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- 2026/01/29 掲載
生活負担は減らず…? 消費税減税がもたらす“ある影響”──負の連鎖のカラクリとは
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。
消費税減税は円安要因? その他の円安要因は?
食品を消費税の対象外とすることに対してネガティブな声は相応にある。放漫財政は円安を通じて輸入物価を押し上げることで消費税減税の効果を台無しにしてしまうとの見方だ。円安に対する警戒感は依然として根強く、報道などでは「終わりの見えない円安」などとよく言われる。ただし、冷静に考えてみると、ドル円で見た円安は2024年央に160円を突破したところがピークであり、そこを起点にすれば1年半にわたって円安は進行していない。また円安の大部分は2022年に起きている(約115円→約150円)。野放図な財政政策によって通貨の信任が失われているとの指摘もあるが、もしそうであれば160円をはるかに超える急激かつ大幅な円安が起きているのではないか。
最近の円安要因としては、連邦準備制度(Fed)の利下げ観測後退が大きいと筆者は見ている。1月下旬時点において金融市場(FF金利先物)が織り込む利下げ回数は、2027年3月までに約1.8回となっているが、このまま米経済が失速を回避するようだと利下げ不要論が台頭しやすいだろう。こうした利下げ観測後退に伴うドル高圧力が円安要因になっている可能性があろう。
新NISAが進めた「家計の自己防衛・日本脱出」
また、新NISA開始を契機に勢いづいた家計の海外資産投資も見逃せない。財務省・日銀が集計する「投資家部門別対外証券投資」に目を向けると、投資対象が海外である投資信託の資金流入動向を反映する「投資信託委託会社等」が巨額のプラス(買い越し)を記録している。その大半が円売りを伴う投資であると推察され、これが円安要因になっている可能性が高い。
2022年に1.9兆円だった買い越し額は、2023年に4.5兆円に増大した後、新NISA元年の2024年は11.5兆円と著しく増加、2025年も9.0兆円と巨額であった。家計が海外(主として米国)の成長を、証券投資を通じて享受しようとする動きは以前からの潮流であるが、ここ数年は円安の防衛策として外貨建て資産を保有することが徐々に一般に浸透しており、そうした下で家計の外貨選好が高まっていると思われる。
投資信託協会のデータによれば、投資対象地域が「海外」とされている投信は2025年末時点で79.4兆円の純資産残高があり、この5年間で3倍超の増加を遂げている。純資産残高は値上がり分が含まれるため、新規流入額を簡易的に算出(設定-解約・償還)すると、2015年以降の累積で32.1兆円、直近の2年間では16.3兆円の増加となっている。
その他に、投資信託協会が「内外株式」に分類しているファンド(2025年末時点で71.1兆円)や外貨預金、上場投資信託(ETF)、私募投信を通じた海外投資の存在があり、それらも買い越しとなっている可能性が高い。
2025年は日米金利差が縮小したにもかかわらず、円高方向への動きが見られなかった。その背景には、新NISAの「積立投資」に代表される家計の円売りフローがあろう。投資対象が海外とされる主要投信の買い付けは、日米金利差の変動に関係なく実施されている。こうした家計の投資行動が、日米金利差の説明力を落とした可能性は相応に高いと推察される。 【次ページ】消費税減税は家計や物価、株価へはどう影響する?
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