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  • 2020/06/09 掲載

MaaSやCASEの中で金融はどんな役割を果たすのか? 事業機会と決済プレーヤーの動向

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自動車産業は今、車に限らず、他の移動手段やサービスを取り込んだモビリティ産業へと変身を図っている。その実現に大きく寄与しているのが金融機能や金融業界における技術革新だ。中でもモビリティサービス(MaaS)においては、決済機能がマルチモーダル移動・データ活用・車両運用効率化などを実現するカギとなっており、サービスと決済機能の統合を図る模索(試み)がなされている。これは金融業界を含む異業種にとっても大きなビジネスチャンスとなるだろう。大きな可能性を秘めたモビリティサービスだが、サステナブルな事業モデルは確立されておらず、事業ドメインの拡大やデータの有効活用などを駆使し「儲かるビジネス」への脱皮が必要であり、業界横断での取り組みが必要となりそうだ。

デロイト トーマツ グループ アソシエイトディレクター 高橋 新・赤星 弘樹

デロイト トーマツ グループ アソシエイトディレクター 高橋 新・赤星 弘樹

高橋 新
日系金融機関勤務を経て現職。米国・ドイツ・シンガポールでの10年にわたる活動をベースに、自動車産業を中心とする製造業に対し、中長期事業ポートフォリオ戦略・中期経営計画策定・合従連衡・事業買収および売却などの経営戦略案件、地域統括会社設立・新規市場進出などのグローバル案件および、投資ポリシー策定・販売金融機能最適化などの財務戦略案件に多数従事。雑誌等への記事寄稿多数。

赤星 弘樹
ITコンサルティング会社を経て現職。金融機関における事業戦略・組織変革、ガバナンス高度化、IT戦略/大規模システム更改支援等で実績。現在は主にブロックチェーン・ペイメント領域を担当し、グローバル動向把握、FinTechを活用した事業企画、ブロックチェーン実証支援等のコンサルティングを提供。Fintech・デジタル領域で新聞や専門雑誌等への寄稿、セミナー登壇実績等、多数。

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これから訪れる「モビリティ革命」の中で重要な役割を担うのが金融だ
(Photo/Getty Images)

モビリティ革命、CASE、MaaS、そしてマルチモーダル

 さまざまな分野で、金融技術・金融インフラの実業分野への応用が進み、金融業界にとっても新たな事業機会が生まれている。自動車を中心とする輸送機器・移動分野は、世帯収入に対する支出項目として食費・娯楽に次ぐ第3位に位置し、購入代金決済やカーローンなどを通じて金融セクターの関わりも大きい。

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2018年 日本国内 月平均消費支出内訳(2人以上の世帯)
(出典:総務省統計局調査部「家計調査報告〔家計収支編〕2018年(平成30年)平均結果の概要」をもとにデロイト作成)

 また自動車産業サイドで見ても、俗にCASE(注1)と称される「100年に1度の大革命期」が到来するといわれる。その将来像はさまざまな楽観・悲観シナリオでもって語られるが、人々の移動の仕方とそれを提供する者のビジネスの双方に大きな変化をもたらすことは間違いない。

注1:Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの

 その中でもシェアリング(クルマの共有化)は現在最も実用化が進んでおり、潜在的には既存の産業構造を大きく変える可能性がある。すなわち「所有から利活用へ」の流れの中で、MaaSと呼ばれるように自動車産業が今後提供するのは、もはや自動車(モノ)ではなくモビリティ(移動=コト)である、ともいわれる。

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マルチモーダル・モビリティサービスの概念図。この中で金融が果たす役割の重要性は増している

 複数の移動手段を組み合わせたマルチモーダル(複数の移動手段を組み合わせた)モビリティサービスは、日本の大都市圏に限れば特に目新しさはないものの、グローバルでは大きな潜在需要をもたらす、モビリティにおける次世代の標準モデルと目されている。

金融機能の果たす役割の変化

 こうしたモビリティサービスに考えるにあたり、その金融的側面を考察することには、いくつかの意義がある。本稿では主に以下の2つについて触れておこう。

(1)モビリティ産業におけるマネタイズ方法の変化

 従来の自動車産業にとって、所有から利活用へのシフトは脅威の側面が大きいと言わざるを得ない。長年かけて築き上げたブランド力(付加価値)のついた車両を販売し、販売金融とアフターサービスでさらなる利潤を追求する事業モデルが否定されるからである。これは、輸送機器に対するローンやリースを大きな収益源としてきた金融業界にとっても同様の脅威であろう。

 一方、従来の産業構造の枠外にいるプレーヤーにとっては千載一遇のチャンスと言える。GAFAをはじめとするテクノロジー大手、鉄道・タクシーなどの従来型の輸送業界、ウーバーを代表とするモビリティ・スタートアップなどが近年一気にモビリティ領域に参入したのも、これまで自動車産業が享受してきた巨大な収益の扉が開かれつつあるからだ。

 上記を背景に、新旧両プレーヤーとも、将来の稼ぎ頭となるべきモビリティサービスにおいて、提供サービスの対価を獲得する金融の仕組みづくりが、各プレーヤーにとっての大きな課題となっている。

(2)決済機能におけるパワーシフト

 モビリティサービスは移動のみで閉じることも可能であるが、後述するように収益性の確保と競争優位を狙うため、周辺サービスを取り込みエコシステムを形成する志向性を持っている。

 この際、決済機能を伴い、生活圏全般に染み出していくことにより、宿泊やテーマパーク利用などの娯楽費、食事費、その他ショッピング費用などが従来の決済手段とは異なる、MaaSアプリを介した決済へと切り替わっていく可能性をはらんでいる。

 現状、MaaSアプリの決済プロセッサーは一般消費者の選択に委ねられているが、仮にMaaSアプリを介した決済が主流になった場合、利用者の選択した各種モビリティサービスをコーディネートする「モビリティマネージャー」であるMaaSアプリ提供者に牛耳られるシナリオとなり、このMaaSアプリの地位を獲得することイコール、モビリティサービスにおける決済の覇権争いという構図となる。

 こうした世界ではサービス提供機能(移動や移動に紐づくサービス)と金融機能(サービス対価の決済)がより一体化すると言えよう。

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モビリティサービスにおける参加者と決済の概念図

【次ページ】モビリティサービスにおける決済サービスの機会

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