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- 2025/12/26 掲載
【2026年展望】AIバブルは終わる…?米国経済とAI投資急拡大が“日本株”に与える影響
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。
米国経済・AI関連投資の変化が意味すること
米国については、失業率がじりじりと上昇するなど労働市場の軟化が観察されている。もっとも、米経済の根幹とも言うべき個人消費は富裕層の高額消費に支えられ、底堅い成長軌道を維持している。またAI関連投資の急増も重要。たとえばデータセンター投資は5年前との比較で約4.5倍、建設支出全体に対して5.6%を占めるに至っており、それに付随して発電設備などの投資も活発になっていることから、米経済全体の底堅さに寄与している。
この間、トランプ関税は財価格にその影響が表面化しているものの、春先に警戒されたような高インフレは回避されており、そうした下で、自動車販売台数は堅調に推移している。もちろん、メーカー各社が関税を吸収することによって価格が据え置かれていることが大きいが、米国の主要輸入元である地域からの関税率は15%と「穏健」であり、先行きも販売台数の崩壊は見込みにくい。
近年は変化も…米国の雇用市場はどう変化している?
そうした中、雇用の量的拡大は風前の灯火になっている。雇用者数を移民とネイティブに分けてみると、移民に弱さが集中していることから、移民政策の厳格化が影響していることに疑いの余地はないが、この間、求人件数の減少が同時に観察されていることに鑑みると「量」の弱さは、企業の労働需要が減衰していることにも原因があるとみられ、経済全体として冷えこみが感じられる。米労働市場は採用と解雇のスピード感が早いことで知られているが、過去数年は「雇わない・解雇しない(No Hire No Fire)」ともいわれるように流動的な労働市場でなくなりつつある。そうした背景もあって現在のところ失業率の急上昇は回避されている。
もちろん、そうした経済の下振れリスクに対処するのはFedの金融政策である。米国経済の本質的な強さは「いざとなったら4%の利下げ」という選択肢を有していることであろう。政策金利水準の高さは、政策対応余地が大きいことの裏返しであり、ここが日本経済と決定的に異なる。
続いて、日本経済について見ていこう。 【次ページ】教科書通りではない?日本のこれまでの物価高対策とは
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