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  • 2022/05/23 掲載

「IOWN構想」とは何か? NTT“次世代戦略”と参加企業をわかりやすく解説

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2019年5月、NTTが発表した新しいネットワーク構想「IOWN(アイオン)」。「beyond Internet」「beyond 5G」を目指す取り組みは、インテルやソニーとの共同研究を経て、着実に実現への歩みを進めている。従来のインターネットが抱える課題を一気に解決しようとする野心的な試みである「IOWN構想」の最新動向と参加企業についてわかりやすく解説する。

監修:NTT(日本電信電話)

監修:NTT(日本電信電話)

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「IOWN構想」とは何か?
(Photo/Getty Images)

IOWN構想とは何か?

 IOWN(アイオン)構想とは、NTTが2019年5月に発表した、ICTインフラ基盤構想である。従来の電子技術(エレクトロニクス)から光技術(フォトニクス)にシフトし、より「低遅延」「低消費電力」「大容量・高品質」のネットワークを実現しようというものだ。

 また、IOWNとは「Innovative Optical and Wireless Network」の略称。光信号のままで伝送・交換処理を行うオールフォトニクス・ネットワークを実現し、従来のインターネットが抱える課題を一気に解決しようとする試みでもある。「beyond Internet」「beyond 5G」というキャッチフレーズとともに語られることも多い。

 NTTによると、デジタル技術の発展によって、映像の超高精細化などさまざまな技術革新が生まれてきた。今後、さらなる進化を遂げるためには、発想の転換が求められるという。そのため、IOWN構想では、人間だけの価値観でフィルタリングせず、より多様な価値観・知覚を通して、ありのままの現象・情報を捉えるようにすることが重要だと定義している。

 その1つの指針となる考え方は、ドイツの生物学者であるヤーコプ・フォン・ユクスキュル博士が提唱した「環世界」(ドイツ語では「Umwelt」)だ。すべての生物は種特有の知覚システムを有しており、それぞれが種特有の知覚世界を持ち、その主体として行動する。

 つまり、見る主体によって物の見え方は異なり、それぞれの価値観に応じて伝えるべき情報も処理の仕方も変わってくるという考えだ。IOWN構想では、デジタル技術を活用してさまざまな環世界で情報を捉え、人間がストレスを感じることなく自然に享受できる心地良い状態「ナチュラル」になることを追求するという。

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IOWN構想:Digital to Natural
(出典:NTT)

IOWN構想が生まれた背景とは?

 IOWN構想が登場した背景には、現在のインターネットが抱える課題がある。

 IoT(Internet of Things)の進展でインターネットに接続するデバイスが増えたことで、ネットワークに流れ込むトラフィックが爆発的に増大している。ただ、IoTのアプリケーションやサービスの多くが、インターネットにつながる必然性はない。たとえば、自動運転車のデータや監視カメラの映像は最終的には1カ所のサーバで処理されるため、その間をインターネットで結ぶ必然性はないのだ。

 現在のインターネットでは、できるだけ多くの機器を接続可能にし、いわば“数の原理”で機器や接続コストを下げてきた。また、そこで利用されるプロトコルも、こうした考え方を元に作られている。しかし、「用途や目的によっては、必ずしもインターネットプロトコルに縛られる必要はないのでは」というのが、IOWN構想の背景にある。

 また、遠隔手術のような人の生命に関わるサービスを提供する際、手術室の機器とそれを操作する医師の間をインターネットで接続して、本当に問題ないだろうかという疑問も出てくる。その場合「確実性」と「遅延時間」が最も重要な要件であり、従来のインターネットではなく、手術機器をダイレクトにコントロールできる新しいネットワークが必要だと考えるのは、自然なことではないだろうか。

IOWN構想を担う「発想の転換」とは

 そうしたインターネットの課題解決で必要になるのが、発想の転換だ。NTTは、シャコの視覚を例に説明する。

 人間は、赤青緑の3原色を3つの受容体で受け取り、脳で中間色を生成する。対して、シャコは12色の受容体を持ち、12色をダイレクトに脳で処理できる。そのため、反応が非常に高速だという。

 情報処理の方法は、決して1つではない。NTTでは、人間の価値観でフィルタリングせず、ありのままの情報を扱えることが重要と捉えている。言い換えると、シャコの環世界、ミツバチの環世界などのように、さまざまな価値観に応じた情報を余すことなく伝え、そして処理することを目指している。

 新たな発想が求められる背景には、現在のインターネットが限界を迎えつつある現実もある。インターネットのトラフィックは増大し、IT機器の消費電力も増大した結果、「半導体の集積率が18カ月で2倍になる」というムーアの法則は、すでに破綻している。

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IOWN構想:持続可能な成長に向けた課題
(出典:NTT)

 そもそも集積率は2010年ごろにすでにピークを迎えている。今や動作周波数と電力消費の壁に阻まれているため、集積率を上げることが困難になった。IOWN構想が目指すのは、今まで以上に膨大な情報処理を支え、従来技術の限界、主に消費電力の壁を越える変革をもたらす、革新的な情報処理基盤の構築である。

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IOWN構想:持続可能な成長に向けた課題
(出典:NTT)

IOWN構想への参画企業一覧

 IOWN構想へはどのような企業が参画しているのだろうか? 以下が2019年にNTT、米国インテル、ソニーが発起人となって立ち上げた「IOWNグローバルフォーラム」の参画企業一覧である。「Founding Members」「Sponsor Members」「General Members」「Academic and Research Members」に分類されている。


Founding Members
インテル
(intel)
日本電信電話
(NTT)
ソニー
(SONY)
Sponsor Members
アクセンチュア
(accenture)
中華電信
(Chunghwa Telecom)
シエナ
(ciena)
シスコ
(CISCO)
デル
(DELL)
デルタ
(DELTA)
エリクソン
(ERICSSON)
富士通
(FUJITSU)
古河電気工業
(FURUKAWA ELECTRIC)
ヒューレット・パッカード エンタープライズ
(Hewlett Packard Enterprise)
キオクシア
(KIOXIA)
マイクロソフト
(Microsoft)
三菱電機
(MITSUBISHI ELECTRIC)
みずほフィナンシャルグループ
(Mizuho Financial Group)
三菱UFJ銀行
(MUFG)
日本電気
(NEC)
情報通信研究機構
(NICT)
ノキア
(NOKIA)
オラクル
(ORACLE)
オレンジ
(orange)
プライスウォーターハウスクーパース
(PwC)
レッドハット
(Red Hat)
サムスン
(SAMSUNG)
住友電気工業
(Sumitomo Electric)
トヨタ
(TOYOTA)
ヴイエムウェア
(VMware)
緯創資通
(Wistron)
General Members
アドバンテスト
(ADVANTEST)
エイジーシー
(AGC)
アイオーコア
(AIO Core)
アイシン
(AISIN)
味の素
(AJINOMOTO)
アンリツ
(Anritsu)
ブロードコム(アバゴ・テクノロジー)
(Avago Technologies)
デロイト トーマツ
(Deloitte)
電通
(dentsu)
ディーアイシー
(DIC)
エクシオ
(EXEO)
フジクラ
(Fujikura)
白山
(HAKUSAN)
日立
(HITACHI)
本多通信工業
(HTK)
アイペックス
(I-PEX)
イビデン
(IBIDEN)
インフィネラ
(Infinera)
アイピー インフュージョン
(IP infusion)
伊藤忠テクノソリューションズ
(ITOCHU Techno-Solutions)
日揮ホールディングス
(JGC)
ジュニパーネットワークス
(Juniper NETWORKS)
JX金属
(JX Nippon Mining & Metals)
キーサイト・テクノロジー
(Keysight Technologies)
ミライト・ホールディングス
(MIRAIT Holdings)
ミライズ テクノロジーズ
(MIRISE TECHNOLOGIES)
三菱ケミカルホールディングス
(Mitsubishi Chemical Holdings)
三菱商事
(Mitsubishi Corporation)
三菱マテリアル
(Mitsubishi Materials Corporation)
村田製作所
(Murata Manufacturing)
ネットワンシステムズ
(Net One Systems)
ネットアップ
(NetApp)
日産化学
(Nissan Chemical Corporation)
エヌビディア
(NVIDIA Corporation)
沖電気工業
(Oki Electric Industry)
オリンパス
(OLYMPUS)
ピアズ
(Peers)
プリファードネットワークス
(Preferred Networks)
ルネサスエレクトロニクス
(Renesas Electronics)
サンテック
(santec)
エスシーエスケイ
(SCSK)
センコーアドバンス
(SENKO Advanced)
信越化学工業
(Shin-Etsu Chemical)
シンコー
(SHINKO)
スカパーJSAT
(SKY Perfect JSAT)
住友ベークライト
(SUMITOMO BAKELITE)
住友商事九州
(Sumitomo Corporation Kyushu)
シノプシス
(Synopsys)
テレフォニカ
(Telefonica)
凸版印刷
(TOPPAN)
東芝
(TOSHIBA)
東洋インキSCホールディングス
(TOYO INK SC HOLDINGS)
ユニアデックス
(UNIADEX)
矢崎総業
(Yazaki Corporation)
Academic and Research Members
電力中央研究所
(CRIEPI)
CNIT
工業技術研究院
(ITRI)
慶應義塾
(Keio University)
国立情報学研究所
(NII)
防災科研
(NIED)
技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(PETRA)
光電科技工業協進會
(pida)
産業技術総合研究所
(AIST)
東北大学
(TOHOKU UNIVERSITY)
(出典:NTT 2022年4月末時点)

【次ページ】IOWN構想の現在地とユースケースとは

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