• 2026/05/19 掲載

元OpenAI研究者のAIヘッジファンド「AGI逆張り投資」でNVIDIAを巨額ショート

AI予測に基づきAI半導体ショート、電力データセンターへロング

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元OpenAI研究者のレオポルド・アッシェンブレナー氏が率いるヘッジファンド「Situational Awareness LP」が、エヌビディアなどAI半導体銘柄の巨額ショート(空売り)と、電力・データセンター関連銘柄へロングの集中投資を行っている。米証券取引委員会(SEC)への直近の提出書類(Form 13F)で、同ファンドのエクスポージャーが約136億ドルに拡大し、独自のインフラ重視戦略をとっていることが明らかになった。
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(画像:Dwarkesh Patel Youtube)

元OpenAI研究者のAGI逆張り投資、暗号資産マイナーロング、AI半導体ショートの理由

 アッシェンブレナー氏は19歳でコロンビア大学を卒業後、OpenAIに入社し、超知能の安全性確保を担うチームで研究を行った。2024年4月に同社を解雇されたが、高度なAIモデルが中国などの外国国家に盗まれるリスクを警告し、社内のセキュリティ体制の不備を指摘したメモを経営陣に提出したことが解雇の真の理由だと同氏は主張している。退社後に設立したファンドは、決済大手ストライプ(Stripe)の創業者であるコリソン兄弟などの支援を受けて急速に運用資産を拡大した。

 同ファンドのポートフォリオは、AIモデルの開発企業や半導体メーカーではなく、AIを物理的に稼働させるための基盤インフラに極端に偏重している。買い(ロング)ポジションの主力は、Bloom Energyなどのエネルギー関連企業や、AIデータセンター事業への転換を進める暗号資産(ビットコイン)マイニング企業群だ。Core Scientific、Riot Platforms、IREN、Bitdeerなど、大規模な電力設備と冷却能力を持つマイニング事業者の株式を大量に保有し、AIの計算処理に必要な電力インフラとデータセンター基盤を確保する動きを見せている。

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【図版付き記事はこちら】元OpenAI研究者のAIヘッジファンド136億ドルの「AIインフラ逆張り投資」(図版:ビジネス+IT)

 対照的に、これまでAIブームを牽引してきたハードウェア銘柄に対しては、プットオプションを用いた大規模な売り(ショート)ポジションを構築している。提出書類によると、VanEck Semiconductor ETF(SMH)をはじめ、エヌビディア(NVIDIA)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、ブロードコム(Broadcom)、台湾積体電路製造(TSMC)などに対するプットオプションの想定元本はポートフォリオの過半を占める。半導体銘柄の価格動向に対しては下落を見込む戦術をとっている。

 この投資行動は、アッシェンブレナー氏が2024年に発表した論文「Situational Awareness: The Decade Ahead」の予測に直結している。同氏は論文内で、2027年までに汎用人工知能(AGI)が実現し、それを動かすために数兆ドル規模の計算クラスターが必要になると指摘した。同氏の戦略は、AIの進化がソフトウェアの領域を超えて物理的な国家インフラの問題に移行するという前提に基づいている。

 AIモデルの高度化に伴い、計算能力の向上よりも電力網やデータセンターの物理的制約がボトルネックになると判断している。半導体チップの製造やモデル開発企業への投資リスクを避け、莫大な電力を供給する企業や既存の計算基盤を持つ暗号資産マイナーに資金を投じることで、AIインフラの拡張から生じる利益を直接的に狙う姿勢を鮮明にしている。

アッシェンブレナー氏が予測した「AGIの現状認識」とは?

 アッシェンブレナー氏が発表した論文「Situational Awareness: The Decade Ahead」での2027年のAGI実現という予測は、SF的な想像ではなく、これまでのAIの進化トレンドをグラフ上で直線的に外挿することで導き出されている。同氏の主張によると、2027年にはAIモデルが人間のAI研究者やソフトウェアエンジニアの業務を完全に代替できるようになり、これがAGIの達成を意味する。

 この予測の具体的な根拠は、同氏が提唱する「OOM(桁数)のカウント」と呼ばれるフレームワークによって詳細に説明されている。同氏は2019年のGPT-2から2023年のGPT-4までの4年間に起きた進化を振り返り、AIの能力が、かろうじて数文を繋げられる未就学児レベルから高校や大学の試験で好成績を収める賢い高校生レベルへと飛躍したと指摘する。この劇的な進化は、AIモデルの有効計算量が約4.5から6 OOM、すなわち数万から百万倍にスケールアップしたことによってもたらされた。

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アッシェンブレナー氏が予測した「AGIの現状認識」とは?(図版:ビジネス+IT)

 今後の4年間も、3つの要素が同等のペースで成長を続ける。1つ目は物理的な計算資源のスケーリングである。AIのトレーニングに投入されるハードウェアと予算の規模は、過去10年以上にわたって年間約0.5 OOMのペースで成長し続けており、2027年までにギガワット規模の電力を消費する巨大データセンターが稼働することになる。2つ目はアルゴリズム効率の向上であり、同じ性能をより少ない計算量で達成するソフトウェア上の進歩も年間約0.5 OOMのペースで寄与し、有効計算量を爆発的に押し上げる。

 3つ目は「Unhobbling(足かせの除去)」による潜在能力の解放である。思考の連鎖や強化学習、ツールの使用といった手法により、AIは一度に数分の思考しかできないチャットボットから、深い推論能力を持ち自律的にエラーを修正しながら数週間かけてプロジェクトを完遂するリモートワーカーへと進化する。

 同氏の主張の核心は、過去4年間で未就学児から賢い高校生へのジャンプが起きたのであれば、次の4年間で賢い高校生からトップクラスの専門家へのジャンプが起きるという推論である。この予測通りに進めば、2027年にはAIがAI研究者自身の仕事を自律的にこなせるようになり、そこから「知能の爆発」が始まる。彼が描く知能爆発のプロセスにおいて、AGIはゴールではなく超知能(ASI)へと至るトリガーに過ぎない。

 AIによる研究開発はコンピュータ上で完全に完結するデジタルな作業であるため、最も早く自動化される。AIがAI研究を行えるようになると、2027年頃に構築される巨大な推論用クラスターを用いて、人間のAI研究者と等価なAGIを数千万から1億コピー同時に走らせることが可能となる。世界のトップラボで働く人間の数は数百人程度であるため、研究の労働力は一気に100万倍に膨れ上がる。

 さらに、AGIは休むことなく24時間稼働し、人間の10倍から100倍のスピードで思考やコーディングを行うため、人間の研究者が1年かかる作業をわずか数日で完了させる。このようにして数億人の超高速なAI研究者がアルゴリズム改良に取り組むことで、本来なら人間が10年かけて生み出すはずのアルゴリズムの進歩がわずか1年未満に圧縮される。

 実験用の計算資源が不足するという懸念に対しても、AGIは過去のすべての機械学習論文と実験結果を完璧に記憶して超人的な直感を身につけているため、バグのない完璧なコードを書き、価値のある実験だけを厳選して行うことで、限られた計算資源を人間の10倍以上効率的に使いこなして克服する。この自己改善の連鎖こそが知能の爆発であり、2027年頃にAGIが誕生した後、1年足らずで人類の理解を遥かに超える超知能へと一気にジャンプする。この超知能は科学技術や経済、兵器開発などあらゆる分野を支配し、世界を根底から変貌させると同氏は警告している。

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