている。

Sponsor Members(34)
中華電信
(Chunghwa Telecom)
ノキア
(NOKIA)
アクセンチュア
(accenture)
博報堂
(HAKUHODO)
シエナ
(ciena)
日本オラクル
(Oracle Japan)
キオクシア
(KIOXIA)
富士通
(FUJITSU)
シスコシステムズ
(Cisco Systems)
オレンジ
(orange)
KDDI
(KDDI)
古河電気工業
(FURUKAWA ELECTRIC)
デル・テクノロジーズ
(Dell Technologies)
PwC Japan
(PwC Japan)
住友電気工業
(Sumitomo Electric)
みずほ銀行
(Mizuho Bank)
デルタ電子
(Delta Electronics)
レッドハット
(Red Hat)
ソニーグループ
(Sony Group)
三菱電機
(MITSUBISHI ELECTRIC)
エリクソン
(ERICSSON)
サムスン電子
(Samsung Electronics)
デロイト トーマツ
(Deloitte)
三菱UFJ銀行
(MUFG)
インテル
(intel)
SKハイニックス
(SK hynix)
トヨタ自動車
(TOYOTA MOTOR)
楽天モバイル
(Rakuten Mobile)
マイクロソフト
(Microsoft)
SKテレコム
(SK Telecom)
日本電気
(NEC)
情報通信研究機構
(NICT)
ヴイエムウェア
(VMware)
日本電信電話
(NTT)
General Members(81)
アクトン・テクノロジー
(Accton Technology)
エイジーシー
(AGC)
日商エレクトロニクス
(NISSHO ELECTRONICS)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ
(AMD)
エクシオグループ
(EXEO Group)
日鉄ケミカル&マテリアル
(NIPPON STEEL Chemical & Material)
アバゴ・テクノロジーズ・インターナショナル・セールス
(Avago Technologies International Sales)
SCSK
(SCSK Corporation)
日東紡績
(NITTO BOSEKI)
コムスコープ
(CommScope)
沖電気工業
(Oki Electric Industry)
日本ガイシ
(NGK Insulators)
DriveNets
(DriveNets)
オプテージ
(OPTAGE)
日本ヒューレット・パッカード
(Hewlett Packard Japan)
インフェネラ
(Infinera)
オリンパス
(OLYMPUS)
ネットアップ
(NetApp)
アイピー インフュージョン
(IP infusion)
ケル
(KEL)
ネットワンシステムズ
(Net One Systems)
ジュニパーネットワークス
(Juniper NETWORKS)
京セラ
(KYOCERA)
白山
(HAKUSAN)
キーサイト・テクノロジー
(Keysight Technologies)
サンテック
(santec)
ピアズ
(Peers)
エヌビディア
(NVIDIA Corporation)
JX金属
(JX Nippon Mining & Metals)
東日本旅客鉄道
(East Japan Railway Company)
ProteanTecs
(ProteanTecs)
ジェイエスアール
(JSR)
日立製作所
(Hitachi)
クアルコム
(Qualcomm)
信越化学工業
(Shin-Etsu Chemical)
フジクラ
(Fujikura)
センコーアドバンストコンポーネンツ
(SENKO Advanced Components)
新光電気工業
(SHINKO ELECTRIC INDUSTRIES)
プリファードネットワークス
(Preferred Networks)
テレフォニカ
(Telefonica)
スカパーJSAT
(SKY Perfect JSAT)
本多通信工業
(HTK)
ヴィアヴィソリューションズ
(VIAVI Solutions)
住友化学
(SUMITOMO CHEMICAL COMPANY)
三井化学
(Mitsui Chemicals)
ウィストロン
(Wistron)
住友商事九州
(Sumitomo Corporation Kyushu)
三井情報
(MITSUI KNOWLEDGE INDUSTRY)
アイオーコア
(AIO Core)
住友ベークライト
(SUMITOMO BAKELITE)
三菱ケミカルホールディングス
(Mitsubishi Chemical Holdings)
アイシン
(AISIN)
SOMPOホールディングス
(Sompo Holdings)
三菱重工業
(Mitsubishi Heavy Industries)
アイペックス
(I-PEX)
大成建設
(TAISEI CORPORATION)
三菱商事
(Mitsubishi Corporation)
味の素
(AJINOMOTO)
大日本印刷
(Dai Nippon Printing)
三菱総合研究所
(Mitsubishi Research Institute)
アドバンテスト
(ADVANTEST)
電通グループ
(Dentsu Group)
ミライズ テクノロジーズ
(MIRISE TECHNOLOGIES)
アプレシアシステムズ
(APRESIA Systems)
東京海上日動火災保険
(Tokio Marine & Nichido Fire Insurance)
ミライト・ワン
(MIRAIT ONE Corporation)
安藤・間
(HAZAMA ANDO CORPORATION)
東芝
(TOSHIBA)
村田製作所
(Murata Manufacturing)
アンリツ
(Anritsu)
東洋インキSCホールディングス
(TOYO INK SC HOLDINGS)
矢崎総業
(Yazaki Corporation)
イーソリューションズ
(e-solutions)
凸版印刷
(TOPPAN)
ユニアデックス
(UNIADEX)
伊藤忠テクノソリューションズ
(ITOCHU Techno-Solutions)
日揮
(JGC)
リコー
(RICOH COMPANY)
イビデン
(IBIDEN)
日産化学
(Nissan Chemical Corporation)
ルネサス エレクトロニクス
(Renesas Electronics Corporation)
Academic or Research Members(19)
産業技術総合研究所
(AIST)
宇宙航空研究開発機構
(JAXA)
台灣資通產業標準協會
(TAICS)
東京大学
(The University of Tokyo)
台灣雲端物聯網產業協會
(CIAT)
防災科学技術研究
(NIED)
SBI大学院大学
(SBI Graduate School)
東北大学
(TOHOKU UNIVERSITY)
電力中央研究所
(CRIEPI)
国立情報学研究所
(NII)
大阪大学
(Osaka University)
名古屋大学
(Nagoya University)
資訊工業策進會
(III)
光電子融合基盤技術研究所
(PETRA)
慶應義塾大学
(Keio University)
広島大学
(Hiroshima University)
工業技術研究院
(ITRI)
光電科技工業協進會
(PIDA)
滋賀大学
(Shiga University)
(出典:2023年10月末時点)

【次ページ】IOWN構想の現在地とユースケースとは
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