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- 2025/12/02 掲載
日経平均5万円でも「冷めた現実」──日本企業が「低すぎるPER」から抜け出せないワケ
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。
「内部留保」は減る? 企業が“攻めの資本活用”に転じるか
安全資産の代表格である現預金はいまや危険な資産になりつつある。元本そのものを守るという点において安全性が高いことに何ら変わりはないが、過去数年、インフレによって現預金の価値は目減りを続けており、それは家計だけでなく企業も同様だ。これまで、日本企業は設備投資や研究開発など前向きな使途にお金を使わないと批判されることも多かったが、インフレによる現預金の目減りを企業が認識すれば、自ずと設備投資や研究開発、人的資本形成といった前向きな使途にお金を振り分けると期待される。
金融資産の約半分を現預金で保有する家計がインフレに脆弱であるのと同様、企業にとっても多くの現預金を寝かせておくことはインフレ負けを意味し、業績の打撃となる。2024年は企業物価がプラス3.3%、企業向けサービス価格がプラス2.9%であった。現預金から得られるわずかな収益が、収益性指標の足かせとなるのは言うまでもない。
すでにインフレが企業に現預金の有効活用に駆り立てたことを示すデータもある。法人企業統計(年報)では、現預金の絶対水準が300兆円を超えて増加する一方、総資産対比で見ると以前ほど増えていないことが確認できる。
これまでの現預金の積み上がりは、しばしば「ため込み体質」などと批判されるが、企業は必ずしも現預金をやみくもに積み上げている訳ではなさそうだ。現預金の保有コストを認識し始めた可能性がうかがわれる。
インフレで設備投資が促進…経済へはどんな影響がある?
ここで企業の資本効率改善が注目される理由を再考すると、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業が多いことが主背景であろう。ではROE(自己資本利益率)× PER(株価収益率)で決まるPBRが、なぜ1倍を割れてしまうのだろうか。その点について、現預金の過剰な保有によって資本効率が低下し、ROEが高まらないことが多く指摘される。
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