- 2026/04/09 掲載
アカデミアの「技術流出防止策」から読み解く、経済安全保障への示唆とは?(2/3)
長らく続いた春の終焉とは?
まずティファート氏は、自らが研究セキュリティに携わることになった経緯について、「中国の研究をしていく内に情勢が変化していることを感じた」ためだと紹介した。そのうえで、米国の大学や企業、政府における研究セキュリティの現状について、特に理解すべきポイントは「研究者自身が、研究のために、他の研究者とともに取り組んでいる点」にあるとした。
つまり、研究セキュリティの確保を自身が属する研究機関任せにすることでなく、研究者自らが研究セキュリティの意識を持ちつつ実践することが重要、と理解することができよう。
いかに所属する研究機関が高度な情報セキュリティや研究セキュリティを構築したとしても、所属する研究員の問題意識が希薄であり、自身の無意識な振る舞いや言動が、知らず知らずに機密情報を外部に漏らしてしまうことにつながる、ということであり、研究者自身の意識啓発が欠かせないことを指しているわけだ。
次に、ティファート氏は、近年研究セキュリティへの関心が高まっている理由について、「過去の40年間に目を向ける必要がある」としたうえで、「比較的少数の国々に軍事力、経済力、技術力が集中」してきたことに加え、「偶然にもこれらの国はすべて自由民主主義国」で、そのほとんどは、日本は韓国のように米国と二国間条約を結んできた「同盟国」であった点に注目すべきであるとした。
つまり、「似通った思想、政治体制、人権意識、自由なメディア、法の支配、これらを当たり前だと思う発想の国々がグループとなっていた」ことが特徴的であり、こうした考えが長らく研究者の間に通底する概念とみなされてきたとしている。
また、このグループは他の国々に差をつけていたため、地政学やセキュリティを特段考慮する必要はないという「幻想が生まれた」ものの、昨今急激に他国との差が縮小したことで、「地政学とセキュリティを再び意識せざるを得なくなった」と解説した。
研究セキュリティは科学研究の日常的慣行に取り入れるべき
一方で巷間、研究セキュリティの強化が、これまでの国際協力や技術革新に向けた活動に影響を与えることで、こうした動きが阻害されるのではないかとの懸念も囁かれる。これに対しティファート氏は、「米国では最近まで、輸出規制対象の企業を除けば、共同研究パートナーに関する規制はなかった」とし、外部とのパートナーシップは「開かれていた」とした。
さらに、「共同研究パートナーとして推奨されない法人」が存在していたことは否定しないまでも、「そのような対象と共同研究をすることも学術的自由として認められていた」とした。
しかしながら現下の米国内での事例では、「規制が強化された結果、外国による研究セキュリティリスクがあるとして、特定のプロジェクトが研究計画書を申請する段階で却下」された事例がみられ、こうした背景には「資金を提供する機関が、計画書のいずれかの研究者がリスクになると判断している」という動きがあると考察している。
これらを念頭に今後は「研究セキュリティは計画書を申請する前から、科学研究の日常的慣行の中に取り入れるべきもの」であるとした。
なお、相手先研究者のリスクを個々の研究者がその都度評価、勘案することには障害も横たわる。
ティファート氏は、こうした障害を取り除くためにも、研究者がプロジェクトを思いついた時点で何かしらのプラットフォームかツールを使って、「パートナー候補が研究セキュリティ上のリスクになり得るかどうか判断できる事務的負担の軽い方法」の実用化が望ましいとしており、我が国でも政府主導型で情報提供プラットフォームなどの支援機能の提供が期待されるところだ。
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