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- 2026/05/14 掲載
AIで「逆に仕事増えた」のはなぜ? ガートナーが暴く“生産性パラドックス”の正体
IT投資を増やしても生産性は上がらない?データが示す奇妙な関係性
「あらゆる組織は今、生産性向上に向けICT(情報通信技術)投資を積み増しながらも、期待されたほどの成果があがっていない『生産性パラドックス』という大問題に直面しています。それは、デジタルワークプレースにおいても同様です」──こう強調するのは、ガートナー バイス プレジデント,アナリストのトリ・ポールマン氏である。
トリ・ポールマン氏
企業が情報化に乗り出したのは1960年代の中ごろにまでさかのぼる。当初は会計処理や販売管理などのバックオフィス業務の省力化を狙いとし、1990年代のインターネットの普及を機にメールや電子商取引などが業務に広く組み込まれた。その後も場所を問わないコミュニケーションのための“モバイル”や“コラボレーション”、さらに直近では生成AIなどのデジタルワークプレースへの投資が加速している。
その間のグローバルGDPは多少の波はあれ、漸減傾向を示しているのが実態だ。
「IT支出と従業員の生産性に関する調査でも、2022年のIT支出は2000年比で130%増に対し、労働時間当たりのGDPは同29%増にとどまり大きな乖離を確認できます。当社では世界中の従業員がデジタル技術をどう業務に活用し、その体験や課題を明らかにする『Digital Workers Survey』を定点観測として行っていますが、最新の結果においても従業員の3分の1以上がIT投資による生産性向上を実感できていません」(ポールマン氏)
カギを握る「デジタル・デクステリティ」、生産性が劇的に変わる“ある条件”
それらを踏まえてガートナーは、「生産性向上の最大の要因は従業員のデジタル・デクステリティ(デジタルを活用する能力と意欲)である」という仮説を導出した。ガートナーによると、デジタルを活用する能力とは新技術を前向きに捉え、利用の機会を探りつつ周りを巻き込み活用を進めるスキルだ。また、デジタルを活用する意欲とは、新技術の利用が生産性向上や自身のキャリアアップの鍵との認識の下、前向きに試す考え方と言える。
ポールマン氏によると、デジタル・デクステリティは新型コロナによるパンデミック初期にスコアを大きく増し、その後は急速な低下傾向を示した。「それはIMFのグローバルGDPとも合致します」とポールマン氏。
その上で、従業員のデジタル・デクステリティの有無による、生産性の明らかな違いが確認された2024年の調査で仮説が生まれたのだという。そこでは、デジタル・デクステリティを備えた従業員が「生産性が大幅に向上」したとの回答は47%に上る一方で、備えていない従業員の同回答は8%にとどまった。スコアの差は明白だ。
改善策としてポールマン氏は、スコアの高い従業員の働き方をデジタルスタッフなどの第三者が学習し、その知見を社内に横展開することを推奨している。
「スキル・トランスファーを優秀な従業員に依頼しては、依頼された側の生産性の低下により、本人、さらに会社の双方に不利益が生じかねません。『仕事を学ばせてほしい。そのために横で見させてほしい』とお願いするのが、本人と企業にとって最良の方法でしょう」とポールマン氏は解説する。
だが、問題はこれだけではない。現在、最も注目を集める「生成AI」の導入においても、多くの企業が“ある勘違い”によって恐ろしい「負のループ」に陥っているというのだ。次ページでは、生成AIで浮いた時間が生み出す“悲劇”と、デジタル部門が果たすべき「新たな役割」についてガートナーが提言する。 【次ページ】生成AIで浮いた時間をどう使う? “負のループ”の抜け出し方
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